第十二話 夜這いだよ!ユート君!
「ははは!まさかあれ程の力とは思わなかったぞ!」
「そ、そうか」
「うむ!私ですら危うく意識を失うところであった!」
「そ、そうか」
「大好きだぞ!ユート!」
「そ、そうか」
「む〜どうしたのだユート?さっきから私を見ずに、そうかとしか言っていないぞ?」
「そ、それはお前がそんな格好をしているからだろ!!」
「そんな格好?何か問題があるのか?」
「大ありだよ!お前全裸だろ!!!」
レオナは一糸まとわぬ姿で小首をかしげた。
どうしてレオナがこんな格好をしているか、俺達が今どんな状況かを説明するために少しだけ時間は遡る。
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俺が魔力を解放した直後、レオナ以外のアンジュさんやマールトンさんを含む訓練場にいた人達は気絶してしまった。
直ぐに回復はしたのだが魔力解放しただけで人が気絶するなど前列が無いらしく、兵士達は信じられないと口々に言っており、俺を見る視線が畏怖を込められたものに変わってしまった気がする。
……レオナとアンジュさんはうっとりとしていたが。
こうして何だかあっさりと俺の『力は』認められる事となる。
レオナ直々に力を貸すことを頼まれた俺は領主宅の上等な客室に案内された。
幾つか高そうな美術品が見受けられる。
ニャジルさんの家やここの備品などを見るとこの世界は歴史で習った外国の中世的な感じがするな。
ふかふかなベッドに腰かけ、今日一日にあった事を思い返す。
レオナにいきなり子作りをせまわれたり、アンジュさんに一目惚れされたり、魔力などについて教わって実戦してみたら皆気絶したり……
そういえば気絶の件はあの後の調べで、どうやら街中で発生していたらしい。
まさか、そんな範囲で起きていたとは。
もはや兵器レベルじゃないかと思う。
これ以上被害は無いよね?まさかね?
この兵器レベルの魔力もだが、ゴッド・スキルについても謎のままだ。
チート過ぎる気がするこの能力、レオナ達に教えたのだがアンジュさん含め誰も聞いた事が無かったようである。
調べてもらえる事になったのだが如何せん時間は必要とのことだった。
一番の謎といえば俺がこの世界に来た理由だ。全く心当たりは無い。まぁ来てしまったものは仕方がないとも思う。過ぎ去った事よりもこれからどうするかを考えなきゃな。
「この世界に伝わる話では異世界人は元の世界に帰れた人はいなかったんだよなぁ」
元の世界には園の皆がいる。いきなりの別れだった。皆悲しむかも知れないが園長が何とかなだめてくれるだろう。俺も帰る方法を探すが、見つからなかったらこの世界で暮らすのも案外良いかも知れないな。
ここアルカディアに来てから何だか懐かしい気持ちがするし。
その様な事を考えているといつの間にか夜が更けてしまっていた。
この世界の夜の灯りは蝋燭が基本的なようで使いすぎると勿体無いと思い、もうそろそろ寝るかと準備をし始めた時、扉がコンコンとなり俺は慌てて扉を開けると、そこには寝間着であろう服を着たレオナが一人立っていた。
「どうかしたのか、レオナ?」
「あのな、ユート」
「ん?」
「よ、夜這いに来たのだ!」
どうやら俺の耳がおかしくなってしまった様だ。
OKもう一度聞き直すとしよう。
「どうかしたのか、レオナ?」
「だっだからっ夜這いだ!」
「ブーーーー!!」
俺は盛大に吹き出した。
ははっ夜這いだって?夜這いってあれだろ?夜に好きな人の所に行って、大人が色々なエロエロ行為をする事だろ。
「……部屋に入れてもらえるか?」
「あっはい……」
何だか敬語になっちゃったよ!
いやいや仕方が無いだろう。だってよお姫様が夜這いに来るなんて聞いた事があるか?
それなんてエロゲ?状態だよ!
「では失礼する」
そう言いレオナは俺の部屋に入りベッドに腰掛けた。
「まさかこんな夜遅くまで起きているとは思わなかったぞ」
「ああ、考えごとをしていたからな」
「そうか、それは邪魔してしまったな」
「そろそろ寝ようかと思っていたとこだから大丈夫だけど……レオナ、さっきは夜這いに来たとか言ったけどあれはどういう意味なんだ?」
「そのままの意味だぞ。私はユートと子作りをしに来たのだ」
照れながら答えるレオナ。
「夜這いなんて初めてだからな、とても緊張してるぞ。胸がドキドキだ」
「い、いや、そういう事は好きな人どうしでやるべきであってだな。それに俺達は今日会ったばかりだろ?」
「確かに今日会ったばかりだが私はユートの事が既に大好きだ。理屈や倫理などではもうどうしようもない程にな。……ユートは私の事が嫌いか?」
「そんな事は、無いけど……」
当たり前だろう。こんな美人に猛烈アプローチを受けて嫌な男なんているのか?
こんなに好き好き言われて俺もレオナに好意を持ちはじめているしな。
うううっ男の悲しい性。
「では問題無いではないな!」
ニコニコになるレオナ。
守りたい、この笑顔。
じゃねーよ!流されるな俺!!
「い、いやしかしだな……」
俺はその後の言葉を続けられなかった。
レオナが俺の手を引いて俺をベッドに押し倒したからだ。そしてレオナは服を脱ぎ捨て、俺に抱きついてくる。
「うふふ幸せだ〜」
えっ!?俺純潔失っちゃうの!?
しかしレオナはそれ以上何かをしてくるわけでも無かった。
「しかし実を言うと、私は夜這いはこの後どうすれば良いのか分からないのだ」
「へ?」
「私はこの手の知識は全然無くてな。今まで興味もなくて教育係の話を聞いてこなかったのだ。実を言うと子どももどうすればできるのかも知らないのだ……だからユートに教えてほしい!」
……何だろう凄く安心してる俺と凄く残念がっている俺がいる。
しかしこれは説得するチャンスだな。
「レオナ、非常に残念だが今俺はお前と子作りはできない」
「何故だ?」
「正直に言うとだな、レオナの気持ちはすげえ嬉しい。レオナみたいな美人にせまわれるなんて男の夢だと思う。けどな俺はいつまでこの世界にいるのか分からないんだ。今は帰る方法が見つかれば帰るつもりでいる。そうなればレオナとは離れることになってしまう。だから帰る前提の今は子作りするつもりは無いんだ。分かってくれるか?」
「嬉しいぞ……ユートはそんな事まで考えてくれていたのか?分かったのだっユートがこの世界で生きていく事になるまで子作りは我慢するぞ!」
よ、良かった、分かってくれたみたいだな。
……ん?けどレオナが離れる気配がないぞ?
「あれ離れないのか?」
「うむ。子作りは我慢するが、一緒に寝るとしよう!」
「け、けどな」
「イヤだぞ!一緒に寝るのだ!これは譲らないぞ!」
やめてくれ!動くな!πが当たってるから!!
「分かった、分かったから動くな!」
こうして冒頭へと繋がるのである。
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「せめて服を着てくれレオナ……」
そうじゃないとさっきの発言を取り消すはめになる。
「しかし私はいつも夜は裸で寝るのだ。それ以外では寝れなくてな」
うん、このままじゃ俺も寝れないよ。
「ユートに抱きついていると何だか落ち着くなぁ眠気がもう来たぞ」
そういうとレオナは直ぐに寝息を立てはじめた。
おい……このお姫様幸せそうな顔して寝やがって動けねぇよ。ちなみに起こしたら可哀想だからだよ?決してπが当たってるからじゃないよ?
当たり前だが、その日俺は一睡も出来ませんでした。
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翌日の早朝、とてつも無く大きな鐘の音がタルタニス中に鳴り響いた。
「魔王軍が攻めてきたぞー!!!!」




