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『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―  作者: 設楽理沙


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13 ◇その後の彼ら

13 ◇その後の彼ら


 文世と共に大学の4年間を共に過ごした3人の男子学生たちは、現在、文世の父親がCEOとして在籍している関連会社で働いている。


──【石田雅人】の場合──



 父親が病気がちで、生活費などは母親1人のか細(弱)い肩にかかっているのが石田雅人の高校3年間の生活だった。


 そして石田には5つ下の妹がひとりいた。


 石田は容姿端麗な上、進学校の中でも常に学年10位以内をキープするほど学業でも秀でていた。


 ひと昔前なら、学業が秀でていればなんとか大学へ行けたかもしれないが今や昔と違い国公立でも、とにかく授業料がかかる。


 そのため、とても国立だとて、大学に進学できるような立場にはない、ということを彼自身が骨身に染みて理解していた。


 昼間の大学進学を諦めてはいたものの、就職をしたあと、夜学や通信で大学に行ける道が残されているため、勉強だけは手を抜かずいつかチャンスを掴む

ために石田は3年間一生けん命勉強に勤しんだ。


 そしていよいよ就職のシーズンが到来。


 どこを受けようかと頭を悩ましていた折に、石田はある人物から声を掛けられる。


 それは高校のある最寄り駅にひとりで向かっていたときのこと。

 後ろから肩を叩かれ、声を掛けられた。


「驚かせてすまない。私は前島幸助という者です」

 そう言うやいなや、名刺を渡された。


 声を掛けられた瞬間、相手のことを怪しく思い訝しんだ石田であったが、

名刺を見れば誰もが知っている大手外資の社名と役職付の前島の名前が書かれており──。


 疑えばキリがなく、もしも名刺が本物であれば、相手がどのような社会的地位のある人物であるか、高校生の石田にも即座に理解できた。


 だが、前島の自己紹介に対してどのように対応するのが正解なのか、まだ

高校も卒業していない未熟で若い石田に分かる由もなかった。


 だから、ただ、石田は軽くフラットな表情をその顔に貼り付け、少し頷いて見せるのが精一杯だった。

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