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エスパー仲間入り①




「うっ……!おえっ」



先輩の空中回転回し蹴りに、光は思い切り腹をやられて膝をつき、吐き気を催す。



「ちょっと爽斗、やりすぎじゃないの?もう…」



「あん?こんなもんでヒーヒー言ってたら、なぁんもできねぇぞ?」



法院爽斗(ほういんそうと) (18)

彼は誰がどう見ても激モテする男の典型的な容姿をしている。

スラッと背が高く薄焦げ茶の髪にまつ毛の長いイケメンなのだが、性格が非常に厄介だ。

口が悪く自己中で何もかもにテキトーな感じ。

彼の特出した才能(スキル)は、ありえないほどのジャンプ力と回転力にある。




「だからってもう少しは手加減してあげなきゃ、ね?光くん、ホント大丈夫?」


「ごめんなさい……大丈夫です」



いつも何かと気にかけ手を差し伸べてくれる優しい先輩

小鳥遊 柚(たかなし ゆず) (17)

誰もが好きになってしまうのではないかというくらい優しい天使のような性格とは裏腹に、見た目はヤンキーみたいだ。

耳が見えないくらいに覆い尽くしたピアスに、パープルがかった巻き髪。

彼女はその数々のピアスを武器として自在に使役できる才能(スキル)がある。





「ほうらかかってこいよヒヨっ子ぉ〜」


爽斗のイケメン上目遣いのその手招きはいつも無性に腹が立つ。

光はイラつきを押し殺しながら手を前へ突き出す。



「おぉん?来んの来んの〜?ついにキレた〜?」



あれから1ヶ月。

毎日が濃厚で、あまりに濃厚すぎて、光は一つ一つを吸収していくのに必死だった。


養成所と言われて来たものの、そういったイメージとは遥かに違った。

養成所や学校、施設でもなく、

どちらかというと、「家族」のような感じだった。

少し変かもしれないが、この言葉が一番しっくりくると光は感じていた。


教師がいるわけではないし、決められた授業があるわけでもない。

なぜなら各個人のスキルも年齢もバラバラだし、目標も違うからだ。

7歳から60代くらいまでいて幅広く、それぞれがそれぞれの特出したスキルがある。

それを日々磨いたり、任務という名の「影祓い」に出向く生活をしている。


教師はいなくともリーダー的存在や、ここで生活する上でのベースのルールのようなものは当然ある。


しかし、1つのキャンパスのようになっており、何不自由ない生活だ。


このような組織は各地にいくつかあり、

ここは東京にある「ガゼル」と呼ばれる組織となっているらしい。

全ての組織にはこのように動物に因んだ名前がつけられているのだそうだ。




「おー、やっとんなーまた派手に」

「ひかりん、また煽られてる」


チュッパチャプスを加えてフラリと現れたのは

双子の町野 朝凪(まちの あさなぎ)町野 夕凪(まちの ゆうなぎ)。年齢12歳。

もちろん見た目は瓜二つで一見見分けがつかない。

それだと皆困ってしまうということで、着せている服は必ず色違いにしているらしい。

他の見分ける方法としては、対象的な方向で髪を束ねていていることと、朝凪は右目、夕凪は左目の下に小さなホクロがあることくらいだ。


前に2人にも指導してもらったことがあるが、それが半端なく厄介なのだ。


身体能力が凄いことはもちろんなのだが、

問題は2人でコンビを組んだ時にある。


錯乱してくるのだ。


正確に言えば、2人が4人、6人、8人……となり、無限に増えていく。

実際には増えているわけはないのだが、相手にそう見せる錯乱のスキルがあるのだ。




「光さん。今日は天気が良いですね」


「あっ、洸輔くんっ」


「今こそ試す時なんじゃないですか?私が教えたアレ」



辻 洸輔(つじ こうすけ)(7)

ガゼルの最年少エスパーであり、ありとあらゆる光を自在に操り斬撃に長けたスキルがある。

7歳とは思えないほど落ち着いていて怖いくらいに大人びている色白の美少年だ。

頭も良くて教え方も丁寧なため、子供好きな光はよく彼に指導をつけてもらっている。

しかし、あまりにも子供らしさがなくなかなか厳しいため、光からすれば、ここにいる人たちは年齢は関係なく全員先輩だ。

だからいろんな年齢のいろんなスキルと積極的に訓練させてもらっていた。


そう、どれもこれも、自分が最強になるために。




ゴオオオオオオオーー!!



「おっと、あっぶねーなー

でもここまで届くかな〜?届かないよねぇ〜」



洸輔直伝の強力な光線。

今は太陽が照っている為、そこから太陽光をためることができる。


しかし光が放った光線は、見事な爽斗のジャンプによって避けられた。

しかも爽斗は太陽に届くのではないかというくらいにどんどん上へと上がっていく。




「ひゃ〜……どんだけぇー……」


アイスを持ちながら眩しそうに上を見上げているのは、篠原 雫(しのはら しずく)(19)。

その隣でアイスを加えながら眩しそうに空の爽斗に手を翳す瀬渡 玲二(せわたり れいじ)(18)。



その瞬間、



「うわわわわわわっっっ!おいっーっ」



爽斗がぐんぐんと玲二の手に引き寄せられていった。

あんなにはるか遠くにいた小粒だった爽斗が、どんどん近づき大きくなっていく。



そしてゴドッと鈍い音を立てて玲二の前に転がった。



「てめっ!邪魔すんなよ玲二!」


「あんなに飛んじゃうなんて行きすぎだろ」


アイスをぺろぺろと舐めながらシレッと言ってのける瀬渡玲二のスキルは、まさに対象の吸引。

彼もまた、爽斗とは違った種類の憎たらしいくらいのイケメンだ。

背が高く、両耳にピアスをしていて切れ長の目。

長くて美しい黒髪。そして性格がとても良いものだから非の打ち所がない。



「おあっ!つぅかずりぃぞお前ら!俺のハーゲンダッツはぁ?」


「ハーゲンダッツじゃないのならあるよ」


「えー俺ハーゲンダッツしか無理系なんだけどぉ」


「じゃー自分で買ってきなさいよアンタ」



爽斗と雫のいつも通りの口喧嘩が始まった。



「あーっ!玲二おかえり〜!」


「ただいま柚〜!」



ピョコッと玲二に飛びついたのは柚だ。

そう、2人は公認のカップルであり、いつもイチャイチャしている。



「柚の好きなハーゲンダッツあったよ♡はい♡」


「わーいありがとう〜♡一緒に食べよ♡」


「なんっで俺のはハーゲンダッツじゃねぇんだよ!!」



爽斗に完全に存在を忘れられた光がポカンとしていると、トンと肩を叩かれた。



「光くんの分もあるから、あっち行って食おうよ」


「あっいつもありがとうございます!雫先輩!」



篠原雫は、シルバーのおかっぱヘアで両耳に真珠のピアスをしているサバサバした先輩だ。




「つぅか、また怪我してんじゃん」



光の擦り切れた腕にスっと手を翳した瞬間に元の肌に戻った。


そう。彼女のスキルはまさしく治癒である。

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