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今更普通の異世界転生  作者: 玉庭ひとり
第三章 ロッキンガム大祭
61/185

055 覗き見

*** 武術大会実況者 ウィンディア ***


「さぁ、一回戦も残すところ 2 試合となりました!本日一試合目の出場者、一人目はポロアスト大陸の北西ライナから、メイガネ=マルーン!対するは連邦北端のグロームから、ファーラ!

 ギルドを通じて元々名の知れていた参加者が多い中、私同様彼らについては初見という方も多いのではないでしょうか?

 未知の選手への期待も高まるばかりです!


 マルーン選手の装備はワンドですので、魔法主体と予想されます!

 ファーラ選手もワンド、いえ、タクトでしょうか?こちらも魔法主体と予想されますがその実態やいかに!

 それでは皆さまお待たせいたしました。始めて頂きましょう!

 両者位置について・・・試合、開始!」


「始まりました一回戦第 7 試合。二人とも初手は水魔法の打ち合いから入りましたが、ファーラ選手に軍配が上がっているでしょうか?

 マルーン選手は水弾の応酬を回避し土魔法での防御に移行しています!

 ・・・おっと?その魔法を攻撃にも転用していますね。

 隆起した石壁から分離して放たれるストーンバレット!ファーラ選手はこれを避ける避けるぅ!」


 この大会のレベルがこんなに高いなんて、聞いてないわ!もちろん誰も予想していなかったでしょうけど。

 私は索敵と伝達と、そういったことが得意な感覚系の魔法を使うけれど、軍の中でも役回りには自信あったのに挫けそうよ!

 なんてったって感覚系のバフを軍のサポーターにかけ続けてもらってようやくまともに実況できる状況だから。

 初日はまぁ大丈夫だろうと思って単身実況に挑んだら、初回からショーク様のマジ戦闘についていけなくて泣きそうだったわ!

 この試合もファーラ選手の速度が徐々に増していて、ちょっとやばそう・・・とか言ってみたりして!


「おーっと、ファーラ選手!タクトはそのままに近接戦闘へ挑みます!

 足か?足技なのか?!

 詰め寄られたマルーン選手は土魔法での防御壁を棘状に体に纏わせて守りの構えですが、それもお構いなしにファーラ選手の拳が刺さっていきます!

 あ!あぁーっと!ついに土の鎧が剥がれ落ちてマルーン選手ダウン・・・ファーラ選手の勝利です!」


 武術大会と銘打たれたせいかザ・魔法使いの出場割合が少ないけれど、試合を観ているとむしろ魔法は直接戦闘の補助とした方が有効な場面が多いように思えるわね。

 行軍規模が冒険者パーティと比較にならない軍の場合あまり参考にならないかも知れないけど・・・でも、こういうスタイルにも憧れるわ。

 お偉方はどう思うのかしら?気になるけれど、それは私のような末端の構成員の考えることじゃないわね!



「さて本日二戦目、一回戦最終試合!この試合を開会後から待ち望んだ方も多いのではないでしょうか?

 ドラゴンロアのドラゴニア=グーン選手対、再来から、再来のエンダことオヴァリ=エンダ選手!」


 何を隠そう私が一番気になってた試合よ!

 予定調和のような滑らかさで王国でも功績が広まっている再来のメンバーたち。その中でもアポロア様の再来とまで言われるリーダーとなれば、期待しない方がおかしいわよね?


「初日の対戦でもみられたドラゴンロア対再来、その再戦にもなるでしょうか?

 圧倒的な氷魔法と攻撃力を見せたレットゥ選手と、それに対して大剣でのハイレベルな攻防を演じたグレイモア選手の対戦は記憶に新しいでしょう!

 それでは両者、定位置へ!

 試合、開始!」




*** オヴァリ=エンダ ***


 グレイモアさんが対戦したレットゥさんは氷系の魔法を使う龍人だった。

 今まさにウィンディアさんの合図で始まった僕の対戦。相手の龍人グーンさんは、レットゥさんとは違っていきなり地形に干渉してくるわけではないみたいだ。

 僕もまだ構えたままで、動かない。

 するとグーンさんが声をかけてきた。

「お前が再来か。ふん、いい試合を心がけようではないか」

 何だか馴染みやすい人みたいだけど、油断させる作戦かも知れない。

「えぇ、胸を借りる気持ちで本気で行きますから。よろしくお願いします」

「戯言を。この時代の英雄と目されるお前に、俺が手加減などする筈もなし・・・行くぞ!」


 その言葉をきっかけに放たれるドラゴンブレス。

 フレアドラゴンを彷彿とさせるけれど、照射範囲はフレアドラゴンのそれよりも遥かに狭く、正確に僕に向かってくる。

 水・・・いや土と風だ。

 土魔法で防壁を、風魔法で大気の流れを変えブレスを後方へ受け流す。

 ブレスを放ち切った直後、グーンさんは一気に飛び上がり、そして上空から急降下を始める。

 やっぱりフレアドラゴン戦のようだと思いつつ、僕は攻撃の射線上から大きく距離を取る・・・が、あの速度にも関わらず急激な方向転換で追撃される。

 風魔法で後方に飛び衝撃を緩衝しつつ、氷魔法を纏わせた大剣で攻撃の道筋を地面へと誘導。

 ・・・半分くらい上手くいった。


 守ってばかりでは仕方ない。

 地面を抉るように止まり態勢を立て直しつつあるグーンさんの後ろ姿に向け、サンダーボルトを溜め放つ。

 中空から現れる雷は僕の定めた目標を大まかに捕捉して、大気に轟音を響かせて落ちる。

 ドガガガッ!!

「ゴゥアッ!」

 サンダーボルトは最大の半分くらいが正しく目標に落ちたけれど、グーンさんの鱗伝いに地面へと流れたものも多かった。

 別の方法にしよう。


 再び飛び上がったグーンさんを見定めつつ僕は次の魔法を準備する。賢者の園でアルド様に魔法を教わっていた時、アルド様が特に誇らし気に披露してくださった技、イレイザーカノンだ。

 習得には苦労したけれど、その甲斐あって僕にとってもとっておきの一つになっている。

 デメリットはかなり集中を要するということ。何しろ限界を超えて威力を高めた火魔法を、並列して起動する風魔法と闇魔法で無理やり制御しないといけない。

 その分威力は凄まじく、魔法が残す一条の光は軌道上にあった全てが消されたことを意味する。


 ダンジョンでも単体でボス級の魔物相手に、かなり状況が整った上でしか使ったことはない。止まることのない戦況の中で仲間を避けて放てるほどには完全に習得できていないから。

 しかし今は違う。絶対に僕を貫いてくれるというある種の信頼をグーンさんに寄せ、集中を高める。

 ボボッ・・・ボボッ・・・と滞空しながら体に炎を纏わせていくグーンさんの滑空を待つ。

 御伽噺に出てくるフェニックスのように炎に身を包んだ姿は神々しく、会場の視線が集まっているのをなんとなく感じる。

 うん、周りもよく見えている。いい兆候だ。


 ギャガァァァァァッッッ!

 もはやドラゴンそのものの叫びを放ち急降下が始まる。

 ・・・避けるな!恐れるな!自分に言い聞かせ完全に準備の終わったイレイザーカノンを放つタイミングを待つ・・・今!


 ッドシュ・・・!!!


 大剣を照準に静かに放たれた光は、ジジッという音を引き連れてグーンさんの肩口を襲った。

 僕はと言うとグーンさんの炎の突進によって、カノンの前に先ほど同様発動しておいた土壁も風魔法も突き破られ大きく吹き飛ばされる。

 ノトの補助魔法をありったけ受けているとは言っても、致死的な怪我が大怪我で済むくらいにしか軽減できていない。

 

 突進を直接受けた左腕が動かない。お腹の辺りが我慢できる限界ギリギリくらいに痛む。

 しかし無理やり立ち上がり剣を構える。

 このくらいの怪我はこれまでも乗り越えて来た。

 見れば、カノンを受けたグーンさんは左肩から右の鼠径にかけて体が円筒状に消失し、立ち上がったものの継戦能力は失っているように見受けられた。


「さすがだな」

 グーンさんはそう言い残し・・・闘技場によって体を場外で再構成された。

「ありがとう、グーンさん」

 そして僕も、闘技場中央で再構成される。

「勝者!オヴァリ=エンダ!」

 ウィンディアさんのアナウンスが会場に響き渡り、会場がどっと湧いた。


 イレイザーカノンには弱点も多いけれど、今回は上手く決まってくれた。

 多分パーティのみんなからは後々で改善点を指摘されるだろう。

 反省点は多い。

 それでも、僕は龍人との戦闘に勝利し、一回戦を突破した。




*** ワイザック=アルド ***


 この大祭にはアリア=ソロジーに引き連れられるような形で赴いたが、ワシもまだまだ世間を知らんなと思うた。

 ワシが第一線で活動しておった頃よりも、レベルの上限が上がっておるように思う。

 エンダは言わずもがな、アリアがクレアを見つけた時には、もう何年も前になるというのに初めて学校でその瞳に意識を吸い込まれた時のことを思い出した。


 アイテム様々ではあるが、こういう時にはこの "銀縁メガネ" のありがたみをひしひしと感じる。

 ある程度視覚化された魔素は・・・というかワシの感知が引き上げられているのかも知れんが、ともかく個人の性質をよく表すように思う。

 エンダは相変わらず虹のように多彩で鮮やかな色を放っておる。

 姉の方のソロジーは瞳の神々しさを更に増し、しかし静謐と安堵を覚える、そういう色を瞳だけでなく体一杯に纏っておった。

 全く気にもかけていなかった妹の方のアリアが、姉にも似た澄んだ色合いを見せていたことには驚いた。ペイネ=ボウェルも似た傾向を見せていたのは、関係があるに違いない。


 一回戦ですべての選手が出そろったが、メガネ越しだと賢者の町の出身者以外で特に目を引かれたのはデンス=トレスとファーラ、次いで龍人たちの 4 人だろうか。

 トレスは表面的に見える色とは別に、内に秘めるとでも言うのか、爆発寸前の魔素の塊のような色をみた。

 ファーラは見たことのない質感のベタっとした色合いの魔素で、これは同じパーティ、ダブルホーンのゴスも似たような感じであった。

 龍人の 2 人は魔素の輝きが常人とは一線を画す。


 滞りなく一回戦に続いて二回戦も終わり、準決勝は龍人のレットゥ対クレア、ワシが個人的に注目しておったトレス対ファーラとなった。

 旧知のググリエルが負けたことには少なからずやり切れない気持ちもあるが、クレアの実力が上だったのは誰の目にも明らかだったろう。

 ・・・アリアに姉の試合を見るためと話を持ちかけられた時は、話題にもなっているデイブレイクのメンバーとはいえ姉思いの良い子だと思ったものだが、アリアの期待は結果的に誇張でもなんでもなくただの事実だったということになる。


 それからエンダが負けたことについては会場は決着後しばらく騒然としていたが、ワシとしてはファーラの得体の知れなさの一部が垣間見えた対決だったためむしろ納得したものだった。

 ファーラは・・・あのヤギ獣人はおそらく見た目通りの獣人ではないのだろう。では何か?それは予想しかできんがおそらく・・・。



「ね、アルド様。お姉ちゃんはすごいでしょう?」

 そう言うアリアの表情は満面の笑みで、メガネを外していてもついつい引き込まれそうだと年甲斐もなく思ってしまう。

 長かった大祭も明日の準決勝、明後日の決勝でメインイベントを終える。

 後夜祭と位置付けられた最終日を含め、残りは 3 日である。 

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