会議
会議は基本的に皆が集まれるよう、任務と被らないような時間が設定されているのだが、常日頃忙しいため、全員というのは不可能に近い。
だから今回も、玲二をはじめ、何名かが欠席していた。
「いやぁ、今回は昼間で助かったYO! 夜の新宿は、僕がいないと輝かないからね♡…あ!そうだ!来週僕のバースデーなんだ!是非来てくれよ光くん!」
「えっ、お、俺ですか?!」
「だって君、まだ僕のバースデー未経験だろ?!」
「……そ、それはつまり……」
恐る恐る視線を移すと、他のガゼルメンバー全員が、シレ〜と目を逸らした。
すなわちそれは、全員参加経験済……ということだ。
「ねっ!特別ご招待するからさ♡なんならお友達連れてきてくれても……あ!そこの坊や、えっと…志門くんも!ね♡」
「え、ちょと、何言ってるんですか亜蘭さん!志門くんは未成年ですよ!ていうか俺もなんですけど!」
「大丈夫大丈夫♡僕の特別なゲストってことで!」
「大丈夫じゃないですよ!!」
「これも社会勉強の一環だよ?
普通みんな、喉から手が出るほどフェルナンド様のバースデー来たいのに勿体ないよ?こんな機会逃すなんて世界一不幸なんじゃないかな?何が腰を重くしてるのか知らないけど、そもそも人生はね、未知の世界を見ようとしない人には、薔薇園はおろか、薔薇1本すらも見せてはくれないんだよ」
ウインクと共に、目の前にスっと出される深紅の薔薇。
「っ……」
「それでもいいの?
自分の人生を掴み取る人間は冒険者だ。」
さすが頂点ホストと言うべきか……
そんな言い方をされると、本気でそう思えて来てしまい、亜蘭の薔薇を受け取ってしまった。
「ほい、お疲れー。さて、揃ってるね。」
「あっ、お疲れ様ですリーダー!」
「あれ?武さんヘアスタイル変えた?」
「毛がちょっと増えてる……」
現れたのはガゼル最年長、佐々乃武臣(65)
リーダーや武さんなどと呼ばれ慕われている、小柄な男だ。
スキルは空間操作らしく、かなり強いとの噂だ。
「数日前からねぇ、茂さんはカオルくんと大阪のサラマンダーへ偵察に行ってるからね、今日はカミラちゃんとカイトくんが代理で来てるよ。」
なにやら向こうの方からいつもの喧嘩をしながら向かってくる2人が見える。
武臣はヤレヤレといった表情でため息を吐いてから、視線を前に移した。
「えー、じゃあまずね、最近ますます目立った動きを見せつつあるね、例の組織の話をするよね。
実際に接触し戦闘したのはね……音琴奏、中條志門、風間朧だけかねぇ?」
「風間、お前もか?」
奏が言うと、朧は複雑そうに眉を寄せた。
「僕とおんなじ特殊眼の奴だった。恥ずかしい話だけどさ、僕より圧倒的に強くて…。石奪い返せなかったんだ……」
「まぁ俺も似たようなもんだよ……志門が来てくんなかったらまた奪われて終わってた。俺らんとこにはアルビノのガキ…。
一体どのくらいの規模の連中なのか想像つかないな」
ここにいる誰もが、近頃目立つその謎組織の噂は聞いていたため、複雑そうに眉を寄せる。
すると、カイトが口を開いた。
「まだ調査中だが、今のところ、十数名のSKJ脱走者たちから成る、アクシアという名の組織のようだ。」
「だがねぇ、実際はもっと大きい組織かもしれんし、そうじゃなかったとしてもねぇ、今後ますます大規模になっていくだろうねぇ。はー…参ったねぇ。」
ウンザリ気味に頭をかく武臣。
「影憑よりめんどくさい奴らだぜぇこりゃ」
飴をコロコロ転がしながらカミラが考え込む。
「しかも影憑石を集めてるなんて気味悪ぃ趣味してやがる。大方それで兵器でも作ろうって策なんだろう。」
カイトの説明によると、光たちが昨日話していたとおり、アクシアの目的はこの世界のリセット。
EKJはもちろんのこと、PSIを始めとしたエスパーに関連する全ての組織を壊す……ということだった。
「実は大阪のサラマンダーの連中はほぼ全員アクシアに接触してるらしい。うちのカオルも、先日1人と接触し、指を数本折った。」
「「え!!」」と何名かの声が重なり、誰もが険しい表情になる。
「あの超強いカオルさんがそんな目に遭うなんてっ……私が出向いて治療しますよ?!」
治癒スキルのある篠原雫が訴えるように言ったが、カイトは首を振った。
「あいつ、あぁ見えてプライドだけは馬鹿みてぇに高ぇんでな。止めるのも聞かず、包帯巻いて茂さんについてっちまった。」
数本も指を折られているなんて、カオルのスキルは今は無いに等しいのではないかと誰もが思っていた。
彼のスキルは、その指を使って対象を飛ばしたり握り潰したりといった遠隔操作にある。
そんな状態になってまでサラマンダーに出向いたのはきっと、身を削ってでも情報を集め、組織の目的を阻止したいからだろう。
「ってぇことだからねぇ、各々とにかくね、気を付けてね。まぁそんなこと言われても困るよねって話だよねぇ。」
武臣はため息を吐いてタバコを取りだした。
実はかなりのヘビースモーカーなのだ。
隣で迷惑そうな顔で煙を払いながらカイトが代わりに話を繋げる。
「とりあえず、どんな奴らなのか、容姿やスキルやその他諸々の情報は、茂さんとカオルが大阪から戻ってき次第また知らせる。その前に奏たち3人も接触した奴らについてここの全員に共有しといてくれ。」
「ラジャーっす」
その後は各々の報告や確認事項等を共有し合ったりして会議を締めくくった。
ここでは1人ずつ専用のスマホが支給されており、全員の連絡先が入っている。
そのため、亜蘭フェルナンドから勝手にバースデーイベント詳細のメールが送られてきてしまった。
「ねーねー瑠真くん♡せっかく会えたんだしさっ、一緒にランチに行かない?」
梓美から腕に巻き付かれ、ギュッと乳房を押し付けられた瑠真は、また顔を赤らめて目を逸らしてしまう。
「その……悪ぃけど……俺忙しいんだよ、ほら、家のこともあるしな」
「えぇ〜……ようやく会えたのにぃ〜……
ねぇ少しだけ……どうしても、ダメ?」
上目遣いで潤んだ瞳で見つめられれば、いくら意思の強い瑠真でもグッときてしまう。
「……まぁ、少しくらいなら……」
「やったぁあ♡♡
じゃあ私のバイクの後ろに乗って!」
「ちょっっっと待て!マサル呼ぶから俺ので行こう」
「えっ!いいのぉ?嬉しいわ♡
マサルくんにも最近会ってないもの」
自分の運転手兼弟分に電話をかけ始める瑠真。
さすがに暴走族の派手バイクの後ろに乗る勇気は、いくらヤクザでも無いようだ。
しかし元々派手な2人が乗ったらすごい絵面になるだろう。
それもそれで少し見てみたいかも…と光が妄想していると、柚にトントンと肩を叩かれた。
「私たち、これからご飯に行くんだけど光くんと志門くんもどうかな?そこで玲二とも待ち合わせしてるの」
承諾すると、もう事前に武臣とカイトカミラのことも誘っていたようで、武臣の大きな車で行くことになった。




