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文殊遥と風間朧はデキている?!


もう深夜1時近くになる頃だ。

なんだか息苦しくて目が覚めると、顔の上にはデーンとクマの両足が乗っかっていた。


「うぅ……もーどーゆー寝相の悪さしてんだよ……」


そう言ってクマをどかすと、クマも目が覚めたようで、「起こすなよてめー」などと悪態を憑かれた。


クマは本来ならば持ち主の志門の部屋で寝るはずなのだが、志門は夜遅くまで夏樹とゲームをすることになったから今夜は預かってほしいと頼まれたのだ。


「なんかオイラ、いちごミルクが飲みたい」


「はぁ?こんな夜中にそんなん飲むの?てゆーか今日2杯も飲んでたよね?もう……」


クマは言い出したら聞かないし、何故か一度飲んだいちごミルクというものをかなり気に入ってしまっている。

光はなんとなく自分も炭酸が飲みたい気分だったため、寝ぼけ眼を擦りながらクマを抱えて自販機まで歩いていた。



「……??」


なんだか話し声のようなものが聞こえ、なぜか反射的に光は身を隠してしまった。


「オイオイありゃ遥と朧じゃねぇか?」


クマが呟いた通り、仲良さげに話しながら廊下を歩いているのはまさにその2人だった。


「こんな夜更けにうろつきやがって、しょーもない奴らだな」


「いやそれは俺らもだよクマ……」



いやそんなことよりもだ。

普通に気になりすぎる。

こんな深夜1時に一体2人で今からどこへ何しに行くのか……?


まさか2人は……デキている?!

いやそれはありえない。

なぜなら朧は生粋の如く玲二一筋だからだ。



「オイオイオイオイ何追いかけてんだよ光!男女の夜の密会を邪魔する気か?!」


「しぃーっ!だって気になりすぎてこのままじゃ寝れないよ!」


クマのくせに凄いこと言うなと思いながらも、こっそり追いかけずにはいられない光は、既に心臓がバクバクと煩くなっていた。


「そもそもなんであの二人が……?」


確かにいけないことをしている自覚はある。

だがありえない組み合わせの2人がありえない時間にウロウロしていたら……こんな状況尾行せずにシカトして自販機直行ベッド直行なんてしていられるか!!



「なぁオイラのいちごミル」


「えっ!?」


なんと遥と朧は2人して男子浴場に入っていってしまった。


嘘だろ……なんで……?え、どゆこと?!



光は無意識に浴場の扉付近に身を潜めていた。


明らかに服を脱いでる音がする……。

そして暫くするとシャワーや湯船の音がしだした。


「え……うそ……?」


ヤバいヤバいヤバいヤバい!!

こんなことあっていいのか?!


年頃の男女が一緒にお風呂……?!

もちろん裸だよな……?!

え、え、何、裸の付き合い……?!



「ドンマイ光。ま、そゆこともある。お前が遥に恋焦がれてたことは分かってたが、潔く諦めるんだな。さ、いちごミルクんとこ行くぞ」


一体人生何周目だよというような発言をするクマを無視し、光は混乱しながらも脱衣所に足を踏み入れていた。



「え、おい光どこ行く!おい待て待て待て待て」


今の光の意識は衝撃のせいで朦朧としていた。

クマが止めるのも聞かず、本能のまま光は浴槽の扉をバンッと勢いよく開けてしまった。




「「っ?!?!」」



仲良く浴槽に浸かっていた遥と朧は当然、目を見開いて固まっている。

が、光も固まっている。


しばらくそのまま見つめあい、数秒の沈黙が流れ、そしてそれは朧が破った。


「なっ、なんだよ突然!人の入浴覗きに来たわけ?!」


「オイラはちゃんと止めたんだぜ〜」


「変態野郎だったんだな光はっ!玲二先輩に言いつけるからなっ!」



朧は心底いきり立って、風のスキルでビュシャッー!と湯を飛ばした。

湯が盛大に顔にかかった光はようやく我に返る。



「やっ!違うよそんなことより!!

ここは男子の浴場だろ?!なんで遥ちゃん連れ込んでるんだよ!!それダメなやつだろ!絶対!!」



「はぁ?何言ってんだよ?!忘れたの?遥は、」



「朧くんごめん!」



「え?」



「光くんはまだ……知らないの」



そのやり取りに光も朧もポカンと口を開ける。

遥は恥ずかしそうに顔を火照らせながら、ザバッ!といきなり湯から立ち上がった。



「………え……」



その白い身体はどう見ても男。

そしてしっかりと、自分よりも立派なモノまでついている。



「……………。」


光はこれでもかと言うほど目を見開いて文字通り固まっていた。



そう。こんなに可愛い顔したブリブリロリータ美少女・文珠遥は……男だったのだ。



風呂から上がり、覗いた罰として遥と朧にもジュースを買ってあげる羽目になってしまった光。

大好きなコーラをごくごくと飲み、沸騰していた頭をようやく冷却できた。



「つ、つまり……遥ちゃん……いや、遥くん?は……男で、えっと……女装が趣味……と?」



「失礼なこと言うなよ光!遥は女装してんじゃなくて、みんなと同じように好きな服装してるだけなんだよ!」



あっ……ごめん。と光は口を噤む。


世間知らずだからか、ついデリカシーのない発言をしてしまう。



「いいんですよ。私、身体は男なんだし。でも今まで通り遥ちゃんって呼んでくださいね」


いつもの優しい笑みで朗らかにそう言い、いちごミルクのストローに口をつける遥を見ていると、どこからどう見ても可愛すぎる美少女で、また光の脳内はバグってくる。


確か、朧は前に自分はバイセクシャルなのだと言っていた。

だからきっとこの2人は気が合うんだろう。

入浴するのもなんとなく、他の人がいない方が居心地いいんだろうな……。



「それにしても、可愛いクマちゃんですねー。いちごミルクが好きなんて私とおんなじ。」


クマだけは話に全く興味を示さず、夢中でストローをチューチュー吸っている。



ブブッ


自分のスマホのバイブが鳴り、光はポケットからスマホを取り出し画面を開いた。

それは茂範からの返信だった。

寝る前に光は、茂範から貰ってクマ作りに使った布について聞いたのだ。



「え」



つい声を出してしまった。


そのメールの返信には、「赤ん坊の光を包んでいたもので、朱星の手作り」とあった。


光は、なにやら遥と朧とお喋りしているクマを横目で見る。


その薄オレンジ色のクマの体は……

俺の、"おくるみ" でできているのか……?

しかもそれが俺の本当の母親の手作りだったとしたら……何か念が込められていたかもしれない。

だからクマは特殊なのかも……?



それにしても……茂さんってこんな時間まで起きてるのか……?



「あっ!あんな所に玲二先輩がいる!」


玲二アンテナが誰よりも強い朧が突然指さした。


外廊下を挟んで向こう側の、影憑石が保管されている建物の近くからこちらに向かってくる玲二が見える。

近づいてくるにつれ、確かにあれは玲二だと分かる。

が、よくあんなに遠くにいてもそれを判断できたなと朧の玲二アンテナと玲二識別視力に感心してしまった。



「……玲二さん、こんな時間にあんな所で何やってたんだろう?」


「そおいえば僕、けっこー前にもここで見かけたことあったな〜。きっとたまーに夕涼みにお散歩してんだよ」


わざわざこんな時間に……?

と思ったが、少しづつ近づいてきた玲二がこちらに気がついたようで手を挙げてきたため思考を遮断した。

なにしろ、薄闇の中、風に揺れている長髪をかきあげる仕草までもなんとも妖艶で色気がある。



「やぁ、君たちこんなとこに集まって何して遊んでるんだい?」


「玲二せんぱぁあ〜い♡」


目がハートになってたちまち玲二に抱きつくいつもの朧は置いといて、光は少し慌てる。


「こんばんはっ、えっと……たまたま遭遇してここでジュース飲んでただけです」


お風呂覗き見して云々の過程はさすがに言えない。



「……玲二さんは何を?」


「んー、ちょっとね。このへんの監視さ。前〜に変なのが入り込んだことがあってね」


「変なの?でもここって強力なシールドで守られてるはずじゃ、、」


「そういうのも簡単に破ってくるようなのもいるんだよ。みんなも気をつけて。じゃ、おやすみ。……ほら朧離れてっ」



さすが玲二さんだなぁ……

みんなが寝静まってる時間にも任務外のことをしてるなんて……!



この時はまだ、そうとしか思わなかった。

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