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守られる価値

ドン!ガシャン!

ガラッ!


浩輔とマモの連携でなんとか蘭を相手している。


マモはウルフの死骸に触れ、深呼吸をした。

ボワワッといつも以上にオーラを滾らせ、目がウルフのように赤くなりだすマモに、蘭は眉をひそめた。


「っ!うぁ……っ」


ちらほらと街の電灯がつきはじめたその瞬間、浩輔が蘭にスキルを当てた。

停電している箇所も多いが、浩輔は先程から、利用できる光が現れるのを待っていたのだ。


一気にあちこちの電灯の光を集めだし、四方八方から蘭に当てる。


「ぁああっ!ウザイウザイウザイっ!」


蘭はイラつきながらパチンッと指を弾いた。

すると、なんと街中の電気が全て消え、当たりは真っ暗になった。


「え……?!?!」


シュッ

ドシッ


約3秒後、ほんのりと灯りが戻り出す。


そして浩輔は、目の前の状況に唖然とした。


マモは自分の目の前で背を向け、蘭の首を掴んでいた。

ドサッと落ちる、蘭の遺体。


しかし……


ポタ、ポタ、ポタ……と滴り落ちる血に、浩輔は視線を落とした。


マモからもおびただしい血が流れているのだ。


ドサッ


「っま、マ、モさんっ!マモさん!!」


「浩、輔……っ」


「っ!マモさん喋っちゃダメです!」


「ウルフのこと…よろしく、な……」


「っ?!?!」



急いでウルフの方を見ると、ウルフの目が意識を取り戻していた。



マモは意識が遠のいていく中で、最後にウルフと目が合った。


あぁ……懐かしいなぁ

あん時も、森の中で捕まってるアンタとこんなふうに目が合ってさ……



あのときは檻の中で、ウルフは震えていた。

狩人がしかけていた罠にかかっていたのだ。


このままじゃこの子は殺される!

そう思った私は急いでウルフを逃がした。

ずっと隠して生きていたスキルを使って施錠を外し、そして檻ごと破壊したのだ。


それをたまたま見ていた子供がいたらしい。

子供は街中に言いふらして回り、私は魔女扱いされた。


当然、それを聞きつければSKJが来る。


どんなことをされるか薄々気がついていたから逃げ隠れしていた私。

だから痣だって隠して生きていた。


" やめろ!!私は行きたくない!離せ!"


すると、いつのまにかウルフが来て、私を掴んでいた人たちに襲いかかって……


今度は私がウルフに逃がされたのだ。


私のスキルは、魂をシンクロさせることだ。

魂をシンクロさせていた私とウルフは、一心同体だった。

だからウルフに私の最後の魂をあげることができる。



次はアンタの番だよウルフ。


私の分まで生きなさいよ。


もしも死ぬなら、誰かを助けてから死になさい……



「マモさんっ?!マモさっ…!うわあぁぁあ!」



浩輔は大きく泣き叫ぶ。

そんな浩輔の元へ、錦が戻ってきた。


「あなたの、色使いのお仲間のお陰でなんとか対処できました。」


エメ子の最後のスキルは効果があり、後々凛の動きを封じていたから錦は凛を殺ることができたのだと言った。



「お仲間さんたちの死は…残念です」



浩輔は涙を拭きながら顔を上げた。

錦と目が合った瞬間、ハッとする。



「……あなたは……もしかして…っ…」



似ている。……あまりにも。

昔ガゼルにいた、美沙という少女に。


「美沙の………」


「……あぁ、ご存知なんですね美沙のこと。私は双子の兄ですよ」


やはり……と浩輔は思った。

美沙と全く同じ、女性的な美しい顔つき。



ジッと顔を見つめていると、錦が優しく微笑んだ。


その笑顔に、ドクッと鼓動が跳ねる。


その顔を見ていると、美沙のことを思い出し、また涙が溢れてきた。

そんなふうにいつも、どんなときでも笑顔だった彼女のことを。


「み…美沙も……僕を庇って死んだんです…っ……僕がっ……弱いから……」



" もう!浩輔はどうやったら笑ってくれるのよ?!"


いつもそんなことばかり言って、なんとかして僕を笑わせようとばかりしてくるいたずら好きなガゼルのムードメーカー。

彼女がいると、誰でもすぐにその空気に飲み込まれて笑顔になり、にぎやかになる。



" 別に、面白くも楽しくもない時になんて笑えませんよ "


"違うよ浩輔。笑うから、面白くなったり楽しくなったりするんだよ。どんな時にも笑顔を味方につけるの "



美沙は最後の最期まで笑顔だった。


SKJ潜入計画の際、僕を庇って盛大に攻撃を浴びたんだ。


" 最後くらい…笑顔見せてくれても…いいんじゃない? "


" 美沙ぁああぁあ "


僕は声が枯れるまで泣いた。

結局最後まで、美沙に笑顔を見せることができずに。


全部全部、僕が弱いせいだった。


あれから僕は死ぬ気で鍛錬してきたのに……


結局まだこんなに弱いままで……


だからマモさんも、エメ子さんも……




「それは違うと思いますね」



錦はそう言った。

なぜ兄妹そろって、こういう時まで笑っていられるのか不思議でならない。



「あなたが弱いから守られたのではなく、あなたは守られる価値があるから守られたのですよ」



その笑みが、完全に美沙と重なった。


なぜだかそれは、見ているだけで心を落ち着かせ、どうにもならない状況でも心を和らげてくれる。


これは一体なんだろうと思った。


そして思い出した。


美沙は最後にこう言っていたんだ。



" いつか私の兄貴に会ったらさ、きっとまた思い出すよ。笑顔は希望なんだって "



それは、希望なんだと。

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