俺の正体が明かされる
その日の晩、またいつもの夢を見た。
いつものように、白いサンカヨウが一面に咲いていて、この世ではないかのような美しい場所だ。
"サンカヨウの花って、どんなときにどうして咲くのか知っていますか?"
ふと、瞳子が言っていた言葉を思い出した。
"誰かが誰かの幸せを願った時に咲くんです。その誰かが、この花を見て幸せになれるように"
……ということは、ここも……
「あ……起きた……?」
切なげな笑みを浮かべている女の子。
いつも夢に出てきては、こんな笑顔だけを向ける。
「その指輪……綺麗だね……」
そこでまたいつも通り、パッと目が覚めた。
その日、光は茂範に昨日の出来事を話した。
茂範は考えこむように腕を組んだが、とくに言及しなかった。
いつもの光だったら、とくに疑問も抱かず、言われるがまま従うか、このまま別れたかもしれない。
しかし今回は、千鶴環の言葉が脳裏にこびり付いていた。
"人間は唯一、自分でものを思考することができる存在なんだ。それを放棄してる奴は、家畜、ペットとも言う。
光くんはどうも、SPIのペットみたいだな。
いや……違うな……
キミは、SPIのペットというより、あの爺さん……鷲谷茂範の犬ってところかな。いや、猫か。
光くん、君さ、あの爺さんのこと、どこまで知ってんの?"
「ねぇ茂さん……茂さんって、何者なの?」
茂範は横目で光に視線を移した。
光は真剣な顔をしている。
「そして、俺って何者?教えてほしいんだ」
眉間に皺を寄せる茂範に、光は少しイラついてしまった。
「なぁ、いい加減教えてよ。俺気づいたんだよ。何かがおかしいって……。」
そう、考えてみたら、いろいろと不思議だった。
だから、1番おかしかったのは、それに全く気付かず過ごしてきた俺だ。
「まずさ……なんで俺の小さい頃の記憶は無いの?どうして俺の両親は、俺がサイに行く時、知ってたような態度だったの?そもそも……俺の本当の親って誰?」
光は、カミラと雀の話も思い出していた。
"もう20年前くらいになるかなぁ……
アタイらが12.3歳くらいの時さ〜、気がついたら茂さんに助けられてたんだよ。"
" 頻繁に情報だけを買いに現れるお客が現れたのよ。それが茂さん "
" 不思議なことに、アタイら3人とも全く覚えてないんだよ。"
" 君を丸ごと買おう。いくらかな。
ですってーーーー!!!きゃぁぁあ "
「ねぇ、茂さんはいつからこの組織にいるの?どこから来たの?なんで茂さんって、俺が物心ついたときからずっと俺のそばにいるの?」
"そん時の茂さんの凄いところったら、なんと赤ん坊背負って闘ってたんだぜ?"
「……俺さ、何度も同じ夢を見るんだ。
白い……サンカヨウだけがいっぱい咲いてるところで……女の子と話すんだ。今日はこの指輪、綺麗だねって言われたよ……」
そう言って、光は家を出る前に両親から渡された指輪を服から取りだした。
あの日からずっと、首にかけたままだ。
「でもこの指輪……同じのを甘艸亜斗里もしてたんだよ……」
光はその指輪をジッと見つめる。
পোহৰ কঢ়িয়াই অনা
読解できない文字が書かれていて、美しく光るシルバーの指輪だ。
亜斗里はこれと、間違いなく同じものをしていた。
" この世で起こること、全てに必ず意味があるのさ "
同時に、亜斗里の言葉を思い出す。
「ねぇどうしてだと思う……?
俺って一体……っ?!」
顔を上げると、茂範の顔が初めて驚いたような表情になっていて、光は言葉を詰まらせてしまった。
「光……その指輪を亜斗里が……?」
「そ…そうだよ」
茂範はもういつも通りの無表情に戻っていた。
「お前の疑問、全てには答えられない。
ただの憶測でモノは語れんからだ。だが……わしが知る限りのこと……わしの過去のことを今から話そう。いいか?」
茂範のその無の表情が、この先の想像もつかない話を聞くことを恐ろしくさせる。
しかし光は、覚悟を決めたように強く頷いた。




