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アダマスの革命始動


2日後のことだ。


それは唐突だった。

あまりにも信じ難いことが、火蓋を切ったようについに始動した。



「よぉ。久しぶりだな月詠光。」


「な……んで……」



光は今日も数名のメンバーたちにスキル開花を手伝ってもらい、またクマに命令されいちごミルクを買うため自販機に向かっていた。


しかし目の前に突然、千鶴環が現れたのだ。

本来こんなことがあるはずがなく、予想さえしていなかった為、夢かと思ったくらいだ。

なぜならここはガゼル内部。

SPIが所持しているサイシンボルがないと入ることは不可能だ。



「な……なんでアンタがここにいるっ」


「まぁ、戦争の余興といったところかな」


「……は?」


「正確に言えば、アダマス以外の抹消さ。」



光が目を見開いたまま固まっていると、



「でも……」と千鶴は口を開いた。


「お前だけは例外。

亜斗里様に選択肢を与えられてる。

アダマスにつけば、命は狙わない」



「……さっきから……何を言って」



「今すぐここで選べ。

アダマスとして新世界の君主となるか、SPIやアクシア、その他弱小人類と共に何も成し得ることなく消されるだけか。」



光は文字通り混乱していて何も言えなくなっていた。


なぜ……なぜ俺なんだ……?

なぜ俺だけそんな意味不明な選択を迫られてる……?



「まぁ正直……俺個人の考えではお前は死ぬべきだと思ってる。決して生き残ってはならない唯一の存在……」



千鶴が凄まじいスキルを発動し、光がその一瞬の対処に追いつけずにハッとした瞬間……



「私の孫に手を出すな」



一瞬で目の前に現れ、跳ね返していたのは茂範だった。



「おぉ……アンタだよな?

未来から来て散々こっち引っ掻き回してる未来人てのは。」



光の体がビクッと反応する。

なぜそのことをこいつは知っている……?!



「実はこっちもよーやく完成したんだ。時空を越えれるスキル時計を。」


そう言って千鶴は小さな時計のような装置を取りだした。


「俺の部下がこれで見てきた内容……特別にお前らに教えてやるよ。どーせ確認しに行けてないから気になってんだろ?鷲谷茂範。」



茂範は険しい表情をして押し黙っている。



「月詠光……お前のせいで大変な世界になってたよ。」



「「!!!」」



「まさに平和とは程遠い世界。

お前のせいでアダマスもアクシアもなく、結局今と何ら変わらず悪がはびこり、戦争や災害は止むことがない……そんな酷い世界だ。」



言葉を失っている2人を、千鶴は睨んでいる。



「だから俺は、お前は1番死ななきゃなんねぇ存在だと思ってる。どーせこっちにつく気なんてねぇんだろ?だから問答無用で今殺しても、亜斗里様も承知してくれるはずだ……」



バシュッー!!

ザッ!!ドシャッー!!


千鶴の攻撃は、茂範によっていとも簡単に払われた。



「チッ、邪魔をするなよ老いぼれがぁっ」



バババババー……!!

ドカドカッー……!!



千鶴と茂範の凄まじいバトルが勃発してしまった。

光は庇われてばかりで身体は震え、どうしていいのか分からずにいた。

あまりにも唐突すぎるこんな状況と、言われた内容の数々に思考が追いつかない。



「光!全員にこのことを知らせろ!」



パチッと茂範が指を鳴らし、ガゼル内にすごい音の警報が響き渡った。

これは緊急事態にのみ鳴るものであり、光は今この瞬間初めて聞いた。



「早く行け光!」



すると、ニヤ……と口角を上げた千鶴もまた指を鳴らした。


その瞬間、シュシュシュシュー……と音を立てて地面から黒々としたモヤが見えたかと思えば、何人ものアダマスのマントのエスパーたちが現れた。


それと同時に、なんと真っ黒い影憑が大量に現れ四方八方に散らばっていく。



「なにっこれっ……」



ゾクッと背筋が凍り、それに突き動かされるように反射的に光の体が動く。


超特急で走って広場の全員の元へと向かう。



「くそっ……」


1人残してきた茂さんも心配だし、他の人たちにも危険が及んでるかもしれないし、とにかく早くっ……俺がどうにかしないとっ



「!!!っう!」



突然、シュッー!と何者かが目の前に来て手をかざされた。

まるで跳ね返るように凄い勢いで後ろに飛ばされ尻もちをつく光。



急いで顔を上げる。

そこに立ってこちらを見ている人物に目を見張った。



「っ!は、颯っ……!」



それは、アダマスのマントを羽織っている親友、颯だった。

あれから1週間近くたったが、どうなっていたのか……



「颯っ、俺のこと……わかる?」



シュッー……!

バシッー……!



「っ、まっ、待て颯!やめろよっ」



颯は無言で攻撃を仕掛けてきた。

明らかに、あの頃の颯ではない。

瞬足だけでなく、このような攻撃スキルまで身につけているとすれば、アダマスに改造されたのかもしれない。



ドカッ!バシッ!


速いっ!しかもものすごい威力……!



「颯!目を覚ませ!!」



光は、やはり……と後悔した。

やっぱり……あの時アダマスなんかに颯を盗られたから……俺が置いていっちゃったから……


まただ……

また……俺のせいで……




ババババババ!!!!



「?!」



いつの間にか光は、他のアダマス連中にも囲まれて攻撃されていた。

仮面を被っていて顔は分からないが、ざっと5人はいる。


「くっ……!」


光は四方八方からの攻撃を避けながら颯を相手しなくてはならなくなった。


その時……


バシッー……!


光に当たる寸前だった攻撃を弾いたのは……



「奏さん……!」



そして……



シュッ

シュッ

シュッ


次々に現れるサイメンバー



「他は俺らに任せろ月詠!」


愁磨の声に賛同するように、浩輔、朝比奈、そして……

ぐおぉぉぉおおおーー!!とすごい音がしたかと思えば、龍に乗った龍太郎が現れた。


「おいおい月詠大丈夫か?マジなんなんだよこれ」


「さすが光さん。この数を1人で相手してたんですね」


浩輔がその小さな体からは想像できないほどの強力な光を放ちつつ、光に微笑んだ。

その表情に、少しだけ勇気づけられる。



「みっ、みんな……他の人たちは?!」



「襲撃されてから敵とそれぞれ散り散りになったわ!」


朝比奈がその長い髪で敵を巻きとりつつそう叫び、愁磨はいつもの怪力で敵を放り投げていた。


しかし、今の敵はアダマスのエスパーたちなので、そう簡単にはいかない。

なぜなら亜斗里によって作られた最高度のエスパーたちなはずだからだ。



とはいえ、ほかの人たちを心配している余裕が、今の光には無い。


「颯!!お前と殺し合いたくないよ!」



今の光ならば正直、颯を簡単に殺すことができるだろう。

しかし親友を傷つけることさえ光はしたくない。



光は下唇を噛み、覚悟を決めたようにスキルを放出した。

颯のスキルとジリジリと力比べになる。



「なぁ颯、聞いて……俺……」



"今だって俺は……光のこと親友と思ってんだぞ。……俺だけだったのかよ!"



そう言っていた颯……

俺はあの時ちゃんと言い返せなかった……。



「俺も……お前のこと、今でも親友だと思ってるよ。たった1人の……俺の1番の親友なんだ!」



颯の瞼がピクっと動いた。



「思えば俺ら、これが初めての喧嘩だよな。

仲良かったんだよ俺ら……すごく……

そんでさ颯……いつもお前が優しかったから……だからっ」



親友の目を真っ直ぐと見ながら徐々にパワーを強めていく。



「だからお前に…っ…俺はいつも甘えっぱなしだったんだと思う……ごめんっ」



でも俺はきっとずっと、この先もこれからも……颯に甘えてたいんだよな。

そんな関係性が……なによりも居心地よかったから……




「颯お願いだっ!これからもずっとずっと……っ、俺の……俺の1番の親友でいてくれよ!!!」



光のスキルが颯のそれを上回り、颯の体を貫いた瞬間、颯は仰向けに倒れていくのと同時にハッと目覚めるように意志を取り戻した。


この瞬間、忘却解除と洗脳解除のスキルを光は身につけたのだ。


目を見開いて倒れている颯の元に、光は急いでかけていく。



「颯!!大丈夫か?!」


「……光?……え?」



涙ぐむ光がバッと颯を抱きしめる。



「ど、どうしたんだよ光……泣いてんのか?」


「俺とずっとっ……親友でいて…くれるか?」


ギュッと抱きしめ涙ながらにそう言う光に、颯は目を丸くする。

そして、徐々に目を細めて口角を上げた。



「……ははっ……何言ってんだよ光」



光の背を抱きしめ返す。

同時に、こうして抱擁したのが初めてだと気づく。



「当たり前だろ!一生親友だよ!何があっても!」



いつもの明るく元気な颯の声が、あまりに懐かしく感じ、光の鼓動がドクッと波打つ。



「つぅか光お前……まるで俺の恋人かなんかみたいだぜ?」



そう言われて一気に気恥ずかしくなり、急いで体を離した。

今まで何度も見てきた親友の目と目が合い、同時に照れながら目を逸らし、急いで応戦体制に入った。

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