第十三話 Oh……
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「魔王軍が攻めてきたぞー!!!」
夜が明けたばかりの早朝に、緊急事態を知らせる鐘の音が鳴り響き、兵士の声がこだまする。
魔王軍が攻めてきた……?
ニャジルさんも開戦は間近とか言っていたけど、俺がタルタニスに着いた次の日に攻めてくるとか、展開早すぎるだろ!
「まさかここまで進軍が早いとはな」
レオナも起きたらしく、魔王軍の早朝の奇襲には少し驚いた様だが、その顔はすでに昨日までとは打って変わり武人と呼ぶに相応しい凛々しい顔つきになっていた。
……眼のやり場に困る格好のままではあったが。
「ユート、私達も行くぞ。ついて来てくれ」
「あ、ああ、わかった」
俺達は魔王軍を見渡す為にタルタニスの一番高い防壁の上まで登ることにした。
「これは、凄いな……」
壁の頂上まで登り、俺はそこで目にした状況に対して無意識に呟く。
地平線から続く異形の者達の大軍。
圧倒的な数の暴力。
見る物全てに恐怖を与える光景がそこに広がっていた。
「ふむ、流石に多いな」
しかしその光景を目にしてなお、レオナは不敵に笑う
「だが有象無象共が集まろうとも、今の私に勝てる者はいない。私の横には愛する者がいるのだからな」
やだ!何このイケメン!
と言いたくなるセリフだよ!
本当に昨日とは変わり、かっこいいなこのお姫様。
その時、魔王軍の一番先頭から何やら黒い物体が空中に飛び出した。すると同時に空に映像が浮かび上がり、そこに豚の様な顔をして真っ黒な翼を生やした男が映りだした。
「ガレウス王国のぉ皆さーんぅ初めましてぇ」
豚が生理的に不快感を感じる声で、間の抜けた口調で話しだした。
「朝早くからぁいきなりぃすみませんがぁ皆さんをぉ皆殺しにしたいと思いますぅ。男はぁ皮を剥いで全身を切り刻み内蔵を脳味噌を抉り出しまぁーすぅ!女はぁ陵辱の限りを尽くしぃ生まれた事を後悔させてあげますぅ! 」
は?
いきなり何を言ってやがるんだこの豚は。
レオナも不快感を隠さず顔に出している。
「皆さんぅこれは名誉な事なのですよぉ? 我が魔王軍の栄光の生贄になれるのですからぁ! 素晴らしいですねぇ最高ですねぇハッピーですねぇ!」
そう言いながら顔面をグチャグチャに歪めながら楽しそうにする豚。
殴りたい、この笑顔。
「おっとぉとぉ私とした事が自己紹介を忘れてしまっていましたぁ……すみませぇーん。私はぁ貪食王スースーと申しますぅ」
豚がスースーと名前を言った時、タルタニスは騒然とした。
「ば、馬鹿な!貪食王スースーだと!?」
「スースーといえば魔王軍総大将、魔王本人じゃないか!」
兵士達は皆信じられないといった感じだ。
いやいや俺も信じられないよ、だって魔王っつったらラスボスクラスだよ?普通こんな初戦で出てこないでしょ?
なんて考えていたら横からレオナが
「奴等魔族は魔王クラスで無ければ嘘はつけない。おそらく奴が魔王本人だ」
なんて教えてくれました。
えっ?マジであの豚が魔王なの?
「うむ。貪食王スースーはあの様な醜悪な外見ではあるが、人の心を操ったり、悪意を力に変えるスキルを持っているそうだ」
成る程
見た目じゃ無いって事か。
ん?俺、今あいつのスキルを知ったって事だよな。これってゴッド・スキル強欲って使えるんじゃないか?
そう思い駄目元でスースーを見ながら強欲を発動する様に念じる。
【ディザスタースキル:貪食なる者を奪いました】
………奪えた。
奪えちゃったよ!
何だかあいつの二つ名の元になってるっぽいスキル奪えちゃったよ!
しかもスースー自分のスキル奪われた事に気づいて無いっぽいぞ。今でも生理的嫌悪を覚える笑顔が映像から流れているし……
「レ、レオナ?何だか俺、あいつのスキル奪えたみたいなんだけど……」
レオナは魔王を見た時よりもびっくりした顔を俺に向けた。
「奪ったとはスキルをか……?」
「う、うん。昨日言ったゴッド・スキルの中に相手のスキルを奪えるっていうのがあったから試しに使ったら、とれちった」
「他人のスキルを奪えるなんて聞いたことないな……ユート他にあやつから奪う事はできるか?」
「試したいが、相手のスキルを認識するっていうのが条件らしいんだ。あいつの背中から翼が生えているけどあれはスキルなのか?」
「そうだ。あの翼は恐らく『悪魔の翼』と呼ばれるスキルだろう」
「分かった。試しにもう一度やってみる」
そして俺はもう一度強欲を発動させる。
【ディザスタースキル:悪魔の翼を奪いました】
またも頭の中に声が鳴り響いた。
「ではではぁそろそろーーーひぅっ」
すると今まで映像の画面内にいたスースーがいきなり消えたではないか。
……真下に急降下しながら。
そして肉眼で見えていた黒い物体は凄い速度で地面に落ちて行き、激突した。
「な、何事です!いきなり!」
スースーに追いついたのか映像がまたスースーを映しだした。スースーは少しボロボロになっていた。
「いきなり私の翼が消えるなど!この程度の衝撃で私が傷つくなど!!意味が分かりません!!!」
何だろう、少し涙声に聞こえるな。
「まさかスキルを奪う事の出来るスキルがあるとはな!」
レオナは興奮している様だ。
「もう能書きは入りません!皆殺しです!さっさと殺しますよ!」
不味いっ幾ら魔王を弱体化させても他の軍勢がいるんだった!
どうにかする方法はないのか!?
するとその疑問に答える様に頭に『ヴレイヴ・フォール』と浮かんできた。
何故だかこれを使えば良いと直感で感じたのだ。
迷っている暇は無い。俺はヴレイヴ・フォールを発動させた。
その直後世界が白で塗りつぶされた。
音も無く、ただ真っ白と。
そして直ぐに世界は元の色合いを取り戻したが、そこには一つだけ違う点があった。
今まで地平線から続いていた魔王軍が全て消え去っていたのだ。
異形のモンスターも貪食王スースーも全てが。
「Oh……」
俺はこう言うしかなかった。
スースー「イケメンだと思った?残念!豚でした!」




