一番最初の歯車を回す人
朱星が生んだ子供、光が1歳になるころだった。
エスパー戦争はクライマックスを迎えていた。
国の機関に見つからないよう、茂範は朱星と光だけでも亡命させようと、以前からサイの仲間たちの力を借りて、ある物を開発していた。
それは、時空を越えられる機械。
その丸く小さな懐中時計のような形の物を、朱星に渡した。
「未来はどうなるか分からない。だからお前は光と共に過去に行くんだ。それまでに我々が良い未来を創りあげるから」
息を切らしてそう言う。
追っ手がすぐそこまで来ていて、ここで逃げ隠れできているのも時間の問題だ。
「今から約100年前……まだ人々にエスパーの才が浸透してなかった頃に戻るんだ。いいな?」
しかし朱星はそれを手に持ったまま固まり、動かない。
何かを思い出しているように手を震わせて。
「何をしてるんだ!早くしろ!もう時間が無い!」
" いつか、パパはあなたにある物を授けるわ。
でもあなたはそれを受け取っちゃダメよ朱星。
それは、必ずパパに使わせるのよ。"
「……これを使うのは私じゃない。」
そう言ってその時計を茂範に押し返した。
「パパが行って。できれば光も連れて」
「!なっ、何を言ってっ」
「私が行ったって何もできない。何も変わらない。でもパパなら変えられる!」
力強い朱星の眼光が、かつての七星と重なった。
"あなたは一番最初の歯車を回す人です"
茫然と言葉を失っている茂範に、朱星はゆっくりと光を抱かせた。
そして、自分の指輪に紐を通して光の首にかける。
「未来を守って。皆の人生を……」
「……っ、朱星……」
「早く行って!!!」
バンッと思い切り朱星に体を押し飛ばされ、時計にスキルを流した瞬間……
ズババババババババー……!!!!
最後に見えたのは、笑顔で散っていく朱星だった。




