各々の闘いが始まる
「おいおいなんでこんなに影がいるんだ!いきなり何がどぉなってんだ?!こりゃあよぉ?」
薬膳亮太は突然入り込んできた影たちを懸命に祓いながら心底うんざりした顔でそう吐き捨てる。
数え切れないほど集まっているそれは、まるで影憑をさらに大きく邪悪に、そして強靭に変形させたようなものたちだった。
「おそらくこれは……影憑石を集めてるってウワサのアクシアの仕業では?」
メガネを光らせ、時間をコンマ数秒ごとに分けて攻撃を仕掛けているのは時季誠。
「だがさっき風間と文殊が追いかけてった奴らのマント見ただろ?!ありゃアダマスじゃねぇのか?!」
「っ、それは見てないから知りませんけどっ……!もう私が何もかも知ってると思わないでくださいっ」
時季もかなり切羽詰まっていた。
何しろこの敵の数である。
別の場所にいる仲間たちの状況把握ができない。
「ぁたっ!」
「椛っ!平気?!」
鳥の巣を守ろうとして椛は木に登っていたため攻撃が避けきれずに脚に傷を負ってしまった。
咄嗟にエメ子が周囲の色を混ぜて絵の具のように攻撃を仕掛け、椛を守ろうとしていた。
「早く降りてきぃって!」
「っ!エメちゃん危ない!」
そのとき、背後に迫っていた攻撃を避けるようにサッと大きな美しい鳥がエメ子と椛を掴み高く舞い上がった。
「モトキっ」
それは空羅モトキのタトゥーを操るスキルだった。
モトキの首からは、フェニックスのタトゥーが消えている。
「モトキくんありがとう!」
「ありがとうとか言ってる場合ちゃうやろこのノロマ!ウチもアンタも死んでたかもしれんのやで!」
「うわぁ〜ん!ごめんなさーい!」
フェニックスに掴まれながら、エメ子と椛が騒ぎ始める。
それをウンザリ気味で見上げてから、志門とクマも闘いに挑んでいる。
「光はっ、大丈夫なのかよ」
「さぁな。おいらのいちごミルクを買ってこれてない時点で、巻き込まれてんのは明白だがな」
志門とクマの連携はかなり良い。
そのため2人がコンビになると周りの影はわりとすぐに沈静化できるのだが、次から次へと湧いてきていてキリがない。
「おいクソ野郎……俺のゲームの邪魔した奴、どーなるか分かってんの?あとちょっとでクリアできそーだったのに手元がブレたせいで死んだんだけどぉ?」
帆影夏樹はゲームを懐にしまい込み、イラつきMAXの顔で目からスキルを発動する。
夏樹の目には今、影憑のレベルやあらゆる数値が映るようになっていた。
夏樹のスキルは、見えているその数値たちをゲームのように弄ることができる。
相手が格下ならば数値をゼロにすることも可能。
その上で叩けば本当に一瞬でやっつけられるという、戦闘スタイルまでまるでゲームなのである。
ズザザザザー……と
全員の援護をするように四方八方に何枚もの札が飛んできた。
それは、熙のスキル攻撃によるもの。
椛が先程助けて持っていたヒナ2匹に「ふっー」と息を吹きかけると、瞬く間に成鳥へと変化した。
それぞれに2枚ずつ、熙が実家の神社の札を掴ませて飛ばした。
「おせぇよ、加瀬!カイト!
いっつまでもラブラブ篭ってんじゃねえよ」
「すまない!だがそんなことはしていない!」
加瀬熙とカイトは、2人で必要なものの買い出しという名のデートをしていたらしく、いつもよりオシャレ目な格好をしている。
熙はまた札を取り出すと、そこにまじないをかけながらあちこちの木やベンチや土などに投げた。
そこから六芒星を描くように光が浮き上がり、中に入っていた広範囲の影を一瞬で抹消させた。
「そもそもなぜガゼル内に侵入できるんだ?!」
「わからん!シールドが破られた痕がないのが不自然だ!」
熙とカイトは残りの影たちに対応しながら、今の状況判断に思考を巡らせる。
痕跡が無く突如敵襲にあうなんて誰が予想できるだろうか。
「ということは内部から湧いたということじゃないか!」
「あぁそういうことだクソっ!こうなったら考えられることは1つしかねぇじゃねぇか!」
「……まさかっ」
「そのまさかだ……!
ガゼルに……侵入を手配したスパイがいる」




