表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/141

突然初任務



「よぉ、月詠!…お前……」



「あっ、愁磨さん、おつかれさ」



「おめぇ筋トレしてんのか?」




挨拶もせずに、いつものセリフをいつもの強面の表情で吐く、樽井 愁磨(たるい しゅうま)(23)

アメリカ人ハーフのガチムチマン。

顔の堀が深く、ブルーがかった瞳が密かなファンたちの心を掴んで離さない……らしい。



「おめぇらも全員!筋トレ!しとんのかってきいとんじゃ!」



まぁ恐らく、筋トレの確認は彼にとっての挨拶なのだろう。

いつ誰に会ってもこれが第一声なのだから。

だがほぼみんな毎回無視している。



「えっと、はい。してます。筋トレ…。」



「ほぅ。その割には全くなんも変わってねぇが」



モミモミと肩や腕を揉んでくる愁磨から逃げるように立ち上がる光。



「ちょっ、愁磨さんじゃないんだからそんなすぐに筋肉つくわけないでしょう?!だいたい毎日聞いてくるじゃないですかそれ!1日2日で変わってたら苦労しませんよ!」



なんとなくその鋼のようなボディーを直視できない。

なんというかその……とてもエロティックな体つきなのだ。


彼は、鍛えれば鍛えただけ強靭なスキルパワーをその筋肉に蓄えることができる。

一見すると確かにモテるであろうことは頷けるのだが、その暑苦しい性格故、彼女はできないようだ。




「そんっな人工甘味料の塊なんか食ってるからいつまでも雑魚なんだ!たるんでるなお前!覚悟が足りんのだ!」



「うっ……そう言われちゃうと……」



「俺は毎回任務帰りにはジムに寄り、どんなに時間が無くても最低2時間はノンストップでトレーニングをし、汗を流す!」



こんな見た目もやることも常人離れしてる人が、ノーマルのジムなんかにいてノンストップで凄いメニューを2時間もこなしていたら……

周りの人間たちの目線が容易に想像できて、光たちの顔は引き攣る。




「……えっと、じゃあ今日ももう任務とジムに行ってきた帰り……ですか?」



「お前のせいで今日は2時間しかできなかったんだぞ!」



「えっ、俺のせい?!」



「俺は今からお前への任務初指導の命を承った!さぁ行くぞ!!」



「えぇっ!そんないきなりっ!愁磨さんとですか?!」



「…なんだ嫌なのか……?」



突然別人のようにしゅん…と眉を下げ悲しそうな顔をする愁磨に、光は慌てて首を振った。



「違います違います!嫌なわけないです!」



「そうか!ならいいだろう!危うく傷ついてしまうとこだったぞ!さぁとっとと行こう!」



愁磨は突然、光を肩に担ぎ上げた。



「こら暴れるな」


「ちょっ!待ってって!担がなくてもいいだろっ」



ばいばーいと呑気に手を振る皆がどんどん遠ざかっていく。

なにがなんだかよくわからないまま、到着したのは……



「ってこれ、俺の通ってた高校じゃん!!」



「おう、そうか」



「そうかって!愁磨さん絶対知ってて連れてきたでしょ?!」



校庭の隅の倉庫の屋根裏から恐る恐る見回すと、下校時間ということもあって、部活終わりの生徒たちがちらほら歩いているのが見える。



「ま、まずいですって!

誰かに見られたりでもしたら……っ」



あ…………


珍しく整った髪型で、数人の友達と楽しげに歩いている颯が見えた。



「颯……」



そっか。そうだよな……。

お前はいつだって人気者だったし

俺がいなくたって……



「おい、月詠、あれを見ろ」



愁磨が指さす方向を見て驚愕した。



「え?!あれは……っ」



" 影 " ……それもかなり大きくドス黒い影だ。


まるで大蛇のようにとぐろを巻いて蠢いている。

それと同時に四方八方からいろんな声が、うるさく脳内に響いてきて、またくらくらと目眩を引き起こしそうになった。



" まじアイツうぜえ "

"何もかもめんどくさい "

"死ねばいいのに "

"私のが美人 "

" なんであいつの方が人気なの "

" 消えたい "

" キモイんだよ "

" チヤホヤされたい "

" 逃げたい "

" 殺したい "




「うっ……」


目まで回る……


思えば、ガゼルから外に出たのは1ヶ月ぶり……これが初めてだ。



「アレにのみ意識を集中させろ月詠」



愁磨が言った通りにゆっくりと深呼吸をし、カッと目を見開いて意識を研ぎ澄ませる。

すると、より明白にその影から聞こえる声だけを切り取って脳に響かせることができた。



" なんで私だけが "

" 私ばっかり "

" こんなに頑張ってるのに "




「……え……この声って……聞いたことあるような…」



瞬きせずに、よく目を凝らす。

光が譲渡されたスキルの中には、透視も含まれていたようだった。

この時初めて、生身の人間に巣食う、影憑(かげつき)を見た。


そして、徐々にその正体に気付く。



「っ!!伊達巻さんっ…!」



その正体は、伊達巻藍那だった。

真っ黒い影憑の中にいる伊達巻藍那は、ただ普通の顔をして普通に下校しているだけのように見える。

もちろん、周りの人間たちにはそうとしか見えていないだろう。


しかし、エスパーになった今、それはこの世のものには見えなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ