542 理想の聖女像?
「シェーンはね。シェーンの目的があるから仕方がないこともあるけど、やらなければいけないことは理解しているよ」
あんなに堂々と月の聖痕を掲げているのだ。
普通は偽物とは思わない。何故なら教会に行けば、お皿を頭上に掲げた聖女像があるからだ。
だから、聖女として役目を果たすことは、理解していた。だけど、それ以外のことに対して否定的だっただけだ。
「色々話してね。その辺りも納得してくれたし、ほら、最近聖痕が光を取り戻しているよね。パテで埋める感じで常闇を閉じることはできるはずだよ」
私は何もない頭上を指しながら言った。
あれは、私が刺繍したハンカチの効果だけど、大きな力を使わなければ、大丈夫なはず。
ここの常闇を完全に封じるのは無理だから、今までの聖女がやっていたように、パテで穴を埋める感じなら問題なくやれるはず。
「あと、これは他の貴族の人達の目が必要なんだよ。ここで働いている人ぐらいはシェーンが本物だという認識を植え付けておきたいからね」
ゲームの聖女が真面目に役割をこなしていたとしてだ。もし、聖騎士団の人しかその力を目にしてなかったとしたら、貴族の人々は平民の聖女は偽物という偽情報に騙されるかもしれない。
「確かに、それは理にかなっておりますな。ですが……聖女としては問題があるかと」
「はぁ〜」
シェーンの今までの態度から、聖女として認めたくないのが、あるのかもしれない。
この国の人達は聖女という存在を神のように崇めているところがある。だけど、そこからズレれば人としての尊厳を奪ってくる。
歪んだ聖女至上主義は厄介なものだ。
「聖女も人なのですよ。今まで村にいて、突然騎士団に連れて来られたのですよね?それで理想像の聖女を押し付けられれば、反発ぐらいするでしょう。聖女はこうあるべきだと。そんなものクソ食らえです」
「アンジュは言葉遣いから直したほうがいいですね」
神父様。私は昔からこのような感じですよ。今更直りません。
「……理想の聖女像って、アンジュに言うだけ無駄だろう?」
「ファル様が言うように、諦めというのも肝心です。常闇を閉じるという役目をこなす聖女。まずはそこからでいいのではないのですか?」
「むむっ」
聖騎士団団長としては納得できないという感じかな。
私はこの件では動かないからね。
シェーンを聖女に押し上げる。そのことに専念するほうがいいに決まっている。
私にも、私の目的があるからね。
「聖女のおもりは、そのまま第十三部隊に任せるといいです。クセが強いけど、上手くいっていると聞いていますし」
一応、麒麟にも精霊石を食べさせるために、来てもらったときに話を聞けば、喧嘩していると言っていた。
たぶんシャールと喧嘩しているのだろうなという予想だね。でも言いたいことを言えるならいいし、あとはミレーがフォローするだろう。
「サイガーザイン。アンジュを表に出したいのでしょうが、こういうことは意地でもやりませんよ。十年間も聖痕を隠し続けた根性はメタルスライム並です」
「何か神父様に変な例えをされた!なに?メタルスライムって!一撃で倒せるじゃない!」
「硬いですが、叩くとボロがでるところですか?」
この悪魔神父。もう少しマシな例えはなかったのだろうか。
「リザ副部隊長。メタルスライムって一撃で倒せましたっけ?」
「アンジュちゃんなら倒せるという話よ」
「ああ、そんなかんじね」
ロゼとリザ姉が二人でボソボソと話しているけど、メタルスライムは硬いようで、攻撃が通ればただのスライムなんだよ。
そんなの一撃だよね。
「わかりました。全部隊の隊長が揃いしだい、速やかに実行いたします。つきましては、人に化けた異形の位置なのですが」
「それは黒狼の人達にお願いしたよ」
少し前に、黒狼の人達をまとめ上げる、偽物の王様に来てもらおうと、もらった犬笛……違った『黒狼の笛』を吹いたのだ。
すると、凄い数の黒狼たちが集まってしまった。
あ、ごめん。私が軽率だった。ここが本拠地ということが頭から抜けてしまっていた。
それで、偽物の王様も来てくれたから、簡単に説明して、その場で対応してくれたのだ。
うん。本当にこんなことで呼んでしまってごめん。
「承知いたしました。太陽の聖女様のご命令をしかと、このサイガーが承りました」
……団長! 私が名前を聞き取れないからと言って、それに合わせなくていいのだよ!
まぁ、この王城にいる異形の件は、彼らに任せておけばいい。そしてその後にシェーンが堂々と現れて、常闇を閉じてくれたらいいのだ。
これでシェーンの聖女としての認識もあがるだろう。
やることが終わらないので、543話は書き上がりしたい投稿しますm(_ _)m




