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今更普通の異世界転生  作者: 玉庭ひとり
第二章 ダンジョン探索
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018 ハラルタナイツの休息

ダンジョンの最深部を探索しているパーティは、インドールの風、ハラルタナイツ、夢幻、ロッキンガム探索隊の 4 つです。

*** メチルグ=リーン ***


 2 ヶ月ぶりのハラルタは特に変わりなく、そこここから剣術や格闘術の稽古の声が聞こえてくる。

 私たちハラルタナイツはダンジョンから帰還後、いつもの様にタビノ家の離れにお邪魔し、久しぶりに緊張感を解いて夕食についている。タビノの奥さん、ウレイラさんの食事はボリューム重視だが、疲れた身体にはスッと入ってくる優しさがある。


 今回もナイトゴーレムの攻略には至らなかったが、それは他のパーティも同じ様だ。

 未だに突破の糸口が見つからずもどかしいが、パーティに被害が及んでいるわけでもないため、冒険者稼業としてはゴーレムやドラゴンの討伐、その素材採取で十分以上にやっていける。


「数日の間は休養にしよう。私は武器の手入れと、それから指南所に顔を出そうと思うが、みんなはどうだ?」

「俺もメチルグについて指南所に行こうかな。プームもマルト流のとこに行くのか?」

 レオスピノは俺と同様アミガラ流の剣士で、ハラルタにも指南所がある。アミガラ流の総本山はポーラ大陸のアーデリアにあり、ハラルタの指南所はポロアスト大陸に何ヶ所かある出張所の一つだ。

「俺も少しは顔を出すかな」

 そう答えたプームはハラルタ発祥のマルト流の剣士で、もちろんハラルタに総本山がある。血気盛んなプームのことだ、実戦さながらの試合を求めて行くのだろう。


「俺は家で過ごすよ。ウレイラ、どこか出かけたいところはあるかい?」

「あら、いいの?じゃぁカーテンを新調したいから、見繕いに行きましょう」

 スノーフマン夫妻は相変わらず仲が良さそうで何よりである。

「私も買い物かなぁ」

 メンバーの紅一点、アゲーテも買い物か。身嗜みに必要なものなど、揃えておくべき消耗品は南ベースに来る商人からではなく町で買いたいといつも言っている。


「じゃあ、落ち着いたらまたダンジョンだ。できれば情報収集も頼むぞ」

「いつものことじゃない、言われなくてもわかってるわ」

 アゲーテが答え、夕食を済ませた者から席を立った。



 翌朝は入念に剣や防具の手入れをし、午後からレオスピノと指南所へ向かった。

 指南所では後輩を指導しつつ面白い人材がいないか目を光らせていたが、その場にいた面子は皆悪くはないが言ってみれば普通で、それだけにきっちりと型の指導が行われていることも実感される。

 実戦で才能が開花するのはよくある話だ。・・・いやそもそも、ここでは身体強化を含め魔法無しで指導されているため、それで実力を測ろうというのも見当違いではあるのだが。


 指南所でもダンジョンの活性化を危ぶむ声がちらほら聞こえた。

 ダンジョン探索者の中でも最深部を行く私たちとしては、そこまで大きな変化は感じていない。しかし草原を中心に活動するパーティからは、群れた魔物の行動にはっきりと戦略を感じることがある、という話を聞いていた。

 こう言っては何だが、私たちのパーティの実力では草原や森の魔物が少し賢くなったところであまり実感が沸かない。そして荒野のゴーレムやドラゴンは元々知能が高いため、そういう例に当てはまらない。

 なるほど、冒険者ですらない住民ならば、インドール平原に出現する魔物でも当然十分な脅威だ。それが活性化しているかもしれないとなると、噂が広まるのも必然と言える。


 今までは気にしていなかったが、今後はダンジョン自体の動向にも気を配ろう。

 とは言え、おそらく原因はもっと深部に由来するのだろうから、結局やることは変わらない。要するにナイトゴーレムの討伐だ。

 私とレオスピノは手合わせを含め一通りの稽古をほとんど休みなく続け、すっかり日も暮れた頃スノーフマン家に帰り着いた。




*** プーム=サーム ***


 メチルグとレオスピノが出るのに合わせて俺も道場に向かった。

 俺はマルト流に誇りを持っているが、同じようにあいつらもアミガラ流を大切にしている。タビノこそ流派に属していないものの、補助魔法使いのアゲーテ以外 4 人全員が剣士にもかかわらず俺たちが熟練としてやって来れているのは、お互いの剣を尊重し、そしてそれぞれが苦手なことを素直に認め補い合っているからだ。


 ただ、苦手なことと言っても、我流のタビノは唯一隙がない。タビノの実力は他の 3 人より数段上だ。

 異例の早さでハラルタ騎士団の騎士長にまで上り詰め、そして騎士団の体勢を綺麗に整え直すと、これまた異例の早さで辞職し冒険者になってしまったタビノの人望から、パーティはハラルタナイツと呼ばれる様になった。騎士団を差し置いて。

 その呼称に初めは戸惑いもあったが、むしろナイツ然とした態度を頑張っているうちに自然と心持ちもそれらしくなり、今ではこのパーティ名に恥じない行動を心がける様になった。他のメンバーもそんな感じだ。

 騎士団がそうだった様に、俺たちのパーティもタビノに知らず知らず “調整” されているのかもしれないが、リーダーのメチルグを中心にうまく噛み合っているので悪い気はしない。



 道場に着くとマルト流の弟子が知らない若者と手合わせをしている最中だった。

 周りでは道場の面々が遠巻きに見ている。

 若者は片手に剣、片手に盾を持つことから、マルト流ではない。それに例え片手剣だとしても、マルト流剣士であれば特有の動きが混じるので分かる


「お久しぶりです、ムラーさん。あれは?」

 俺は手合わせの様子を見ていた一人、道場長のムラーさんに声をかけた。後ろで束ねた髪が、以前よりも一層白くなっている。

「お久しぶりです、サームさん。パーティメンバーを募集しているらしいですよ」

 ・・・それが何で手合わせになるんだ?

 俺の疑問を察したのか、道場長が続ける。

「いい人を紹介して欲しいと私を訪ねて来たのですが、それを聞いていた弟子たちがこぞって手合わせをお願いしたんです」

 イマイチ説明になっていないな。

「何でまた直接道場に来たんですか?ギルドで聞けばいいものを」

「ギルドで聞いた上で、国内にある流派を直接回っているらしいですよ。自分の目で見たいんだとか」

「へぇ、そういうこともありますかね。若いってのも関係あるのかな?」

 弟子たちとしては実戦のいい機会だ。現役の冒険者となれば、他流派との試合以上に得るものが大きいと考えたのだろう。


 俺も手合わせを見守る。

 木刀を握り剣を交えているマルト流の弟子は、見た感じ道場の中でも上位に食い込めるくらいの実力を持っているが、これまた木刀で応じる若者には軽くあしらわれている。

「名前は何て云うんですか?」

「ええ、彼はディモン君というそうです。それからあそこの二人がボウェルさんとソロジーさん」

 言われて道場長が示した方を向くと、恐ろしく綺麗な女の子がいた。

「おお」

 思わず、意味もなく声が漏れる。しかし女の子を見ていてもしょうがないので手合わせに向き直ると、弟子が剣を下ろしたところだった。


「あれ、終わりですか」

「そうみたいですね。いやぁ、ディモン君、もう 10 人は相手してますけど、余裕そうなことで。サームさん、次どうですか?」

 俺はディモンを見遣る。ディモンも、丁度こっちを見ていた。多分ムラーさんを見たのだろうが、視線が合った。

「・・・ディモン、だったか?飛び入りだが俺もいいか?」

「えーっと?」

「ディモン君、彼はサームさんといって、この道場出身の冒険者です。実力は私が保証しますよ」


 少しだけ間を置いてディモンが答える。

「えぇ、ぜひ」

 ディモンはパーティメンバーの方を向くと何やら目配せをした。

「サームさん、僕だけでなく、あっちのボウェルとソロジーとも手合わせをお願いしていいですか?せっかくの機会なので」

 あのお嬢ちゃんも戦うのか?軽装だが、ワンドを持っているので後衛と思ったが。

「あぁ、いいぞ」

「それから、実戦形式で・・・魔法ありでもいいですか?」

「じゃぁ俺もそのつもりでやろう。設備は壊さんでくれよ」

 俺は快諾した。



 ・・・めちゃくちゃ後悔した。

 え?何これ、新手のイジメ?いや、そんなはずないか・・・。

 ディモンはともかくボウェルにも勝てないんだが?しかもソロジーに至っては無手。ナックルとか籠手すらなく、無手。

 意味がわからない。


 正直なところディモンはまだ何とかなる可能性があった。

 初撃の手応えから、それまでの弟子との手合わせで感じていた様に、ディモンの剣筋には甘いところが多いと分かった。

 しかし数合の間俺の攻撃を凌いでいたと思ったら、諦めた様に一呼吸置いて霧を纏い、次に気付いた時には俺の首に木刀が添えられていた。

 幻影の魔法だとは理解したが時すでに遅し。自分の身体強化をそこそこに留めていたことも、二度目があれば剣圧で霧を吹き飛ばす等の対策を思いついたことも、ただの言い訳に過ぎない。


 次のボウェルには機動力を完全に削がれ継戦不能になり、どちらも無傷のまま終わった。万全の身体強化も意味を為さず、観客たちは呆気に取られていた。

 何とも情けない結末だったが、風魔法で体を浮かされたあの無力感は筆舌に尽くし難い。規模こそ大きくないものの、ここまで剛と柔を兼ね備えた風魔法使いを俺は知らない。

 彼女の綺麗な顔にほんの少し落胆の色が混じった様に見えて、背筋が凍る思いをした。


 前二戦の結果を重んじて、最後のソロジーには万全の対策で挑んだ。身体強化はもちろん、開始と同時に詰め寄り魔法を使わせる隙を与えず、怪我への配慮すらなく、完全に実戦のつもりで動いた。

 ソロジーは詰め寄った俺が振りかぶった木刀には目もくれず、両手で俺の両手首を捕らえるとそのまま力を流して剣ごと俺の体を投げ飛ばし、転がった俺が体勢を整えることを許さず俺のうなじを押さえつけた。

 押さえつけられただけなら跳ね除けられると思ったが、ソロジーの膂力は俺の想像を遥かに超え、俺は負けを宣言せざるを得なかった。

 ・・・見た目によらず身体強化系だったとは。

 ただ、レベルが違う。はじめの投げすら柔の技ではなく剛のそれだった。受け流されたというよりソロジーの両手を支点に俺が勢い余って回転した感じだった。


 ディモンとボウェルには対策を立てて再戦を頼みたい気持ちだが、ソロジーだけは遠慮したい。



 後輩たちに醜態を晒し、自分の力は全く通じず・・・。

 軽い気持ちで手合わせに応じたことを本当に後悔したが、しかしそれを上回るほどの興奮がじわじわと沸き起こる。こんな末恐ろしいパーティの存在を知れたことに。


 そもそも、こいつらは何を求めて道場に来たんだ?

 パーティメンバーを求めて・・・とさっき聞いた気はするが、これだけの実力があるのに必要なんだろうか。

「なぁ、どんなメンバーが欲しいんだ?」

 とりあえず聞いてみる。

「盾になってくれる人ですかね・・・」

 ディモンが答える。

 ふむ。マルト流は他の流派に比べ応用が効き、盾の役割も果たせるだろう。その点は胸を張って言える。実際に大剣を盾の様に扱うことも想定しているし、何より俺がある意味でハラルタナイツの盾だからだ。


 結局彼らのお眼鏡に適う者は居なかったらしく、3 人はムラーさんといくつか言葉を交わすと道場を後にした。

「サームさん、皆さんには事前にお伝えしたのですが、僕たちのことはなるべく他言しないでください。面倒事は避けたいんです」

 去り際にディモンが言った言葉の意図はよくわからないが、負けたのは俺だ。素直に従うとしよう。



「彼ら、サームさんの様に攻撃重視ではなく、守り重視の人がいないかと聞いて帰って行きましたよ」

 3 人の背中を見送った道場長が横に並ぶ。

「まぁ、俺はそういう感じですが」

「そうですね。私もです」

 ムラーさんは物腰の柔らかさとは打って変わって、激烈な攻めのスタイルだ。

「"マッス流" 上がりのギーはどうです。適任なんじゃないですか?」

「えぇ、私もそう思ったのですが、ここひと月ほど姿を見ていないもので・・・。とはいえ一応名前だけお伝えしました」

「そうですか」


 ギー=グレイモアは若くしてマッス流、つまり大盾術を修めた鬼才で、経緯は知らないがマルト流の門を叩き修行中だった。

 彼の実力は盾術に疎い俺から見ても本物とわかるキレがあり、ディモンたちの需要に合致する可能性がある。

 今後頭角を現すだろう彼らの一助になりたいと自然と思えたがゆえに、そういった提案を一人考えていたが、ムラーさんも俺と同様彼らの力に惹かれたらしい。

 いつだって、男は自然と力を信仰してしまうものである。


 道場ではその後、"インドールの風" のミーの下で修行している “再来のエンダ” の噂を聞き、弟子たちと共に型の稽古をこなしてから家路についた。

 ダンジョン付近で聞いた以上にエンダの噂は広まっているらしい。

 なるほど、今はまだ駆け出しでも、英雄の再来となればそれも頷ける。ついつい現状そのままで物事を測ってしまうのは俺の悪い癖か。


 スノーフマン家で夕食を頂きながら、パーティメンバーにエンダのことと、それから名前は伏せてディモンたち 3 人のことを話した。

 俺としては今日の負けはいっそ清々しく感じたが、皆は俺に慰めの言葉をかけつつ、しかし案の定彼らに興味津々だった。

 まだハラルタに滞在しているだろうが、きっと探さなくとも近いうちにまた遭遇することになる。多分ダンジョンで。俺はそう確信している。

捉え方次第だとは思うのですが、

①趣味にはいくらお金を注ぎ込んでもそれはその人次第

②せっかくなら趣味は思う存分楽しみたい

③私にとってこの小説は趣味

④絵の有無で物語はイメージのしやすさに天と地の差がある(表現力不足が自覚される)

というようなことを考えると、ウン万円払って誰かに登場人物なり舞台のワンシーンなりの絵を描いてもらいたいと、わりと真面目に夢想したりしてします。

まぁそんな安請け合いしてくださる良心的な方がいるとは思っていませんが・・・。


お読み頂きありがとうございます。

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