やっと見つけた
文殊遥は今、たくさんの傀儡たちと共に
影とそして1人の仮面をつけたアダマスエスパーと対峙していた。
「ほんっとに……っ!
次から次へと湧いてきますね……!
宣戦布告しにいらしたのですかっ……?」
攻撃をなんとか避けつつ傀儡を上手いこと使いこなす遥だが、このアダマスエスパーがかなりすばしっこくて手強い。
やはり私1人じゃ……
グッと奥歯をかみ締めたとき、
背後から突然援護が入り、危機一髪の攻撃を免れた。
「遅くなってごめんね遥ちゃん!」
「亜蘭さんっ!!」
「僕が可憐に登場したからには、もう可愛い子に苦労はさせないよっ」
サングラスを取りウインクを飛ばす余裕さながらな態度の亜蘭だが、影は祓えても仮面を被っているエスパーには彼の眼は効かない。
「力づくでも僕と見つめあってもらうしかないかな♡」
「ちょっと失礼」そう言って亜蘭は何匹かの傀儡を持ち、ポイポイとアダマスエスパーに投げ出した。
「ええっ!私の傀儡ちゃんたちっ!」
もちろんそれらはなんとも愛くるしい遥のぬいぐるみたちだ。
テディベアだけでなく、うさぎ、猫、犬、リスなどなどが次々とアダマスに当たっていく。しかもすごい勢いで。
彼らが視界を遮られている隙に、ついに亜蘭がエスパーの仮面を割った。
「………っ!」
やった!と遥は息を切らしながら言う。
しかし……
「どうしたんですか亜蘭さんっ」
亜蘭はエスパーを見たまま動かなくなった。
「……?ちょっと亜蘭さん?!
大丈夫ですか?!」
逆に何かの技にハマってしまったのかと思い、急いで駆けつけようとする遥。
亜蘭は今、目の前のエスパーと目が合っていた。
「………瞳子……ちゃん……」
仮面から顕になったのは、
あの頃と変わらない、瞳子の顔だった。
「瞳子ちゃん……僕だよ……」
瞳子は目を見開いて亜蘭を見つめている。
「ねえ……やっぱり思い出せない?
僕のことっ……」
亜蘭はやっと再会できたことに涙ぐんでいた。
「瞳子ちゃ」
「わからない……誰……あなた……」
そう言って瞳子は息苦しそうに胸元を掴み出した。
小刻みに震えているのがわかる。
「知ってる気がするのに……わからないのっ……」
亜蘭は下唇を噛んだ。
瞳子があの日あの時あの男に忘却のスキルをかけられたのは覚えてる。
僕のスキルが効いても……
やっぱり思い出せないのか……?
悔しすぎて、どうにかなりそうだった。
自分のことを忘れてしまっているよりことも、こんなふうにアダマスで使われていることが。
バッと勢いよく、瞳子の震えている体を抱き締める。
「ごめんね瞳子ちゃん……僕があの時……至らなかったせいで瞳子ちゃんがっ……」
あの時の無力だった自分の目の前で、ただ強がりの笑みを浮かべていた彼女。
彼女は一瞬で忘れて、僕は一生忘れられないものになった。
「お姫様に守られる王子様なんて、
絶対ダメなのに僕は……っ」
ボタボタボタボタ……
え………?
腹が熱い……
離れていく瞳子。
崩れ落ちて膝を着く亜蘭。
ゆっくりと視線を落とすと、
亜蘭の腹にナイフが刺さっていた。
「亜蘭さん!!!」
遥が駆けつけてくるのと同時に、
ウウウウウウウウウウウとサイレンのようなものが鳴り響いた。
それを合図にするかのように、
虚ろな目をした瞳子は一瞬でその場から去っていった。
「っは……ぁ……待ってっ……瞳子ちゃっ……」
「動いちゃダメですよ亜蘭さんっ!」
「ダメだっ……行かないでっ……」
「亜蘭さんしっかり!」
まるで正気を失っているかのように瞳子を追いかけようとする亜蘭を、遥は必死に止める。
「待っ……てっ……僕はっ……」
手を伸ばした先で、たちまち見えなくなる瞳子。
また僕から去っていくのか……
お姫様は……
いつになったら僕のものになる……
遥が何かを叫んでいるのがわかるが、
亜蘭はまるで聞こえていないかのようにおもむろに立ち上がる。
こんなの平気だ……
ちっとも痛くない。
やっと見つけたんだ。
次こそはもう……
二度と……
「二度と失わない。」
姫を攫った悪を殺して姫を奪い返す。
それが本物の王子だろう。




