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今更普通の異世界転生  作者: 玉庭ひとり
第三章 ロッキンガム大祭
53/185

047 門の先

*** ディージー=エフ ***


 ガルネリア様の下からは例の異世界人とのパーティに、あたしとラヴィスが出向くことになった。

 吸血鬼系のラヴィスはテレイズ様の部下の中でも戦闘面で実力があり、魔法の汎用性も高い。堕天使のあたしはアレスタイ様の部下の中では探索向き。

 ガルネリア様としては異世界人の様子を把握しておきたいが単にダンジョン攻略の面からも実力者を、と、テレイズ様とアレスタイ様に伝えられたらしい。

 そして選ばれたのがあたしとラヴィスということになる。


 あたしは特にその気はないけど、アレスタイ様からは異世界人とのパーティが気に入れば付いて行っても良いと言われた。

 ラヴィスも同じことを言われたらしく、合流までの道中にそのことを話すと、

「私もそんな気はないわ。エフ、あなたもでしょ?」

 と返された。

 定期連絡は難しいとしても、死にさえしなければ役割を果たせる。そういう意味では、あたしとラヴィスの探索における相性は良さそうだ。



 ダンジョン近くの野営地に着き異世界人を含む 3 人と合流してすぐ、私は第一にその異世界人の何だか弱そうな感じが気になった。

 見目が良いのはともかく所作はいかにも村娘ですといった風だが、カンナバーラ様配下の 2 人が彼女を異世界人と紹介したので間違いはなさそうだ。

 カンナバーラ様が異世界人キャスカに付けた二人はレドゥ=ラーデンとガイアー=ライノットといい、鬼のラーデンはアンデッドたちを攻略した小隊長の弟なのだとか。もう一人のライノットは狐系の魔人だった。


「初めまして。フェイト=キャスカ、異世界人よ」

「初めまして。あたしはディージー=エフ。こっちはラヴィ=ラヴィス」

「私のお願いを聞いてくれてありがとうね」

 あなたのお願いではなくて、カンナバーラ様の意向を尊重することにしたガルネリア様の指示だ。

「早速だけど、せっかくパーティを組むのだから私は仲良くなりたいの」

 程度によるかな?

「だから今日はパーティね?」

「疑問形で言われても困るのだけど」

「パーティね。それ用に食べ物もお酒も用意しておいたんだ」


 ラーデンとライノットはカンナバーラ領から同行していた訳だから、もちろん知っていたんだろう。

 キャスカと一緒にテントで準備を進め、そして一通り揃うとさっさと酒を呷り始めた。

「おいらはさー、ダンジョンって憧れてたんだよな」

「ライノットほどではないが、俺もそういうところがまぁあるかな」

「二人はどうなんだ?」

 ラーデンはお兄さんとの関係もあり、国内よりは外へという気持ちがあったらしい。ライノットは単に冒険心と、それから強い敵を求めてのようだ。

「二人とも強いんだよ」

 キャスカは二人とそれなりに意気投合しているらしい。

「ラーデンは水と火魔法がメインだっけ?さすが鬼だけあって身体能力が基本的に高いのがいいよね」

「キャスカほどではないがな。むしろキャスカの身体強化に目がいく」

「そう?まぁそれでさ、ライノットは見た目と喋りからは想像しにくいけど、光の幻影魔法剣士なんだよ」

「そうだな。おいらは光魔法には自信がある」

 3 人とも酔うの早くない?

「二人は何が得意なの?」


 先にラヴィスが答える。

「私は影魔法使いよ。それなりには戦えるつもり」

 どうせパーティとして活動するから、隠しても仕方無いと云う感じだろうか。

 いざパーティとして本格的に動き始めたら、生存のために自分の切り札もいずれ切る時は来るだろう。なら初めから連携のために、切り札以外くらいは、伝えておくのも悪くなさそうだ。

「あたしは水魔法と、それから回復が得意ね。だからあたしもラヴィスも、どっちかと言えば後衛かな?」

「そっかー。私は真ん中か前だし、ラーデンもライノットも前寄りだから丁度良いわね」

 ずいぶんノリが軽い。


 短時間しか話していないが、キャスカも、それからラーデンもライノットも、随分明け透けな性格に感じた。

 あたしもラヴィスもそこまで積極的ではないけれど、それを気にしない雰囲気もある。

 もっとも、お互い魔王の配下を代表してキャスカに付いて行くのだから、紛争の種になりかねない要素は基本的に避けるだろうけど。


 その日初めて出会ったにも関わらず、私もラヴィスもいつの間にかすっかり彼らとの会話に打ち解けていた。妙に気分のいい夜だった。



 ダンジョンの探索は思っていたよりも順調に進んだ。

 数日の間入口付近の草原で大雑把な立ち位置の把握だとか連携のための掴みの時間を設けた後は、休息以外は殆ど止まることなく深部を目指した。

 私は天使の端くれとしてダンジョンを 2 つの意味で危険視していたけれど、絶対的な脅威らしき存在には、アンデッドが陣取っていたと聞く町に来るまでの間遭遇していない。


 私とラヴィス、ラーデンとライノットも実力はダンジョン深部を探索するパーティとして申し分無いと思うけれど、やはりと言うべきか、異世界人の力は数段違う次元にあるように思えた。

 キャスカは雷魔法を得意とすると聞いていた。でも実際には、キャスカは火、水、闇の魔法を織り交ぜて多彩な魔法を使い、更に身体強化や補助、癒しの魔法まで使えた。

 反則級の多才さに加えて、思いがけず気遣いや状況判断力も優れている申し分のなさ。

 反りのある片刃の剣の扱いには慣れていないみたいだけど、それを差し引いても危なっかしい場面が殆どない。

「元の世界では魔法使いだったの?」

 ふと聞いてみたが、ただの学生だったとはぐらかされた。

 魔族領にいわゆる学校はないが、それに類する施設はある。想像するに、世界は違えどただの学生がこうも動けるはずないだろうから、何かしら事情があるのかもしれない。


 アンデッドがうろつく城下町には周囲に森や農耕地帯らしき一帯もあり、そこではミノタウロスやケンタウロスが縄張りを張っていた。

 一体一体が強力な上に群れで行動していたため普通に戦えば脅威だったと思う。

 ・・・思うけれど、キャスカのバフもあり、あたしたちはそれぞれの能力を十全に発揮して切り抜けた。

 キャスカなら単騎でも行けるのでは?とすら思えるが、流石に無理だと思うと返された。

 そして城下町の奥では、おそらく本来は町の中にもっと居たのだろうゴーレムたちが行手を阻む。


「石壁の前にもいたな、同じゴーレムか?」

 真っ先にその姿を捉えたライノットが聞いた。

「さすがに荒野のとは違うだろうけどな。単騎でいるから、ナイトゴーレムよりも強いとか?」

「そうなるとおいらじゃそろそろ難しいかもな」

「ライノットがダメなら、俺も無理かもしれん」

 キャスカがライノットとラーデンの会話に割って入る。

「そう?まだまだいけるでしょ」


 正直なところあたしもそのゴーレム 1 体がナイトゴーレム 3 体より強いとなると突破できないだろう。ラヴィスも然り。

 いやそもそも、ナイトゴーレムを一人で倒せたかと問われると難しかったと思う。永らくナイトゴーレムは突破されていなかったのだから。

「まぁ、とりあえず行ってみよっか」

 軽いノリで声をかけたキャスカがバフを施し、ライノット、ラーデンが先陣を切る。

 やはりナイトゴーレム単体より強いが、さすがに 3 体分と言うほどではない。連携が無い分こちらの方が倒しやすかった。


 たまに 2 体のゴーレムが一緒に行動していることもあったが、やはり倒すことができた。

 自動回復の機能が備わっているようだが、こちらの魔法による損傷がそれを上回る。

 ラーデンの火魔法で砂にまで分解して離れているけれど、もしかして私たちが去った後再生していたりするんだろうか?ふとそんなことを思ったが、みんなあまりその点は気にしていないようだった。



 そうこうしているうちに町が先細りして一点に収束し、物見櫓のような構造を上に兼ねる巨大な門に到達した。

 おそらくここがこの層の最終地点だろう。

 そして門の向こうには、それまではダンジョンの壁や建物で見えなかった一つの城が聳え立っている。


「いよいよって感じね」

 キャスカはいつも楽しそうだけど、初めてあたしたちと合流した時の懇親会で見せた以上の笑顔になった。

「・・・なんかここ、よくない感じがする」

 ラヴィスが小声で耳打ちする。

「どんな?」

「うまく言えないけど、私とは完全に相容れない感じ」

「あたしからしても、ちょっと躊躇する威容はあると思うけど」

「多分それとは別・・・」

 さらに声を潜め、ラヴィスはそれ以上続けなかった。


 そして、あたしたちが気合を入れ直して門を抜けた数瞬後、それは飛来した。




*** ハル ***


 久しぶりの城下町はアンデッドが減り、ゴーレムが増えていた。

 ゴーレム一体一体はナイトゴーレム単体よりも強いし使う魔法も多彩なため油断ならない。しかし、倒し方自体は同じなのであまり苦にならなかった。

 むしろ町の周囲にあった森のミノタウロスやその先のケンタウロスの方が手強かった。両方とも群れている上に、それぞれの個体が大きく強いためだ。

 逆にこれは剣術を磨く良い機会だと思ってそう提案すると、ペイネはあまり乗り気でなかったけれどディモンは賛成してくれたので、私たちは一対多を意識して、木々の合間でミノタウロス、開けた場所でケンタウロス、という感じに 2 週間くらいずつひたすら魔物を倒しまくった。


「そろそろ進まない?」

 痺れを切らしたペイネの言葉をきっかけに私たちは町の左側を後にし、その後は町の右側でアラクネを相手に立体起動と搦手を使う魔物との戦闘経験を重ねた。

 アラクネとの戦闘はペイネの風を駆使した立ち回りの丁度良い練習になったようで、逆にディモンの平面的な対処の限界が見えた。

「僕も近距離以外の対応を取れるようにならないとな・・・」

 そんな言葉を何度もこぼしつつ、剣術と魔法の両面から方法を模索していた。

 アラクネの巣も 2 週間ほどで見切りをつけ、町に戻ってゴーレムが多い区域を抜けて大きな門に辿り着いた。



「そろそろ最深部かな?」

 遠くの巨大な城を見遣り、私はそんな予感を覚える。

「なんか飛んで来そうな感じだね」

「何が?」

「行けば分かるかな」

 城の方からは魔素の線とでも呼べそうなものが伸びていて、何かの道筋に見えた。

 今回は食料も特に問題ないため、このまま進むことにする。


「一応、幻影を展開してから行こう。身体強化もずっと」

「え、ずっと?」

「無理そう?」

「いや・・・どうだろう」

 ペイネは大丈夫そうな雰囲気で頷いたけれど、ディモンは不安があるらしい。

「最近はまぁまぁ上達してるし、これも練習と思ってさ」

 そう言うと少し乾いた笑いを返された。


 ・・・門を潜ると、案の定城から一つの塊が飛来した。

 轟音と共に眼前に落ちたそれを、身構えつつ観察する。

「ゴーレム?」

 ペイネが言うように、それはついさっきまで戦っていたゴーレムとは少し形が違うゴーレムだった。具体的には、より人型に近付いている。

 幻影は効果があまりないようで、私たちが仕掛ける前にゴーレムがこちらを向いて声を発する。

「お前たちを試す」

「どういう意味かな?」

「暗闇の城へ相応しいかどうか、見極めよう」

 暗闇の城と云うのは、遠くに見えるあの城のことだろう。そういえばダンジョン内で、元から名称のある物は初めてのような気がする。


 ともかく、新たな領域への探索はそのゴーレムとの交戦から始まった。

 これまでのゴーレムには倒し方からして 2 パターンあった。荒野のゴーレムのように核があって、それを壊すことで停止するパターン。もう一つはナイトゴーレムや城下町のゴーレムのように体を崩し切るかその他の要素で停止させるパターン。

 門のゴーレムは後者に近いが、違和感がある。

 魔素操作で機能を無理やり停止に持ち込むやり方が、妙に阻害される。

 中から直接抗われる感覚というか・・・。


 ディモンが大きくノックバックしたタイミングで、ゴーレム自身に問う。

「お前はゴーレムなのか?」

 律儀にもゴーレムが答える。

「そうであり、そうではなし」

「どういうこと?」

「このゴーレムを操る私こそが私である」

 あぁ、そういう。

「じゃあ、その "私" と云うのは誰なんだろうね」

「それはこの先で知るがよい」

「そう」


 会話を終わり、一気に攻める。

 ペイネにバフを貰い即座にゴーレムの頭上へ駆け、フレアを背後に回らせる。久しぶりに解放したネフは据え置いたままなので、フレアと挟み撃ちの形だ。

 ペイネとディモンは私の合図を受けて下がる。

「ネフ!」

 掛け声に合わせてネフが火炎放射よろしくゴーレムに火を吹き、反対からもフレアの火魔法を浴びせる。

 ゴーレムを中心に衝突した炎は私が風を操りその場に無理やり留まらせ、炎の牢獄とでも呼べそうな熱のドームを形成した。

 ゴーレムはドームから出ようとするが、私がその都度ドームごと動かすので出るに出られない。焼けているのか溶けているのかはよく分からないが、風化して風に散るかのようにゴーレムの体は次第に崩れ、最後には風の流れるままに掻き消えてしまった。


「・・・よろしい。歓迎しよう」

 どこかから、ゴーレムを操っていた存在のものらしき声が響く。

 攻撃をやめ、遠くへと流れていく魔素の残滓を見送りながら、私はふっと気を緩めた。

 よく見ればまた誘導線の魔素が張り直されているけれど、再度ゴーレムが飛んで来ることはなさそうだった。



「ねぇソロジー。聞きたいことがあるんだけど」

「奇遇ねディモン。私もよ」

「えっと、何かな?」

 ネフを撫でてから影に収めつつ二人を振り返る。

「ちょっとよく分からなかったんだけど、さっきのってつまり一人で包囲陣を作ったってことだよね?」

「ネフは自分で動いてたよ」

「いや、そうなんだけど」

「それよりもあの風よ!ドラゴン 2 体分じゃ収まらない火魔法を押し留めるなんて!」

「多分ペイネもできるよ」

 多分できる。そのうち。


「・・・やっぱりソロジーなんだよね」

「え?」

 ディモンは満足と納得の中間のような面持ちでペイネと顔を合わせる。

「そうね。結局ね」

「いや、だから何が?」

「いやぁ、君のパーティにいられて僕は幸せだよ」

「そんなの、初めから分かってたことじゃない」

 二人は嬉しそうにそんなことを話した。私こそ、二人がパーティを組んでくれて幸せなんだけど?



 私としては英雄の再来と呼ばれるエンダのような必勝王道ルートはともかく、私が主人公のパターンを諦めていない。それ故、まだまだ先は長いと思っている。魔素制御も、魔素の解析も、更にその根源への手掛かりも。

 だから二人にも同じようにこの世界を分かち合えるだけの技量を持って欲しい。そして願わくば、私を主人公に仕立て上げてほしい。

 ・・・いや、正直なところ第三者から見たらきっと、このパーティの中でさえ主人公は私じゃないんだけど。


 そんなことを考えながら、私は二人を先へと促した。

作中のお綺麗ランキングはぶっちぎりでペイネさんがトップです。

キャスカや堕天使、吸血鬼がその次くらい。エルフたちがそれに続く感じでしょうか。

男はまぁ適当に決めてください。

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