第二十二話 真っ赤な噴水
OK、少し落ち着こうか。
目の前の女の子をよく見るんだ。
アニメの魔法少女が身に纏っていそうなピンク色のフリフリが沢山ついた服。
男の欲望を具現化したようなスタイル。
そのくせ少女の様なあどけなさを残した10人中10人が美女と呼ぶだろう容姿。
右手に握られているのはこれでもかと神々しい輝きを放つ一振りの剣。
……
「もうっなになに〜☆ユート君ったら〜スパーダちゃんの事じっと見つめちゃって!もうて・れ・ちゃ・うゾ☆きゃは!」
「……おい一応確認なんだが、お前はさっきまで男だったスパーダであってるよな?」
「そうで〜す☆スパーダちゃんはエクスカリバーを使うときはこの姿になるんだよ☆どうどう?可愛いでしょ?美しいでしょ?見目麗しいでしょ?」
「……ちなみにその剣は何処から出した?」
「え〜おんにゃの子にそれを言わせちゃうの〜?エッチスケッチワンタッチだゾ☆それはおち……」
「分かったもう良いそれ以上いけない」
何かの間違いであって欲しかったが、やはり目の前のヤツはスパーダで間違いないようだ。
自分の男の剣を武器にして、さらに女体化するとは。
この世界は狂っているのかな?
などと考えている間もスパーダは「やっぱり私が1番可愛いよね〜☆」
などとほざいていた。
ウザいなぁ。
「それでユート君はこれで私が剣神スパーダちゃんって信じてくれたかにゃ?」
そう言いながら無駄に輝く剣エクスカリバーを見せつけてくる。
確かに尋常じゃない力を感じるし、物語に出てくる様な代物というのも頷けるのだが……
あれ、ち○こなんだよなぁ
なんだか嫌だなぁ
「おう。信じた信じた。だからもう帰れよ。お前が俺を攻撃したのはもういい、水に流すから。俺はこれからこの図書館の事をどうしようかと頭がいっぱいだからさ」
そうなのだ。今はこんな変態に構っている時間は無い。
この青空教室になってしまった現場をどうにかしなければ。
俺オワタ\(^o^)/
となってしまうだろう。
「え〜ヤだよ!エクスカリバーまで見せたんだよ!ユート君は今は私と戦うのだ☆」
「おいお前が勝手に見せて来たんだろうが。第一いきなり男のアレを見せられた人の気持ちにもなれ」
「む〜〜」
「何ぶりっ子してんだよ。今日はもういいだろ。俺は疲れたの」
もはや手遅れかも知れないが、この惨状を何とかする方法がないか考えるために早々に話しを切り上げようとした。
「ダメだよ。君は今日、私と戦わなくちゃ」
何者の反論を許さない、プレッシャーが場を支配する。
「だって戦わなくちゃ私が映えないでしょ?ゴッド・スキルを持つありえない対戦者。私は自分のゴッド・スキルを見せた。キミはどんな戦い方をするのかな?強いかな?強いよね?強いに決まってる。だって私の攻撃を避けた。私にダメージを負わせた。意味が分からないよ。あり得ないよね?うん、あり得ない。だって私だよ?剣の神スパーダだよ?あはは、うん面白い。そうかゴッド・スキルを使えるって事はキミも選ばれたのかな?そうじゃなきゃおかしいよね。この世界で、このアルカディアで私の話を聞かないなんて、おかしいもんね。あ、なーんだそういう事か。そうそうそういう事ね。早く言ってよね。びっくりしちゃうじゃない。うん。それなら納得かな?納得しなきゃね。納得しなくちゃいけないね。また私は拒絶されちゃったかと思ったよ。世界に。ならキミをどうして私は知らないのかな?おかしいよね?何でかな?何でだろう?教えて?教えてよ?教えなさいよ?何で何も言わないの?悲しいじゃん。悲しいよ。悲しいかな?あれ?どうなのかな?それなら戦おうよ。戦わなくちゃ。戦うんだ。この世界で勝利を栄光を司る私と。このスパーダと」
怖ぁ
え?どうした?急に目のハイライト消えましたけど。
いきなりキャラ変わってませんか!?
「お、おい。いきなりどうしたんだよ?それに選ばれたって何だ?お前もしかして俺が異世界から来た事しってるのか?」
「うん。知ってる。知ってます。知ってるに決まってるじゃん。けどそんな事はどうでもいいじゃん。あんな世界はどうでもいいじゃん。そんな事より私を見て?私だけを見て?私と戦って?私に勝たせて?私に殺させて?」
OK、会話が成り立たない。
だけどこいつは異世界について知ってる。俺がいた世界を。
「もうっ☆何考えてるの?こんな可愛い子ちゃんが目の前にいるってのに☆ぷんすかぷんぷん!ならしょーがない!」
その瞬間、スパーダが持っている剣が煌めいた。
そう、煌めいただけだ。
俺の目にはそう映った。
次の瞬間、今まで周りで俺たちを見ていた人達の首がごろりと落ちた。
鮮血を噴水の様に上げながら人が倒れていく。
地面が真っ赤に染まる。
何もない地面に何かを描く様に。
「は?」
俺の口からはそんな間の抜けた声しか出なかった。
いきなり物語が、変わってしまった感覚に陥る。
何だよそれ。さっきまではギャグマンガみたいなノリだったじゃないか。
だってあの剣、ち○こだぞ、ち○こ。
それが、何だよこれ……
「あっは☆これでスパーダちゃんとの会話にしゅーちゅーできるっしょ?」
「おい、冗談だよな?この人達が死んでる様に見えるのは?こんなたちの悪い冗談はやめようぜ?」
「ホントだよ☆今見えてるのは現実なので〜す」
「…………なんだよそれ。なら、ならなんで!俺はこの首が無い死体を見て何とも思わないんだよ!?人が、血を、血を首から吹いてるんだぞ!なのに何で俺は!今、何の感慨も浮かばないんだ!」




