新店へようこそ
「……んぉ?なんだアンタら。
うちの集会場所で何してる?」
あっ…と光は思った。
そういえば暴走族といえば、よく近所の神社なんかを集会場所にしていると聞く。
明らかに怖そうな女の人たちばかりだし、妙なことに巻き込まれたくないから移動しよう……
「あ、えっと、お久しぶりです梓美さん。すいません邪魔ですよね。俺ら移動しますんで、」
「桜小路!丸1年ぶりじゃないか?!」
逃げようと目論んだのに、熙の大きな声に遮られてしまった。
「ん?あぁ!よく見ると熙じゃないか!」
「まだ暴走族なんてやってたんだな」
「当たりめぇよ!こぉ見えて総長だぞぉ?」
美威凪珠総長とでかでかと刺繍されたピンクの特攻服に巨乳を際どく隠したサラシ、ピンクのデコバイク……
その出で立ちはまぁ、どう見てもヤバそうな暴走族の総長なのだが……
「あ〜っ!そっか、そぉいやボス(茂さん)から合同訓練久々スタートすっからっつー招集メール来てたわぁ!」
「なら顔出さなくちゃダメだろう。なにやってる」
「そりゃあ喧嘩に決まってんだろぉ?!最近ここら幅効かせてきてる族いっからさぁ」
「そういうことを聞いてるんじゃないよ」
相変わらず、バイクに乗ったままの梓美とは誰でも話が噛み合わないらしい。
光も正直、バイクに乗った状態の彼女は少し苦手としている。
とは言っても、バイクに乗っていない彼女もそれはそれで絡みづらいのだが……
「あー、梓美さん…
とりあえずバイクから降りませんか」
光が促すと、梓美は「よっ」と言って可憐にバイクを降りた。
「あ〜ん!もっ!ほんっと嬉しい〜っ♡久々に二人に会えて!熙兄さんなんて1年前私が大阪行った時以来でしょう?!」
二重人格さながらに人が変わった梓は、
熙に腕をからませながら乳房をギュウギュウと押付けている。
それでも全く表情を変えない熙はさすがだと光は思った。
「あぁ、あの時は困ったぞ?
任務で来たくせに四六時中酒飲んで、挙句酔っ払って潰れてうちで寝てたじゃないか」
え、梓美さん熙さんちに泊まったの?
と光は一瞬驚いたが、しかしそれもカイト以外の同性と異性に全く興味が無い熙だから問題ないのだろうと納得した。
「えへへ〜♡熙兄さんあの時はお世話になりましたっ♪てへぺろ♪」
「おい、そんなことより集会?やらなくていいのか。私たちはもう行くから離れろ」
「あっ、そぉだったわぁ、忘れてたぁ。
ていうか、すぐ終わるからちょっと待っててよぉ」
光たちが何かを言い返す間もなく、梓美は、ズラッと並び、ビシシッ!と整列している仲間たちの前へ出る。
「「「お疲れ様です総長!!」」」
一見すると、この図はさながら映画や漫画のようで、物凄い緊張感と迫力を醸し出している。
のだが……
「ごめんね皆。私、大事な用事できちゃったの。だから悪いんだけど、今日はもうおいとまさせていただくわ」
「「「?!?!」」」
「ちょ、ちょっと総長……?!」
「あ、愛羅ちゃん。副総長として後は宜しくね♡」
「え、あ、了解いたしました…」
ものの見事にたった数秒で終了してしまった。
「おまたせ〜♡ねぇどこ行くどこ行く?」
「桜小路…もういいのか?
いや、どこ行く?じゃなくて…普通にガゼルに顔を出せという話だ」
「そんな今すぐじゃなくたっていいじゃないのぉ〜。私、普段の任務は毎日たくさんこなしてるんだからぁ〜問題はないはずよ?ボスだって何も言ってこないものぉ。」
梓美は光と熙に腕を絡め、
「じゃ〜ゴハンにレッツゴー!」
と勝手に決めてしまった。
そうして着いた先は……
「あれ?ここって……」
焼肉こころ……と書いてある看板を見て、光は首を傾げる。
リーダーの武臣や皆とよく行く焼肉店と同じ名前。
「光くん知らなかったの?
伸さん新店舗出したのよ♡」
「そうだったんですか?!」
確かにここ一週間は来ていなかったため、そのことは全然知らなかった。
まだオープンしたてなので、表には花がたくさん飾られている。
「こんにちはーっ!」
「「いらっしゃいませ〜!」」
おぉ、向こうの店舗よりだいぶ広い……!
席に案内されながらグルリと店内を見回していると……
「わっ!」
「「「?!」」」
なんと、他のサイメンバーがいた。
まず、Kトリオの2人・カミラ、カイト、そして
タレントの朝比奈アリサ、狼乗りの御子柴マモ、動物使いの廿楽椛、ミカエルズギタリスト音琴奏
そして……
薬膳亮太と時季誠は武臣と共にビールを飲んでいた。
その隣には、梓美が大好きな鳳瑠真までいる。
酒には弱いらしく、日本酒的なものを物凄く薄めていた。隣には物騒な日本刀。
「きゃぁ〜っ!みんなぁ!瑠真くぅ〜んっ♡」
梓美はさっそく瑠真の方へと行ってしまった。
こうして見ると、どう見てもおかしな人たちの集まりなのに、よく店長の伸さんは受け入れてくれるよなぁと光は思った。
「あっ!そうだ新店にはまだサインないからさ!朝比奈ちゃん!音琴くん!忘れないうちにお願いっ!」
伸さんが持ってきた色紙に、2人は快くサインを書いている。
その近くで、またいつもの如く瑠真の鼻血を拭いている梓美。
完全に自分の世界に入り、もりもりとご飯の皿を積み上げていく大食いカミラ。
「おぉっ!カイトもいたんだな!
会いたかったぞ〜〜♡」
ギュッ
「おまっ!数時間前に会ってただろ!」
イチャイチャしだす熙とカイト。
なんだかまるで動物園みたいだが、店長も店員も全くもっていつも通りだ。
もう外は暗くなりつつあり、一種の飲み会のようになっていた。
「光く〜ん!ここどぉぞぉ〜」
光がどこに座ろうか迷っていたところ、手招きしてくれたのは身長135cmの廿楽椛。
「私ちっちゃいから、ここ座れるよぉ」
「え、あ、いいんですか?
ありがとうございます」
「おう、うちらの間に入れよ」
御子柴マモが席を立ってくれ、
彼女たちの間に挟まれることとなった。
こうして見ると、椛は小学生低学年並の小ささに少し驚いてしまう。
「で、光は酒いけんの?」
「えぇっ?いや俺まだ17なので……」
「あれっ?そおだったの?それはドンマイだね。肉と酒って最高なのに。っあ!すいませーん!イイチコお願い!」
「あっ、マモちゃんずるぅいぃ!私も私もぉ!えっとぉ、魔王!」
御子柴マモと廿楽椛は焼酎を注文しだした。
廿楽椛に関しては、その小柄すぎる外見からは想像がつかないほど酒に強いらしい。
光は先程の熙との訓練で散々しごかれたせいか、あまりお腹が減っていなかったので、ウーロン茶だけ頼み、テーブルに並んでいるものを適当に摘むことにした。
「ぷはぁ〜っ!うまっ!
んで椛ぃ、さっきの続きだけどさ、うちのウルフが結局そのあと変な仮面の奴が扱うイノシシみたいのに頭突きされたんだよ!」
「うん…さっきウルフくんから聞いたよ。
牙が掠れて血が出たんでしょぉ?マモちゃんの治癒で助かったって言ってたけど…危なかったね。目とかに刺さんなくて良かったって話してて」
「えっっ、仮面のって……
それってアクシアですか?」
光は2人の話につい口を挟んでしまった。
そもそも、今回の合同訓練の件は大阪の皆は全員アクシアと接触したという話の前提で組まれたものだし、そのことは1番詳しく聞かなくてはならない話だ。
「や、それがさ…アクシアじゃないっぽいんだよ」
「えっ?」
「多分アレは……アダマスだった」
マモのその言葉に、周りの皆も動きを止めた。
「だってアレ…妙なマントを着てたんだ。
前に会ったアクシアは仮面もマントもなかった。」




