11話 「共存?」
アーメリーはニーホとは外見からして違った。ニーホは和風な街並みだったが、アーメリーは高い石壁に囲まれた洋風の街だ。壁の向こうには赤い屋根がいくつも顔をのぞかせている。
「今回はグムもデュラも安全に街へ入れます。アーメリーは人間だけでなく魔物も受け入れているんです。」
ニーホと同じく門があり、門番が資格書を確認してる。
「ユウキさんアーメリーで気をつけて欲しいことがあるんです」
「なんだ?」
(まさか、エッチなお店がないとかか?それはまずい。)
「アーメリーはシンビ教徒がたくさんいます」
「シンビ?なんだその宗教」
「人と魔物の共存を願う宗教です」
(なんだその怪しげな宗教は。共存なんて簡単にできるわけねぇだろ)
「ちなみに私とカイルはシンビ教徒です」
(アッブネェェェエ!心の中で言っておいて正解だった。)
「そ、そうなんだ。ミアは違うのか?」
「私はなんも入ってないよ」
「そっか」
俺らは人と魔物が並ぶ街に入る列に並んだ。数十人が並んでいる。魔物や人の話し声が聞こえる。たぶん全員知的型魔物だろう。
(やっぱりここでは魔物も人も仲がいいのか?)
数分後俺らの番が回ってきた。門番は人ではなく、魔物がやっている。並んでいたやつも魔物が多いように見えた。
「資格証を出せ」
俺ら4人は冒険者資格証を魔物の門番に渡す。
「よし、確認できた。そこの二人はないのか?」
「まだ、ないんですよ」
「わかった。それでは名前だけでいい」
(なんか、前の俺みたいだな)
グムは自分で名前を言い、一応飼い主である俺がデュラの名前を言った。
「確認した」
そして、俺らは門を抜け新たな街へと入っていった。
ニーホとは違った感じで建物はレンガでできていて、屋根は赤い。俺は新たな街に心を躍らしているとたくさんの人や魔物の声が聞こえてきた。
(祭りでもやってんのか?)
だんだんと声の聞こえる方へ歩いていく。近づくにつれて、違和感に気づいた。楽しそうな笑い声だと思っていたものは違った。聞こえてくるのは歓声、怒号、そして何かを叫ぶ声。まるで、街の一角だけ別の空気に包まれているようだった。
(…何してんだ?)
曲がり角を曲がると広場があり、真ん中には噴水があった。そして、その周辺に人だかりができていた。俺は一人の魔物に聞いた。
「いま、何やってんだ?」
「あ?人間の冒険者か。今は公開処刑をしようとしてらところだ。あんたも見にきたのか?」
俺は一瞬理解が出来なかった。理解した途端に怒りと疑問が同時に湧き上がってくる。
「なんでそんなことする必要があるんだ?」
「そりゃあ罪を犯したからだろ」
「なんの罪だ?」
「窃盗だとよ」
(窃盗だけでわざわざみんなの前で殺す必要があるのか?)
俺はますます怒りがこみ上げてきた。俺は助けに行こうとした。しかし、急にレオンたちが止めてきた。
「気持ちはわかるがやめておいた方がいいですよ」
「なんで、お前も止めるんだよレオン。見殺しにしろってか?ただの窃盗だぞ?」
「別にそういうわけでは…」
「じゃあなんなんだよ!」
「ユウキ、ここには色んな事情があるのよ」
(事情?そんなの知るか。俺は助ける)
俺はレオンたちの制止を振り切った。そして、人や魔物たちをかき分けて前に進んでいった。止めに来てるのかわからないが、レオンたちも後ろからついてきた。
そして、最前列まで来た。ギロチンのような処刑器具がある。そこに一人の青年が頭を置いていた。俺は咄嗟に前に出た。
「止まれ!ここからは立ち入り禁止だ!」
俺は警告を無視してどんどん中に入る。
「止まらないなら、斬るぞ!」
傭兵は剣を抜く。そして、こちらに襲いかかってきた。
「邪魔だ」
俺は傭兵の剣をかわし、拳を鎧のついてない顔面に向かっていれた。
「ぐはっ」
傭兵はその場に倒れる。しかし、他の傭兵がおうえんに来る。なんとか、対応するもかなりの数の傭兵に取り押さえられた。
(いっそのこと、ここを魔法で焼き払うか?)
しかし、そんなことをすればたちまち周辺にいる人やこの青年が巻き込まれるだろう。
「くそ、離しやがれ!」
周りがざわついている。
「そいつらを連行しろ」
そいつ"ら"?俺は周りを見る。すると、なぜかレオンたちも取り押さえられていた。
「おい!そいつらは関係な…」
その瞬間俺の口に布らしきものが当てられた。その拍子に俺はなぜか思いっきり息を吸ってしまった。すると、だんだん視界が揺れ始めた。俺は最後の最後にいった。
「殺、すな…」
俺はバタンッとその場に倒れた。
───────────
「それでは予定通り始める」
──ザシュッ。
うおおおおおお!街中に歓声が轟いた。
──ドンッ、ガシャン。
ユウキたちは牢屋に投げ入れられ、扉を閉められた。
「ちょっと!もっと優しく入れなさいよ!」
「黙れ、そこの女」
「なによ、こいつ」
「レオンとカイル良かったの?」
「何がですか?」
「二人ともシンビ教徒なのに、やったらまずくない?」
「困ったらお互い様ですから。それに私たちはユウキに何度も助けてもらってるでしょ?」
「レオンの言う通りだ」
「ま、それもそうね」
ミアたちが牢屋の中で話している間、当のユウキは気持ちよさそうに寝ていた。
「zzz…」
「にしてもよく寝るわね」
「ユウキはとても疲れていたのでしょう」
「そうね。…てか、グムとデュラは?」
「二人とも尋問を受けて終わりだと思いますね」
「なんで?」
「二人とも魔物なので」
ミアは不満そうな顔を浮かべた。
「魔物だとなんかあんの?人とは違うの?共存じゃないの?」
「この街は少し複雑なんです」
「ためらわないで理由を言ってよ」
「ミア、レオンだって言いたくないことはある」
「なによ、カイルまで。…もういいよ!」
ミアは不貞腐れ、壁に体を寄せ目を閉じた。そんなミアを可哀想だと思ったのかレオンは話し始めた。
「ここ、『共存都市 アーメリー』には深い闇があるです」
ミアは静かに目を開け、レオンの方を見て話を聞き始めた。
「アーメリーは昔、人間だけの街だった」
「え?そうなの?昔からじゃないんだ…」
レオンは話を続ける。
「ずっと人間だけで楽しく最初はやっていたんです。でも、ある街長になってから変わったんです」
「変わったって何が?」
カイルが口を開いた。
「知的型魔物の受け入れだ」
「受け入れ?なんで?」
「その頃は知的型魔物の居場所がなかった」
「なんでなかったの?」
今度はレオンが話し始めた。
「怪物型との生存競争に負けて、住む場所がなくなったんです」
「それは可哀想に…」
「だから、ミアみたいに可哀想に思った当時の街長が受け入れをしたんです」
「でも、受け入れをしたからって人間の権力が落ちることある?」
レオンは少し暗い顔をした。
「…その時、人は魔物を敵として見ていた。知的型だろうが敵は敵だと…」
「で、人は何か魔物に酷いことしたの?」
「…そうです。人は魔物をいじめたり、虐殺をしたり魔物に対して酷い仕打ちをしました」
「そんなことが…」
牢屋の格子がついている窓から夕日が入ってきていたが、窓から見えなくなった。部屋は一気に暗くなった。
「そこで街長が新たな規則を設けたんです」
「新たな規則ってなに?」
「魔物を傷つけた場合即牢獄行きという規則を制定しました」
「人が魔物を傷つけたら牢屋行きってことは、魔物が人を傷つけたら当然同じく牢屋行きでしょ?」
レオンは俯いた。そのせいでレオンの表情が見えなくなった。
「それが…そんなことはないんです」
「…え?じゃあ違う規則が作られたとか?」
レオンが答えずらそうにしていると、代わりにカイルが喋り始めた。
「魔物が人を傷つけた場合は…何も規則が作られなかった」
「え?なんでよ。そんなの不平等じゃない」
また、レオンが話し始める。
「それで、魔物が今まで人間にやられてきたことをやり返したんです」
「…てことは、人と全く同じことを?」
「そう、です」
「それで、街長は規則を変えたの?」
「それが、街長が変える前に魔物側に乗っ取られてしまったんです」
「それじゃあ…魔物が好き勝手できるじゃない」
「その通りだ。何十年も魔物による人間差別が行われた」
「それは何年前なの?」
「60年前ぐらいです。しかし、ここ数年で、少しは人間側の待遇は良くなりました」
「なんで?」
「シンビ教が浸透して、共存の思想が広まりました」
ミアは暗い顔から怒った顔になった。
「全然共存じゃないじゃん…」
狭い牢屋の中は暗い雰囲気になっていた。しかし、こいつが起きてしまった。
「………うーん。頭痛え。ここどこだ?」
「今は牢屋です」
「あー、そうか。牢屋ね」
「驚かないの?」
「だって、牢屋は実家だろ(?)」
「何言ってんの?寝ぼけてるでしょ」
ユウキはまた目を閉じて寝始めた。
「いや、寝るんじゃないよ!」
「あー、悪りぃ悪りぃ」
「これは世界一、うざい謝り方だね」
ミアは笑顔だが、明らかに怒ってる。
「まあ、鍋蓋でも食べて落ち着いて(?)」
「はぁー。仕方がない。目が覚めるにはこれしかないか…」
ミアは「ふー」と一息ついた。ユウキの顔に一気に近付く。ミアは髪を耳にかけた。
「お?キスかぁ?」
ミアは顔が余計赤くなる。
「ち、違うわよ!」
──ペチンッ。
ユウキは思いっきりビンタされた。ユウキの顔には赤い手形が残った。
「いってぇな!なにすんだ!」
「あ、あんたが変なこと言うからよ!」
「は?なんか俺いったか?」
「もういいわよ!」
ミアは後ろを向いた。
「怒るなよ、俺が悪かったから、謝るから」
「別に怒ってないわよ」
「てか、なんで俺らここにいるんだっけ?」
「それも覚えてないの?全く、世話のかかるやつ」
「仕方ないだろ?覚えてないもんは覚えてない」
「あんたが、処刑止めようとしたからでしょ」
ユウキは少し考えてから、思い出したような顔をした。
「そうだった!あの後、青年はどうなった?」
ミアは暗い顔をする。
「殺されたよ…」
「…そ、そうか」
ユウキは俯く。
「俺は目の前の命を救えなかった。勇者失格だ」
ミアは隣に行き、体を寄せる。
「あんただけのせいじゃない」
「でも、俺は…」
「前にも言ったでしょ?一人で背負わないって。その約束忘れたの?」
「…忘れてない」
「じゃあ、あんただけが悪いって思わないで。私たちも助けられなかったから」
ユウキは顔を上げた。
「そうだな。もう一人では背負わないって約束したな」
ユウキはミアに向かってニコッと笑った。
ミアの顔は少し赤くなる。
「でも、なんであんなことが…」
「それはね…」
ミアはレオンたちに教えてもらった過去の出来事をユウキに教えた。
「そんなことが…。一概にどっちが悪いとかわかんないな」
「そうね」
すると、牢屋の外から足音が聞こえてきた。
「まずい、看守です。静かにしましょう」
「わかった」
足音は俺らの牢屋の前で止まる。すると、
──カチャッ。
牢屋の鍵が開けられた。
「四人ともでろ」
俺らは疑問に思いながら外に出た。
(一体なにをさせられるんだ?)
しかし、色んなことを考えている内に外に続く扉に着いた。
「出ろ。釈放だ」
「いや、なんで?」
「グレイヴァス様のおかげだ。良かったな運が良くて」
「別に運は良くねぇよ」
「そんなことはどうでもいい。早く出ろ」
俺らは外にほっぽり出された。牢屋を出た先にはグムとデュラが待っていた。
「遅すぎだ。ユウキ。遅すぎてこの世界にあるどんぐり全部食うところだったぞ」
「何言ってんだクソリス」
クソリスのことは置いといて、グレイヴァスって誰だ?様って言ってたし偉いやつなのか?
「レオン、グレイヴァスって誰だ?」
「グレイヴァスとはギルドのトップのロイシュタイン・グレイヴァスという知的型魔物です」
「え?ギルドって魔物がトップなのか?」
「はい、さほど人間と変わらない亜人です」
「なるほど?」
でもなんでそいつが俺らを助けたんだ?絶対なんかあるやん。よくわからんけど、そいつとは会わないようにしよ。すると、突然
「ユウキ様たち御一行でしょうか?」
「あ?そうだけど、何の用だ?」
「グレイヴァス様からご指示でお迎えに参りました」
「あ、人違いです」
ユウキは颯爽と逃げようとした。
「いえ、人違いではありません。確認しましょうか?」
「勝手にやってろ!」
「それでは。ユウキ・イザワ17歳。趣味は女性観察…」
「ちょ、待て!」
「17歳にしてまだ童貞…」
「俺が悪かった!行くから許して!」
ミアたちが変な目でこっちを見てきた。
「そんな目で見るな!お、俺はDTじゃねえ!」
「ユウキ、嘘は良くないよ」
「う、うるせぇわ!」
「では、こちらに」
執事らしき女の目線にはでっかい馬車があった。ここから俺たちは面倒事に巻き込まれることになるんだろうな。最悪だ。




