自分らしくいるということは
渋谷109の前で、凛と名乗るアダマスエスパーの攻撃に翻弄される、マモ、エメ子、浩輔、そして爽斗。
彼女が扇子を一振りするだけで、こちらは反撃する余裕もないほど凄まじい威力なのだ。
こちらが何か攻撃を出しても、いとも簡単に払われ、代わりに恐ろしいほど危険な威力が飛んでくる。
109だけでなく、周辺の建物がほぼ壊滅していた。
そんな凛の後ろの方に突っ立っているだけの男児、蘭は全く興味なさげにあくびをしている。
まさかの4人 VS 1人。
やはりアダマスエスパーは一筋縄ではいかないのだが、たった1人でここまでの強さだとは思っていなかったため、4人ともかなり焦っていた。
すでに服が破れ、傷だらけだ。
「爽斗っ!ここはいいから他へ行け!」
マモの言葉に、「はっ?!」と耳を疑った。
「4人もいたんじゃ逆にやりにくい!
他のエリアもアダマスに襲われてるかもしれないから状況把握してこい!そうじゃないなら応援を寄越せ!」
焦ったような顔をしてまだ戸惑っている爽斗に、マモは攻撃をかばいながら叫んだ。
「早く行けっ!柚が無事かわかんないだろ!」
その言葉に突き動かされるように爽斗は大きく飛び上がり一瞬で遥か彼方に消えた。
「あらら……男前が消えちゃったわ、残念……」
シュシュシュシュッッ
「うっ!」
「エメ!」
エメ子が瓦礫の下敷きになってしまった。
飛んできたマモのウルフが、瓦礫をどかそうと飛んできた。
エメ子は意識が薄れ始める中、戦っている凛とマモの方へ手を伸ばした。
そこらじゅうの色をスキルで混ぜ始める。
あぁ……やっぱり渋谷はいいな……
ウチの……大好きな場所……
ウチが……私らしくいられる場所……
" 俺、もっと普通の子がいいな……服装とかも含め、落ち着いてる感じっていうかさ "
初恋は初失恋で終わった。
勇気を出して告白した返事がそれ。
どうして今、思い出すんだろう……
普通って何?
これはウチが、ずっと思ってきたことだ。
普通になりなさいって、普通じゃないとダメだって、そんなこと言われても全然わからない。
昔から周りには、自分の好きな格好をすることを否定的な目で見られてばかりいた。
派手なものカラフルなものが好きな私。
何を身につけても、変わってるね…って白い目で見られたり、街行く人にも引かれたり……
それでもウチはずっと、それが好きだった。
どうして他人のために自分を押し殺し、周りに合わせていかねばならないのだろう。
みんなそうだ。
他人のために、いつも自己を変える選択を余儀なくされている。
どうして自分らしく生きちゃいけないの?
" いいんだよ、アンタはそのまんまで。
エメはエメらしく、好きなものだけ目一杯楽しんでな。
誰も人の人生邪魔する資格なんてないんだから"
そう言ってくれた京姉さんも、世間一般から見ればあまりにも普通じゃない見た目かもしれない。
SPIに入り、ウチはただただ驚いた。
皆が皆、あまりにも個性的で、まるでウチみたいだったからだ。
だけど皆、心の底から幸せそうに笑ってる。
自分らしくいることは、生きるということそのものだからだ。
「ウチはっ……ただでは死なんっ……」
押しつぶされていて、もう体の感覚がない。
だからこれがウチの、最後の足掻き。
最後までウチは、自分の人生を他人の好きにはさせない!
凛が、周りの色に囲まれていく。
あと……少し……
グシャッー……!!
「「?!?!?!」」
振り向いたマモと浩輔は絶句した。
先程までボーッと突っ立っていただけだった蘭のスキルによって、エメ子が瓦礫に完全に潰されていた。
助けようとしていたウルフも目を開けたまま倒れている。
「う…そ……だろ……」
こんなに一瞬で?!
「あらぁ〜?母様を守ってくれたのね〜♡あなたって子は本当に良い子よ蘭♡」
浩輔は震えながらも焦っていた。
僕が何とかしなきゃ……
僕がまだ子供だからって、みんなが無意識に庇ってくれてたの、僕はずっと気がついてる……
エメ子さんが死んじゃったっ……
ウルフもっ……
ど、どうしよう、マモさんのことだけでも僕がっ……
「……浩輔落ち着け。私から離れるなよ」
「っ、マモさんっ……」
「そろそろ飽きてきたし、なんだかとっても面倒だから……そろそろ終わらせちゃいましょうね?」
凛は一際大きく扇子を振りかざした。
その瞬間……
バシッー!
「った!」
扇子を持つ手にどこからか攻撃が当たった。
軽く擦りむいた手を見て凛が青ざめる。
「っな!誰が私の美しい手にこんなことっ」
「母様……ん。」
蘭が指さすその方向を見て、凛が口角を上げる。
「へぇ……」
手の甲をぺろりと舐めた。
「あなた…まだ生きてたのですね、錦……」
またも現れた謎の少年に、マモも浩輔も警戒する。
少年はなぜかニコニコと笑っている。
そして、なんの予兆もなしに突然凛をふっ飛ばした。
そのスキルの強さに、マモと浩輔は目を見張った。
ドカン!と建物に打ち付けられた凛は、完全に怒りに燃え出した。
「いいでしょう錦……今度こそしっかり殺してあげます」
バガガガガガガガ
ドドドドドド
「なんだか分からないけど、味方と見てよさそうだ……じゃあ私たちは……仲間のカタキでも取らせてもらうか」
マモと浩輔に睨まれた蘭は、面倒くさそうにため息を吐いて手を上げた。
そしてその手を下ろした瞬間……
バンッ!!!
地響きと共に地面にヒビが入った。
その威力は信じられないものなのだが、いちいち驚いている暇はない。




