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君が俺の……



光は時計を使い、未来へとタイムリープした。



「ここが……」



茂さんが……母が……生まれ育った世界……

そして……

俺が生まれるはずの未来……




そこは、まるで異世界だった。


まず、公共交通機関はなく、

皆が一瞬にして現れたり消えたりしている。

エスパーとして瞬間移動的な能力が当たり前になっているからだろう。


そして、建物や店、学校、住宅などは全て現代で見てきたそれとは違った形やセキュリティをしていた。


電子機器もほとんどないに等しく、テレビは誰もが好きな時に好きな場所で空中に映し出すことができる。

スマホやPCを持たなくてもその場で意思疎通や作業ができ、音楽等の娯楽も然りだ。



しかしこの世界線ではまだ、光は生まれていない。

まだ12.3歳ほどの子供である光の母親・朱星(あかり)を捜さなくてはならない。

そして朱星は今、茂範とはぐれて逃亡中のはずだ。


それは以前話していた茂範の話の通り、

反社会組織として茂さん率いる組織は国から追われていて、2人はどこかで生き別れとなった。

そこからかなりの年月がたち、茂さんは大人になった朱星と再会できるが、朱星は妊娠していて、やがて俺を産んだという。

そして、政府から狙われているさなか、自分がしていた指輪を俺に授け、茂さんとまだ赤ん坊の俺を過去の時空へと後押しした……という話だ。



つまり今は、朱星も茂範も逃げ隠れし、国と戦い続けている真っ只中……


一見すると、この街はそのような争う事があるようには見えないが外部からはそう見せているだけだろう。

光には、雰囲気ですぐにわかった。

この国は、幸せに満ちている感じがしない。

確かになんの不自由もないように見えるかもしれないが、しかし、明らかに不自然な世の中になっている。


そしてエスパーの力によって、崩壊した建物などはすぐに修繕できるのだろう。

そもそもこの世界線では、家や建物はスキルパワーによって強固に守られている。

どこかで何かが起きても、基本的には安全ということだ。


だから一目見ただけでは、

現状の把握というのはかなり難儀だろう。


まるで戦争中とは思えない。




そして、茂範の言っていた通り

この世界にはアダマスもアクシアもサイも無かった。


あるのは……「アーテル」という政府組織。

アーテルのみが、この国も仕切っていた。




ひとまず光は、茂範に事前に脳に叩き込まれた場所に向かった。

茂範が朱星に再会した時、彼女がどこにいたのか聞いたらしい。

それは首都圈ではないが、とある県の1番栄えている街だった。

わざと人の多い場所を選んだのだろう。

だがそうなると、こちらも捜索しにくい。




" …必ず……どうか必ず朱星を救ってくれ "



茂範は最後にそう言って頭を下げてきた。


彼にとって彼女は、血の繋がりがなくても娘同然だったのだろう。

愛する人の娘だったのだから。


そして実の子供は、妊娠中の妻である七星と共に死んでしまった。


それを聞いた時、酷く胸が痛んだ。

彼にそんな悲しすぎる過去があるなんて、17年間そばで生きてきて知らなかったし、もちろん想像さえしていなかった。

本当に惨い話だと思う。


それでも茂範は、たった1人で未来を変えるために奮闘していたんだと思うと、本当にすごい人だとも思った。




「おい、そこのお前。止まれ。」



突然背後から声をかけられ振り返ると、

政府の、つまりアーテルのマントを着た役人2名が立っていた。


怪しむように上から下まで凝視される。



「お前……ここらの者ではないな」


「……。」


マズイな。もう見つかるなんて。

ていうか……なんで分かるんだよ。


やはりこの時代のエスパーは侮れない。


こうなったらもう……



光は密かに体制を整え、手にスキルを溜めた。



「お前まさか……SPIのエスパーか?」


「違います。人を探してるだけですよ」



用意していた答えを即答する。

念の為、サイだと分かる靴のエンブレムに別のものを貼って隠しておいてよかった。



「人探しだと?

一体どこから来て、どこのどいつを探しているのか説明してもらおう」



「ある人に依頼されて、SPIの重要人物を探しています。傭兵なんですよ俺。政府に協力するよう頼まれてるんです。極秘なので聞いてないかもしれませんけど。」



2人は眉を寄せて顔を見合せた。



「聞いていないな。

念の為、身分証を見せてくれ。」



茂範の話によると、その身分証というものは、定期的に行われるエスパー試験の合格証明でもある。

つまり、この世に存在しても良いという資格だ。

しかしそれはカードのような現代的なものではない。

この時代では、自己を証明するものや資格的なものは全てスキルによって腕に刻まれるのだ。

己のスキルを込めて呪文を唱えれば、腕に映し出されるという仕組みだ。


光は覚悟を決めたようにゆっくりと袖をまくった。


それと同時に攻撃を放ち、逃げるつもりでいた。


しかし……



「っ!おいアイツはっ!」



1人が突然声を上げ、光の後ろに斬撃を放った。


急いで振り返ると、

そこには斬撃を跳ね返している少女がいた。

一瞬目が合ったかと思えば、とてつもない速さでなんとこちらに向かってきた。


アーテルのエスパーは向かってくる少女に何度も攻撃を放つが、少女のすばしっこさには追いつけないようで、みるみる間が狭まっていく。



「くっ!やはりこいつっ!鷲谷の娘だ!」



光が目を見開くのと同時に、少女に腕を掴まれた。


かと思えば、次の瞬間には少し先の路地裏にいて、


「くそっ!待て!」と言っているのが聞こえたが、その声たちはどんどんと遠ざかっていった。



全てが一瞬のことすぎて、なにがなんだか分からなかった光は息を切らしながら急いで少女に声をかける。



「君がっ!茂さんの娘さん?!」



ていうか……俺の実の母親……


茂さんの大切な人。

俺が守らなきゃならない人。


この子が殺されたりでもしたら、

俺は生まれない。


少女は息を切らしながら、

ゆっくりと顔を上げた。


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