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またな、光



現代軸に戻ってきた光は今、呆然と立ち尽くしていた。



「ほ……ほんとに……こ、これで、全員?」



今この部屋にいるのは、


茂さん、武さん、カイト、カオル、奏、爽斗、柚、浩輔、マモのウルフ、瑠真、賢吾、モトキ、町野姉妹、志門、颯……


そして、


亜蘭と、助け出した瞳子

亜蘭の叔父だという辰巳

薬膳と、薬膳の助手だという美羽

京という女性エスパー

そして燕と、雀の娘の椿


が、新たに加わっていた。



熙、カミラ、遥、エメ子、椛、夏樹、愁磨、朝比奈、梓美、龍太郎、マモ、雫、時季、朧……

ここにいない彼らは死んでしまったということだ。



皆、涙も枯れ果てたような顔で憔悴しきっている。


当たり前だ。

大切な人を目の前で失った人たちだ。



志門が絶望的な表情で、首と胴体が真っ二つになっているクマを光に差し出した。


「……大丈夫だよ。遥さんが……いなくても……俺が治すから……」



なんだかあまりにも現実味がない。

なさすぎて、涙さえ出てこない。




" またどこかで会えたら……

言ってくれますか?可愛いって……"



遥と最後に別れた時の悲しげな表情が浮かんだ。



" 私のお洋服、今度作ってくださいね!"


作ってあげたかったのに……

まさか本当にもう二度と会えなくなるなんてっ……




" お前なら大丈夫だ月詠

もう俺より強いだろ? "



愁磨さん……




" 私に何かあったら、カイトのことを頼む "



熙さん……



" 生きてたら、また飲みに付き合ってあげてもいいよ "


朧くん……



カミラやエメ子、梓美やマモや……みんなのそれぞれの笑みと思い出が蘇ってきて胸が苦しくなる。




暗い空気に包まれる中、各々の報告と情報交換をした。

耳を塞ぎたくなるが、今ここにいない者たちがどんな最期だったのかも全員が報告し合った。



「あれ……?でも……カミラさんたちのグループ……龍太郎さんも誠さんもいないってことは……まだどこかで生きているんじゃ……!」



「残念だけど、それはないよ。

兄貴たちは死んだ」


突然現れた見知らぬ人物に、光は目を見張る。

すると、賢吾が急いで口を開いた。


「あぁ、紹介するね光くん。

彼は来栖虎太郎(くるすとらたろう)

龍太郎くんの弟で、僕の親友。

さっきまで彼の虎と一緒にここら辺の偵察行ってたんだ」



虎太郎の後ろからは、なんと大きな虎が現れた。


兄の龍太郎は静岡ウリアルで、弟の虎太郎は沖縄レイヴンに所属していたらしい。



「兄貴の龍から俺の虎にメッセージが届いたんだ。

俺の虎と兄貴の龍は繋がってて……記憶を見られる。

池袋で、カミラさんも誠さんも…瓦礫に押し潰されて死んだ。

敵は若い男女2人組。あの3人を一瞬で殺れるくらい相当な強さだったみたいだ。」



ゾクッと背筋が凍り、嫌な汗をかく。

その3人に限らず、今回殺られてしまった全員が、相当な強さを誇っているエスパーたちだった。

にも関わらず、それを上回る強さのアダマスエスパーたち……



「俺は(おぼろ)を残して……応援を呼びに行こうと……」


消え入りそうな声を発したのは奏だった。


「でも…っ……戻ったらもう、火の海でっ!なんにも残ってなかったんだ……俺は……朧になんてことを……」



「よせ奏。あいつが決めた覚悟だろ……

俺だって、(もみじ)を見捨てて……」



モトキが悔しそうにそう言い目を伏せた。



「死んだ人間のことを悼むのは、この戦いが終わってからにしよう。

初めての者もいるだろうから、改めて紹介する」



茂範がその人物たちを一人一人説明しだした。



「まずは(はやて)……彼は光の親友、アダマスに一時洗脳されていたが、ガゼル襲撃時から光によって解除たれこちら側についた。」


颯は真剣な目をして頭を下げた。



「そして、亜蘭の実の叔父、辰巳(たつみ)だ。

彼は昔から単独エスパーだったが、今回の件でこちらについてくれた。」



「は〜っ俺は弱くてめんどくせぇ奴は1番嫌いだぜ。いつまでもベソベソしてるような奴は容赦なく切り捨てていくからな。」



辰巳という亜蘭の叔父は、長身に帽子とサングラスという明らかに輩のような出で立ち。

目付きが鋭く粗暴で、亜蘭とは大違いだ。

しかし、整った顔形的には確かに血の繋がりは頷ける。



「虎太郎は今しがた紹介があったように、龍太郎の弟。」


虎太郎の目は、隣りで彼に頬を擦り寄せている虎によく目が似ていた。

あまり兄の龍太郎には似ていないようにも見える。



「そして瞳子は、昔アダマスに連れ去られていた亜蘭の馴染みだ。」



「はじめまして……えっと、光くんは、久しぶりですね」



光は驚いた。まさかあのときアダマス本部を案内してくれた女性と亜蘭がこのような関係だったとは……



「薬膳の医療機関で、助手を務めているエスパー、雲母美羽(きららみう)だ。」



「みなさん、お久しぶりです。

初めましての方は、今後よろしくお願いいたします。私も精一杯皆さんのお役に立てるよう尽力します」



美羽という女性は、20代そこそこに見えるとてもしっかりしていそうなショートヘアの女性。



「それから……雀の娘の椿(つばき)。」


まだ5歳ほどの小さな女の子は、死んだ雀によく似ていた。

子供らしさのない冷淡な顔を張りつけて燕の服を掴んでいる。


「私の姪だ。こう見えてこの子のスキルはかなり強力だから、良い戦力になると思う。まぁ私としては本望ではないが、この子が母の仇を取りたいと言って聞かないのでね」


燕はそう言って、複雑そうに椿を見た。



「最後に、皆だいぶ久々だと思うが、神和住京(かみわずみ みやこ)

昔から単独で海外活動をしている。」



「ご無沙汰してたね皆。これでもNYから急いで駆けつけてきたんだ。全員を助けられなくて悪かったね」



京を見る皆の目は、他と少し違った。

ほんのり安心したような落ち着いた雰囲気になる。



「キミが光か。」


「あ…はい。はじめまして。」


「確かに聞いていた通り、オーラがすごいね」


「や……それは京さんじゃ……」



神和住京はこの中でも一際凄まじいオーラを隠していることに光は気付いていた。

エスパーというのは、普段はオーラや気配を隠している。

しかし光やカイトのように「視る」スキルがあると、内に秘められたものまで全て見えたりするのだ。



「光!お前が無事でよかった!」


「颯っ!そっちこそ!」


再会を喜んでいると、茂範に話しかけられた。

もちろん未来での話。

光は出来事を全て説明し、朱星はひとまず助けられたが、今後どうなるかは分からない不安を吐露する。


「ふむ……次は少し時間を変え、朱星が無事にお前を出産しているところだけでも確認してこなくてはならないな……」


だが次に時計を使うことができるのは、光と茂範以外の誰か。

それはかなり、重要な任務かもしれない。



「光、お前が選べ。」


茂範にはそう言われてしまった。


光は考える。

正直言って、皆強い。

しかし強いからこそ、こちらの戦力として残ってもほしいし、向こうに行くことを任せたい気持ちもある。



「俺が行くよ、光」


「えぇ?!颯?!」


「なんだ、俺じゃ不安か?」


「や……」


まさかエスパー入りしたばかりの颯が自らそんなことを言い出すとは思っていなかったため、どうしていいかわからない。


「この中で、多分俺が一番速いし、光のことを1番よくわかってるから光の母さんとも打ち解けられそうだし」


「だけど……」


まだ渋っている光の傍に、瞳子が現れた。

瞳子はその天使の輪のある瞳でジィッと颯を見つめた。


「……行かせてあげてください、光さん」


「えっ、瞳子さん……」


「いくつか数通り見えますが……どれも悪くはないかと」


光は、瞳子が大まかな未来のビジョンが視えるエスパーだと先程言っていたことを思い出した。

だから光はそれを聞いて思わず身を乗り出した。


「瞳子さんっ!颯が、し、死ぬ未来なんかは無いですよね?!1つでもその道があるんなら俺は許可できない!」


「……光さん。死はどこの道にも落ちています。それを避けて通れるか通れないか、ただそれだけの違いなんです。」


真剣な瞳子に光は眉を寄せて何も言えなくなった。



「光っ、俺へーきだって。

俺今まで超特急で走ってても、犬のフンなんて1度も踏んだことねぇし、死くらい余裕で避けてやるよっ!」


光はギュッと唇を噛んだ。

嫌だ……そう言いたい。本当は。

誰も行かせたくない。

もうこれ以上、誰も失いたくないし、傷つけたくない。

自分がどうなってしまうのか、怖いから。

今だって、平静を保ってるのに必死なんだ……



「光……親友を信じろよ」



その言葉にハッとする。


たまに思う。

信じることの難しさは、恐怖と比例する。

しかし、信じることが全ての始まりでもあり、それ無しでは何も変えることはできないのだと。



「……わかったよ、颯。ありがとうな。

でも……絶対無理はするなよ」



「いやいや無理もするよ。

ちゃんと俺は、命かけてお前の母さん守るよ。

じゃないとお前は生まれないんだぜ?

そしたら世界がどうこうじゃなくて、俺が嫌なんだよ」



「颯さん、1つ、忠告させてください」


瞳子は真剣な表情で真っ直ぐと颯を見つめた。


「直感に従ってください。」


「直感……?」


「それは常に、自身にしか分からない自身にとって最良の選択です」


颯は一瞬目を丸くしていたが、すぐに覚悟を決めたように真剣に頷いた。




「颯……ありがとう。

絶対に戻ってこいよ」


いつも見てきた笑みで朗らかに笑う颯と、別れ際に抱擁した。



「任せとけ。またな、光」


「……待ってるからな」




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