エンパワメント計画③
「でも待てよ……そんな低い確率に賭けて出産して、恵まれない子供を増やしてるのと変わらないじゃないか」
「もちろん国はそこも頭を使った。
才能の有無に関わらず、子を国に寄与すれば、ある程度の大金は受け取れるんだ」
驚愕しすぎて言葉が出なかった。
そりゃあ少子化が改善されるわけだ。
なぜなら人間は唯一、金の奴隷だからだ。
でも……
「でもそれじゃ人身売買だ……」
「……さっき3種類の人間と言ったが、それも加えると厳密に言えば4種類だな。」
エスパー……生まれた瞬間から先天的に希少才能がある者、通称S
ノーマル……エンパワメントによって10歳までに才能が開花した大半の人間、通称N
スーパーエスパー……先天的な希少才能を持つ者かつさらに実験改造をされた人間、通称SS
トランスエスパー……先天的な希少才能はないが実験改造をされた人間、通称TS
「我々の言うエスパーのスペルはSper……それぞれ個々の個体として生きる上で、全ての事柄を可能にする力を持つ者という意味を持っている。つまり、SurvivorのSでもあるのだ。」
「…サバイバー……」
なんだかそれだとやけに差別的に聞こえる……
普通の人間は生き残れないと言われているようなものだ。
「じゃあっ……真奈美ちゃんも志門くんも美乃里ちゃんも他の皆もっ……」
「SKJにいた人間は、
突然死んだり、寿命が短くなったり、命の保証はいつだってない。もちろんその限りではなく例外も多いが……」
確かにあの病院には、いろんな年齢の人たちがいた。
みんな明るく良い人たちだった。
でも実は皆、人間として人間らしい生活はできてこなかった人たちなんだ……
"人が死ぬたびにいちいちそんなにメソメソしてたらさ…あんた生きていけないよ"
ふいに、美乃里の言葉が頭の中をよぎる。
同時に、まだあんなに幼かった真奈美の顔も……
「ねぇ……茂さん……」
ギュッと拳を握って涙を耐える。
「俺にできることは何……」
頭が重い……
怒り悔しさ悲しみやるせなさ……
いろんな感情が支配していて頭が重い。
「俺っ……どうにかしたい…こんな世界の仕組み……」
茂範は光の震える拳を見つめながら
「お前なら、そう言うと思ったよ」
そうため息混じりに言ったかと思えば、衝撃的な事実を発した。
「そもそもあの病院をお前に紹介したのは、いつかこんな日が来ると思っていたからだ」
「……は?」
「こんな事件が起きようが起きまいが、お前にはいずれ話すつもりでいた。」
光は腑に落ちた。
確かに昨日お見舞いについて聞いた時、また詳しく話すと言われて伸ばされた。昨日の今日でまさかこんなことが起きるなんて……
「あの病院を襲撃した連中は、アダマスと呼ばれている政府の特別組織だ。ほとんどはSKJで育てた者たちで構成されているが、組織はそれだけではない」
「なんのためにっ!」
「ワシらのように、国に反発する組織を潰すためだ。国側から見れば、ワシらは反社会勢力なのだよ」
「っな?!反社って……じゃあ茂さんは国に狙われてっ」
「そのとーり!」
突然扉が開き、先程の女の子のその声にビクッと背筋が伸びる。
「茂さんはなぁ茂さんはなぁ〜!ちょーーーーすっげぇんだぜぇ?!国を敵に回しちゃうほどイケててそんでっ」
「こらカミラっ!茂さん喋ってるとこ勝手に入り込んでんじゃダメでしょーが!」
メガネの男が焦ったように女の子の首根っこを掴む。
「……まぁよい。ちょうどいい所に来た。3人とも入れ。」
「や〜もうホントすみませんね茂さん、こいつお喋りだから、誰彼すーぐ輪に入りたがって困るんですよ」
「いーだろ別に!アタイも茂さんと話したいんだっ!」
「黙れてめぇら。うるせぇな……」
そうボソッと迷惑そうに腕を組んでいるのはもう1人の1番冷静沈着な黒髪の男だ。
「紹介が遅れたな。カオル、カミラ、カイトだ。」
銀髪メガネの知的な男はカオル、明るくお転婆気質な金髪ポニーテール少女はカミラ、表情を全く変えない冷静沈着男黒髪ピアスはカイトと言うらしい。
「アタイらは茂さんの腹心Kトリオ!」
「よろしくね!光くん」
「……なんだKトリオって、だっせぇ」
「なんだとカイトぉぉぉぉ!!」
「しっしっしっーっ!静かに!」
たちまちまた騒がしくなってしまい、光の思考は停止してしまう。
しかし、「オホン……」と茂範が咳払いすると、その場は嘘のように一気に静まり返った。
「ワシの組織はこいつらだけではないが、国側の組織もアダマスだけではない。
しかし我々はこの世の理不尽と闘わなくてはならない。」
力強いその言葉と4人の眼光に、光は目を見開いた。
強い使命感を持っているから、4人の目はまっすぐなんだ。




