第二十三話 エンヴィーエンヴィーエンヴィー
少し前からおかしいと思う気持ちはあったんだ。
このアルカディアに来て、俺は初めて人の死を見た。
人間が目の前で首をはねられて、死んだ。
けどあの時、俺は逃げなかった。
逃げなくても大丈夫だと思ったのだ。
そして結果俺は無事だった。
夜に食べた料理が美味しかった。
ベッドでぐっすり眠れた。
人が死んだのに。
魔王軍との戦いもそうだ。
唯の高校生がいきなり戦えと、力を貸してくれと言われたんだ。
けど、俺は力を貸すと言った。
美少女に好意を寄せられて。
何も知らないのに。
生き物をまともに殺した事もないくせに。
一瞬だった。
何かしたという感覚すらなかった。
光と共に、魔王軍が消えた。
何万もの軍が。
作り物じゃない命が。
俺が殺した。
盗賊の男も。
俺が殺した。
そうだ。
殺したんだ。
命を。
料理が美味しかった。
ぐっすり眠れた。
殺したのに。
今までこの事を考えようとすると頭に靄がかかったようになり、深く考える事が出来ずにいたのだが、何故かその事が気になる事も無かった。
けど、今この目の前の首無しの死体を見て、何も感じない俺を認識して、俺は……
……俺は一体何なんだ?
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「ふみゅみゅ?いきなりボーッとしちゃってどうしたのかにゃ?」
血だまりの上でスパーダは楽しそうに言う
「……なんだよ、これ」
「なんでちょー?」
「こんな……おかしいだろ。人が、人が死んでるんだぞ」
「うん!殺しちゃった!てへぺろ☆」
「なんで、そんな何とも思わないんだよ!?お前は人を殺したんだぞ、罪悪感は無いのかよ!?悲しく無いのかよ!お前は何とも思わないのかよ!?」
「あ、なんだ〜そんな事かぁだって私は『剣神スパーダ』だもん☆そこらへんの人間には興味ありませんし〜」
くそっ何だよそれ!
『剣神スパーダ』だから興味が無い?
なら……なら俺は『人間』の俺はなんで……
「ただの人間が許されるのは地球までだよね〜キャハハ」
なんなんだよ……俺はどうしたんだよ……
「もしもーし☆無視ですか?質問しといて無視ですか?無視はいけないんだよ!学校で先生に習わなかった?」
混乱していた俺にしびれを切らしたスパーダが不機嫌さを隠さずに言う。
「あーーーーーもーーーーー!久々にこの姿になったから私も情緒不安定気味なのだ!早く喋ってよこの世界で私の話を聞かないなんてやめてよ!」
スパーダは血で染まった地面に寝転びながら子供の癇癪のようにジタバタとしはじめた。
俺は呆然とそれを見ていると遠くから声が聞こえてきた。
「ユートさーん!これはどうしたんですか!?お怪我はありませんか!?」
アンジュさんがこの騒ぎを聞きつけてやって来たようだ。
俺がその姿を確認すると、スパーダは動きを止めてアンジュさんを見た。
「あっはぁ!何々誰々?異世界のテンプレよろしくユート君のハーレムかにゃ?彼女すごっい可愛いねぇ。天然であれかぁムカつく。あの心配そうな顔ムカつく。誰にでも優しそうな顔ムカつく」
そう言いながらスパーダは血まみれになった姿でエクスカリバーを振りかぶった
「そうだ。殺しちゃおう!」
傲慢の影響だろうか。俺はスパーダが神速の速さで剣を振り下ろそうとする瞬間がコマ送りに見えた。
このままだと間違いなくアンジュさんは殺される。
また俺の前で大切な人が殺されてしまう。
俺が弱いばっかりに。
……そうだ思い出した。
……そんなの嫌だ。
……もう嫌なんだよ!
俺の大切な人達を守れないのは!
こんな俺を好きだと言ってくれた人を守れないのは!
『嫉妬』
スキルが頭に浮かぶ。
今までせき止められた何かが解放された感覚がした。
次の瞬間
剣神スパーダは真っ二つになっていた。




