第十五話 廃棄素材銀行
廃棄素材銀行の設計は、思ったより複雑だった。
物を貸し借りする銀行とは違い、廃棄素材を「収集・分類・分配・記録する」仕組みだ。誰かが捨てたものを受け取り、その価値を評価し、必要な人間に届ける。その全過程を透明に記録する。
カインは一週間かけて、設計の骨格を書き上げた。
仕組みは三つの柱で成り立つ。
一つ目は「受け入れ窓口」。廃棄素材を持ち込む者が、素材を届ける場所だ。ギルドの廃棄物集積所、修理屋、商人、一般市民、誰でも持ち込める。持ち込んだ素材の価値に応じて、「素材券」が発行される。
二つ目は「評価・分類部門」。持ち込まれた素材を「価値創造の眼」のような技術で評価し、分類する。最終的にはカイン以外の錬金術師にも評価の方法を体系化して教えることが目標だ。
三つ目は「分配窓口」。必要な素材を取り出したい者が、素材券を使って引き出す場所だ。素材券は市場でも流通できるようにする。廃棄素材に価格をつけることで、素材の流通を促す。
「これを動かすには、かなりの人員が要ります」
リアが設計書を読みながら言った。
「最初は小さく始める。受け入れ窓口と分配窓口を一か所にまとめた小さな拠点を一つ。評価はカインが担当し、分類と記録はリアとゴッホさんの商会のスタッフが担当する」
「それなら人員は何とかなりそうですが、場所が必要ですね」
「ゴッホさんが動いている。昨日、旧商会の倉庫の一つを借りる交渉を始めたと連絡が来た」
「倉庫ですか」
「首都の外縁部に、ゴッホさんが以前使っていた倉庫がある。今は別の業者が借りているが、来月に契約が切れるらしい。それを借り直す予定だ」
リアは設計書に目を戻した。
「素材券の仕組み、面白いですね。廃棄物を持ち込んだ人が、別の廃棄素材を引き出せるということですか」
「そうだ。例えば、使えなくなった魔道具を持ち込んだ農家が、素材券を使って土壌改良材の素材を引き出せる。あるいは素材券を市場で売って、現金を得ることもできる」
「廃棄物が通貨になる」
「価値があるものが通貨になる。廃棄物は、価値がないから廃棄物と呼ばれているだけで、本当は価値を持っているものが多い」
リアは設計書の最後のページを読み、閉じた。
「セリーヌさんとランベール卿には、話しましたか」
「これからする。ギルドとしての支援が得られれば、動きやすくなる」
「ギルドが支援してくれますか」
「ランベール卿は「ギルドが変化を取り込む方向で動きたい」と言っていた。廃棄素材銀行は、その変化の一つとして提案できる」
「うまくいくといいですね」
「うまくいくように設計する」
セリーヌへの相談は翌日行った。
設計書を渡すと、セリーヌはすぐに読み始めた。
読みながら、何度か眉を動かした。驚いた時の癖だ。
「……これ、本当に動かせると思う?」
「動かせます。最初は小さな規模から」
「素材券の仕組みが面白いわね。廃棄物に価格をつけて流通させる。これは市場の概念を変える」
「廃棄物と有価物の境界をなくすことが目的です。捨てるものと使うものを区別しない市場を作りたい」
セリーヌはしばらく設計書を見ながら考えた。
「ギルドとして支援できることがあるとすれば、二つ考えられるわ」
「聞かせてください」
「一つ目は、ギルドの廃棄物集積所を受け入れ窓口の一つとして提供すること。今まで費用をかけて処分していた廃棄物を、廃棄素材銀行に渡す形にすれば、ギルドの廃棄コストが下がる」
「それはギルドにとっても利益になりますね」
「そうよ。二つ目は、評価技術の標準化をギルドの技術体系として登録すること。カインの「価値創造の眼」は特殊すぎて他の錬金術師には真似できないけれど、廃棄素材の基本的な評価方法を体系化して文書にすれば、他の錬金術師も評価に参加できるようになる」
「それは私もやろうとしていたことです。評価技術の標準化が、廃棄素材銀行の長期的な運営を支える」
「なら、ギルドの技術委員会に提案できる。私が提案者になる」
「ありがとうございます」
「ランベール卿への提案は、私が段取りを取る。来週中に面会の場を設けるわ」
ランベールへの提案は、来週の水曜日に行われた。
場所は今度はギルド本部の執務室だった。外部取引部門の長の問題が解決し、ギルド内の空気が変わったことで、本部での面会が可能になっていた。
設計書を見たランベールは、長い時間をかけて読んだ。
読み終えてから、カインを見た。
「廃棄素材に素材券を発行して流通させる。これはギルドの枠組みを超えた話になる」
「そうです。ギルドだけではなく、市場全体の仕組みとして動かす必要があります」
「商業会議所との調整が必要になる」
「はい。ゴッホさんに商業会議所へのルートがあります」
「王城への報告も必要だ。市場の新しい仕組みを作るとなれば、国家として認識する必要がある」
「その段取りも考えています。ただし、最初は小規模な試験運用から始め、実績を作ってから正式な申請をする方が良いと思っています」
「試験運用の規模は」
「倉庫一つ、スタッフ三名から四名。月に受け入れる廃棄素材の量は、首都内の修理屋から来る分のみに限定する。三ヶ月間で実績を確認してから、拡大を検討する」
ランベールは再び設計書に目を落とした。
「……ギルドとして廃棄物集積所を窓口の一つとして提供することは、承認する。ただし、運営はあくまでゴッホ氏の商会が主体で、ギルドは支援の立場とする。ギルドが主体になると、既存の制度との整合性の問題が出てくる」
「それで構いません」
「技術評価の標準化については、セリーヌから正式な提案書を出してもらえれば、技術委員会で審議する」
「セリーヌさんに伝えます」
「一つ聞く。この仕組みが動いた先に、お前は何を見ている」
カインは少し考えた。
「廃棄素材銀行が機能すれば、廃棄物の価値が可視化されます。価値が可視化されれば、価値を生む活動が増えます。廃棄物が減り、資源が循環する。その結果として、市場が豊かになる」
「大きな話だ」
「一歩ずつ進めます。最初の一歩が、来月の試験運用です」
ランベールは頷いた。
「わかった。支援する」
来月の試験運用開始に向けて、準備が動き出した。
ゴッホが倉庫の借り直し契約を完了させた。
首都の外縁部にある、石造りの二階建ての倉庫だ。広さは十分にあり、受け入れ窓口、分類保管スペース、分配窓口を全て収容できる。
ゴッホは元の商会のスタッフ二名を呼び戻した。どちらも長年ゴッホの商会で働いていた経験者で、ゴッホが詐欺で破産した後も、連絡を取り続けていた人間だ。
「あの二人は、私が信頼できる人間だ。商会が潰れた後も、悪口を言うでもなく、ただ「またいつかやれたら手伝います」と言ってくれていた」
ゴッホはそう言いながら、懐かしそうな顔をした。
「長い間、待たせてしまった」
「その分、しっかりとした形で始めればいい」
「そうする」
倉庫の内部の整備は、一週間かかった。
受け入れ窓口には、廃棄素材を受け取るためのテーブルと、素材券を発行するための帳簿と印鑑を置いた。
分類保管スペースは、素材の種類ごとに棚を分け、ラベルを付けた。金属系、ガラス系、有機素材系、魔道具部品系の四つのカテゴリーに大分類し、その中でさらに細かく分ける。
分配窓口は、受け入れ窓口と同じテーブルを使う。素材券と引き換えに素材を渡す仕組みだ。
「意外と早くできましたね」
リアが倉庫の中を見渡しながら言った。
「仕組みは単純にした。複雑にすると使いにくくなる」
「素材券の印刷は?」
「ゴッホさんの商会の印を押した紙券で始める。最初は紙で十分だ」
「将来的には?」
「より偽造しにくい形に変えていく。しかしそれは実績ができてからの話だ」
リアは倉庫の中央に立ち、全体を見渡した。
「始まりますね、本当に」
「ああ」
「どんな人が来ると思いますか」
「最初は修理屋からの廃棄品が中心だ。ゴッホさんが事前に話を通してくれている。来週には最初の持ち込みが来る予定だ」
「一般の市民も来ますか」
「来るかもしれない。壊れた魔道具を「修理屋で直せないと言われた」という市民が、ここに持ち込んでくれれば、それを素材として評価して素材券を発行できる」
「それで素材券を持って、別の素材を手に入れる」
「あるいは、素材券そのものを必要な物と交換する。市場で通用するようになれば、廃棄物を持ち込むだけで生活の役に立つ何かが得られることになる」
リアは少し考えた。
「下層区画の人たちにとって、大事な仕組みになりますね」
「それが目標の一つだ」
「下層区画に告知しますか」
「来週、ゴッホさんが告知板を立てる予定だ。下層区画の路地に何か所か、廃棄素材銀行の開設を知らせる板を立てる」
「私も手伝います」
「頼む」
試験運用が始まる三日前、セリーヌが倉庫に来た。
技術評価の標準化に向けた、最初の打ち合わせのためだ。
「標準化の方針を確認したいわ」
「はい」
「「価値創造の眼」を持たない錬金術師が廃棄素材を評価するには、どんな手順が必要ですか」
カインは考えながら答えた。
「まず、素材の外観と重量から基本的な分類をする。次に、簡単な物理的試験で素材の特性を確認する。例えば、金属なら導電性の確認、ガラスなら透過率の確認。それから、術式反応試験で魔力との相互作用を確認する」
「その手順を文書化したものが、評価マニュアルになるわけね」
「そうです。私が「価値創造の眼」で瞬時に分かることを、手順に落とし込む。精度は私の評価より低くなるが、誰でもできる形になる」
「精度はどれくらいになりますか」
「完璧ではない。しかし「廃棄物か有価物かの大まかな判別」は、七割から八割の精度でできると思う。詳細な価値の評価は、最終的に私か、技術が成熟した後の上位の錬金術師が確認する」
セリーヌは頷いた。
「つまり、一次評価と二次評価に分ける仕組みね」
「正確にはそうなります。一次評価でふるいにかけて、有望なものを二次評価で精密に確認する」
「技術委員会への提案書に、そのように記載する。来週中に出す予定よ」
「ありがとうございます」
セリーヌは倉庫の中を見渡した。
「……地味な場所ね」
「始まりはそういうものです」
「でも、ここから大きなものが動き始める気がする」
「そうなるよう、進める」
セリーヌは少し笑った。
「一つ聞いていいかしら」
「どうぞ」
「あなたは将来的に、この廃棄素材銀行をどこまで広げるつもり?」
「首都から始めて、王国内の主要都市に広げる。最終的には、大陸の流通ネットワークと繋げる」
「大陸規模、か」
「しかしそれは、かなり先の話です。まず来週の試験運用を成功させることが先だ」
「優先順位が正しいわね」
セリーヌは倉庫を出た。
カインはその後ろ姿を見送りながら、設計書の続きを書き始めた。
試験運用の初日。
倉庫の扉を開けた朝、最初の持ち込みはゴッホが事前に話を通していた修理屋のバーラから来た。
バーラは五十代の小柄な男で、商売人の顔をしている。廃棄品を詰めた麻袋を二つ、台車に乗せて持ってきた。
「これ、全部直せなかったものです。普段は廃棄費用を払って処分していましたが、こちらで引き取ってもらえると聞いて」
「ありがとうございます。中を確認させてください」
カインは麻袋の中を確認した。
「価値創造の眼」が一つずつに反応する。
魔力灯の残骸が七個。うち五個は修復可能。
自動鍵の部品が三個。うち二個は感応金属が回収できる。
温度調節器の残骸が四個。うち三個は医療用体温計の素材になれる。
その他の小物が十一個。うち六個に何らかの再利用可能な成分がある。
「受け入れられるものが二十個ありました。素材券を発行します」
カインはゴッホのスタッフに、素材の種類と数量を伝えた。スタッフが帳簿に記録し、素材券を発行した。
バーラは素材券を受け取り、しげしげと見た。
「これで、他の素材が手に入るんですか」
「はい。この倉庫に在庫が揃えば、素材券で引き出せます。あるいは市場で売ることもできます」
「市場で売る、というのはどこでですか」
「今のところは、ゴッホ氏の商会が買い取り窓口になっています。将来的には、首都の市場全体で流通するようにしたい」
バーラは頷き、満足そうな顔で帰っていった。
その後、午前中だけで持ち込みが三件来た。
修理屋が二件、一般の市民が一件。
一般市民は、四十代の女性だった。壊れた魔力灯を一個持ってきた。
「夫が買った魔力灯が壊れてしまって。修理屋に持っていったら「直せない」と言われて、どうしようかと思っていたら、この場所を知って」
「確認します」
カインは魔力灯を「価値創造の眼」で確認した。
修復可能な品だった。
「これは修復できます。今日は素材として受け入れて素材券を発行しますが、修復品として受け取りたいということであれば、別の形で対応できます」
女性は目を丸くした。
「修復、できるんですか」
「修復して、市場で販売しています。修復品を別途購入する形になりますが、新品より安価です」
「どれくらいで買えますか」
「修復品は、新品の半値以下で提供しています」
女性はしばらく考えた。
「素材券をもらって、それで修復品を買うことはできますか」
「できます」
女性の顔が明るくなった。
「それにします」
手続きを終えた女性は、素材券を大切そうにしまいながら帰っていった。
リアが隣でそっと言った。
「こういう人が来てくれると、やっていて良かったと思います」
「ああ」
「この人の魔力灯が、また家を照らすようになるんですね」
「そうなる」
午後にも持ち込みが二件来た。
初日の合計で、持ち込みは六件。受け入れた素材の数は、合計で三十七点。
記録をまとめながら、ゴッホが言った。
「上々の出だしだ」
「予想より多かった」
「告知板の効果だろう。下層区画から来た人間が二人いた。廃棄物を処分する場所が近所にできた、という認識で来たようだが、素材券の仕組みを説明したら興味を持っていた」
「来週以降も増えるか」
「口コミが広まれば増える。最初の一週間が肝心だ」
翌日、セリーヌがギルドで技術委員会の場を設けてくれた。
カインが廃棄素材の評価技術の標準化について説明し、評価マニュアルの骨格を示した。
委員会のメンバーは五名で、セリーヌを含む上位錬金術師だ。
説明を聞きながら、委員の一人が手を上げた。
「評価マニュアルに従って評価した場合、カイン・ロウ氏の評価と同等の結果が得られると保証できますか」
「保証はできません。「価値創造の眼」は私固有の能力です。マニュアルに基づく評価は、私の評価より精度が低くなります。ただし「廃棄物か有価物かの大まかな識別」は、マニュアルで七割から八割の精度が出ます」
「七割から八割という数字の根拠は」
「今日持参した試験データです。私の評価とマニュアルによる評価を同じ素材に対して行い、一致率を計算しました」
カインは試験データの一覧を渡した。
委員たちがそれを確認した。
「……一致率が八十三パーセントですね」
「そうです。これはまだ初期データで、マニュアルを改良すれば精度は上がります」
「八十三パーセントの精度で廃棄素材の識別ができれば、廃棄素材銀行の一次評価として実用になります」
委員の一人が言った。賛同の様子だ。
別の委員が口を開いた。
「廃棄素材の評価を行う錬金術師の教育は、どう行いますか」
「評価マニュアルをギルドの研修教材として採用していただければ、研修の場でトレーニングできます。最初の半年は、実際の廃棄素材銀行で実地研修を行う形を考えています」
「実地研修の受け入れは、廃棄素材銀行側が行うということですか」
「そうです。ギルドと廃棄素材銀行の協力体制として機能させたい」
委員たちは互いに意見を交換した。
セリーヌが最後にまとめた。
「評価マニュアルのギルド技術体系への登録と、廃棄素材銀行との研修協力体制の構築について、技術委員会として前向きに検討することを確認します。正式な決定は来週の定例会議で行います」
「ありがとうございます」
定例会議での正式承認は、一週間後に来た。
「廃棄素材評価マニュアルをギルド公式技術文書として登録することを承認する。廃棄素材銀行との研修協力体制については、試験運用の三ヶ月後に改めて状況を確認した上で決定する」
全会一致ではなかったが、過半数の承認を得た。
技術管理部門の長は、賛成も反対もしなかった。棄権だった。
それで十分だった。
セリーヌからの連絡を受けて、カインは研究室で静かに頷いた。
リアが「どうでしたか」という目で見ていた。
「承認されました」
「良かった」
「技術管理部門の長は棄権でした」
「それで十分ですね」
「ああ。反対されなければ動ける」
リアは窓の外を見た。春の終わりの首都が、穏やかな光の中に広がっていた。
「三ヶ月の試験運用、うまくいきますか」
「うまくいくように動く」
「毎回その答えですね」
「毎回そう思っているから」
リアは少し笑った。
「わかりました。一緒に動きます」
「頼む」
「差し入れ、今日は何が良いですか」
カインは少し考えた。
「何でも良い。しかし、昨日のスープは美味しかった」
リアが目を丸くした。
「覚えてたんですか」
「覚えている。前世ではこういうことを気にしなかったが、今世では気にするようになった」
「どういう変化ですか」
「良い変化だと思う」
リアは少し顔が赤くなった。
「……また差し入れます」
「ありがとう」
リアは出ていった。
カインは設計書の続きに向かった。
三ヶ月の試験運用で何を達成すべきか。素材券の流通量、持ち込み件数、評価精度の向上、研修錬金術師の育成。全部を数字として設計する。
ペンが走る。
窓の外では、首都の昼下がりが続いていた。
廃棄素材銀行の扉が、今日も開いている。
誰かの廃棄物が、誰かの価値になっている。
それが、始まっていた。
その夜、ゴッホから一通の手紙が来た。
「今日の持ち込みは十一件。累計四十八件。素材券が市場で初めて使われた。買い手は下層区画の薬師で、ハーブの廃棄茎を持ち込んで、素材券で水晶の破片を引き出した。その破片で浄水装置の補修をしたとのこと。廃棄物が、別の廃棄物から生まれた浄水装置の補修に使われた。これが、俺たちが作ろうとしていたものだ」
カインはその手紙を読み、しばらく動かなかった。
ハーブの廃棄茎と、水晶の破片。
どちらも誰かが「価値なし」として捨てたものだ。
それが廃棄素材銀行を通じて繋がり、下層区画の薬師の浄水装置が直った。
「これが、俺たちが作ろうとしていたものだ」
ゴッホの言葉が、そのまま答えだった。
カインは手紙を机の引き出しに仕舞った。
大切に取っておく手紙だ。
始まったばかりの仕組みが、最初の一歩を踏み出した。
それを証明する、最初の記録として。
カインは設計書の最後のページを開き、今日の日付を書いた。
「廃棄素材銀行、試験運用開始。第一日目。持ち込み六件、翌日十一件。累計四十八件。素材券の初回流通確認」
それだけ書いて、ペンを置いた。
窓の外は、すっかり夜になっていた。
首都の灯りが遠くに見える。
その灯りの中のいくつかが、廃棄素材から修復した魔力灯かもしれない。
廃棄素材銀行で手に入れた素材から作られた照明具かもしれない。
わからない。
しかし、その可能性が、今日から広がった。
それが今日という日の意味だった。
―――― 第十五話 了 ――――




