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三角関係

そうして着いた先は焼肉店だった。

" こころ " という店名が書かれていて、普通の古民家に位置しているような目立たぬ店だ。



「え〜ちょっと武さんまたここぉ?」

「本当ここ好きですよねリーダーって」


爽斗と雫の反応を見るに、光と志門は初めてでも、ここは武臣の相当なお気に入り行きつけ店なのだろう。



「よく飽きねぇな、じぃさん」

「アタイここ好きぃ〜ご飯とスープおかわりし放題だしぃ〜てんちょーも皆も優しいしぃ」



カイトとカミラの反応からしても、皆ここへ何度か連れてこられているようだ。




「あのねぇ、私はねぇ、ここに週1で来てるんだよ。それをかれこれ10年近く続けてる」



「「「えぇっっ」」」



ちょうど玲二も合流し、皆で店内に入る。



「いらっしゃいませー!あぁ!武さん!今日は大勢連れてきたね!もうランチ時ちょい過ぎたから席は空いてるよ!」



「やぁ伸さん」



「相変わらず顔色良さそうだね!安心安心!」



「心配されるほど歳いってないけどね」



そんなに大きくない店だ。

普段はたいてい並んでいるくらいの大人気店であり、飲食店メディアでもだいぶ取り上げられているらしい。



「厚切りハラミはまだあるかねぇ?」


「はい!ございます!」


「じゃ、それね。」



武臣と店員のやり取りを横目に、こそこそと言い合う他数名。

なんと武臣がどのメニューを注文するのか賭けをしていたようだ。

500円玉が爽斗の前に置かれていく。



「っしゃ!俺の一人勝ちだな!あの人はぜーーったいアレ一択なんだよ!武さん来る日はなぜか完売してることはない!」


「……結構どうでもいい情報だねそれ。」



玲二のツッコミに皆がうんうんと頷いている。



「んんんんっめ!」


光の目の前にいるカミラは、皆がまだ1杯目の白米途中だというのに既に3杯目を平らげようとしていた。

しかもカミラだけ初めから他の者たちより倍大きいお椀で出てきている。


「てんちょー!おかわりぃっ!」


「あいよっ!うちの実家から送られてくる米うんまいだろぉ?」


「めっっちゃうめぇ!あ、いつもの激辛カレーかけといてよ!」


「そう言うと思ってほら、もうかけたさ!」



もはや肉は要らないのではと思うほどガツガツとご飯をかきこんでいくカミラの隣で、ゆっくり丁寧にそして上品に食事をしている無言のカイトを見ていると、普段からこんな感じなのだろうと容易に情景が浮かんだ。


そしてなるほど……


「確かにこれ……すごく美味しい。」


武臣が必ず食べるというこの厚切りハラミは確かに絶品だった。

とにかくぶ厚くてめちゃめちゃ柔らかい。



「だろう?私はねぇ、これを週一で食わんと気がすまんのだよねぇ」



ナムルやスープも美味しいし、どうしても週一で来たくなる理由がなんとなくわかる気がした。



「志門くん、お口汚れてるよ?」


志門の口をナプキンで拭き、フフッと笑う柚に、志門は頬を染めて目をそらす。



「なぁ俺は俺は〜?俺にはしてくんねぇの?」


「するわけないだろう爽斗。柚、君こそ唇にタレが」


「えっ……」


ピシャリと言い捨てられた挙句、目の前でまたキスを見せつけられる爽斗は、不貞腐れたようにそっぽを向いた。

その隣で目を見開いて固まってしまっている志門。

なんだかガゼルのメンバーと関わっていると、刺激の強いものばかり見せつけられていて可哀想だ。



「はぁ……カオルさん大丈夫かなぁ…心配だなぁ……」



「雫はカオルさん一筋だもんね」



「ちょっ!やめてよ!別にそんなんじゃないってっ」



「そんなわかりやすい反応されてもねぇ」



柚と玲二に弄られ慌てている雫を横目に、爽斗は盛大にため息を吐いた。



「はーぁあー、誰も俺のこと好きじゃないのなんでぇ?」



その言葉に、全員ピタリと止まった。



「「いやいやいやいやいや」」



「……え?」



「あんたさ、気付いてないわけぇ?」



「……?なにが?」



「死ぬほどモテてんじゃないのよ!」



法院爽斗は、誰がどう見ても典型的なモテる容姿のイケメンだ。

道を歩けば振り返られ、任務先では連絡先を聞かれ、どこか入れば店員も客もまず彼を見る。



「ほら今だって……店入った時からあそこの客もあっちの客も、みーんなあんたのこと見てんのよ」



「あ?知らねー奴らにモテてたってしゃーねぇだろ!……俺は……っ、俺だってな……好きな奴に……」



珍しく俯いて口ごもる爽斗に、柚が目を輝かせて食いついた。



「えっ?爽斗好きな子いたの?!なんで教えてくれなかったの?!全力で応援するのに!!ねぇどんな子?!どこの誰ちゃん?!ねぇ!」



「まぁまぁ、柚落ち着いて。それは本人が言いたくなった時に聞こうよ」



「えーっ!私たち友達なのに!」



その言葉に、爽斗の瞳が揺れる。

柚を宥める玲二が、そんな爽斗に目を細めた。



「途中で好きになるかもなんだし、別に初めから好きな子じゃなくても関わってみるのアリなんじゃないー?どうせあんたの片思いは実りそうにないし」



「えっ?雫、知ってるの?!爽斗の好きな子!!どうして私には教えてくんないのよ爽斗!……って、え?もしかして玲二も知ってるの?!……嘘……」



仲間はずれ酷い!と絶望的になっている柚を前に、賢い志門は、「鈍感だなぁ…」と呟くのだった。





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