同じ夢を見る
風が心地好い。
どこまで広がっているのかわからないくらいの広い場所に、俺はただボーッと突っ立っていた。
辺り一面に小さくて真っ白い花が咲いている
「これって……確か……」
知ってる花だ。
誰かが俺にくれたことがある。
透明になって俺の中に吸収された花だ。
名前は………
「サンカヨウの花言葉はね、」
突然の声に驚いて視線を巡らすと、いつのまにやら隣には一人の少女がいた。
少女は隣にゆっくりと腰を下ろした。
持っている花を、どこか切なげに見つめている。
「自由、幸せ……」
彼女の長いまつ毛についていた雫が風に揺れ、サンカヨウの花に落ちた。
あれ……?
前にもこの子……見たことあるような……
それに……ここにも来たことある気がするし、
こんな会話もした気がする……
でも……いつ?どこで?
なぜか全然思い出せない……。
「ねぇ、あのさ……君は一体……」
首を傾げてこちらを見上げる少女の目に、引き込まれそうになる。
その瞳の奥を見つめていると、何故かクラクラとめまいがしてきてしまった。
「……ーーっは!」
「……あー、よーやく起きたね」
「何度も引っぱたいてるのにぜんっぜん起きないんだからァ」
なぜか目の前には冷たい表情の夕凪と、怒ったような表情の朝凪がいる。
2人は顔は瓜二つでも、性格はとても対照的だ。
「……え?……えっと?どういう状況?
え、なんで2人がここに?」
寝ぼけているのかと思い自分の頬を抓ってみたりしたが、普通に痛い。
「起こせって言われたの。」
「誰に?」
「カイトさん」
……ってことは、つまりは茂さんかぁと急いでベッドから出て顔を洗う。
この寮は、それぞれ個別の部屋に全てが揃っており、マンションの一室に一人暮らししているのと変わらない。
「とにかく早くしなさいよね!」
「はい、頑張ってマース」
元々そんなに寝起きが良くない光は、あくびをしながら適当な返事をし、とにかく自分なりに急いで身支度した。
着替えている間も、まるで自分の部屋にいるかのようにくつろいでいる年頃のはずの2人に、光は貞操観念云々よりも自分という存在のポジションに疑問を抱いてしまった。
少し天然なところがある光は、なんの疑問も抱かず着いてきてしまったのだが、目的地に到着して初めて気がついた。
「え……ここ……」
茂さんちじゃん。。
ということは……
恐る恐る隣を見れば、自分の実家があった。
その瞬間、言葉にならないくらいの虚しさと、心の隙間に冷風が抜けていくような、なんとも言えない感覚が一気に押し寄せてきた。
チクチクと心臓の当たりが痛い。
「嘘……だろ、俺……」
「おーい、光ぃ〜。早く行くよー」
「ホームシック……ってやつなのか……?」
これが……。
いや……そんなことを考えて、今ここで立ち止まっている暇はない。
光は二度と視界に入れないように深呼吸して歩を進めた。
かなり久しぶりの茂範の家。
よく彼がタバコを吸っていたこの玄関前は何も変わっていない。
しかし、なぜか夕凪朝凪は、ピンポンを鳴らそうとする光の手を抑えた。
「へ?」
首を傾げると、2人同時に首元のペンダントを見せてきた。
それは、PSIサイのシンボルマークのペンダントだ。
「これ、あるよね?」
「あぁ、うん。俺の場合は、ほら。
このスニーカーに着けたんだ。」
そう言ってスニーカーを指さしてみせる。
「これを持っている者だけが入れる場所があるの」
「つまり、それを身につけてる時とそうじゃない時は、この先の場所は変わるっつーことね」
「え?!」
そんな摩訶不思議な家があるのか?!
と驚くが、まぁよく考えてみれば今更何に驚くことでもない。
そうしてそのまま扉を開けた先では、本当に全く違う光景が広がっていた。




