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『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―  作者: 設楽理沙


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12/22

12 ◇夫の言動が怪しい

12 



 確か、私たち結婚して11年目ぐらいになるのかしら。

 3年目の浮気くらい、と歌にもあるけれど……。


 私たちの結婚生活は、それよりはとうに7・8年が過ぎていて安定期に入っている。


 共働きで生活費は半々家計に入れていて、夫は、給与の多くを他の家庭の既婚の男たちよりは、遥かに自分の好きなように使える。


 そのため夫は、|傍から見れば《独身女性たちから見れば》さぞかし手に入れたくなるようなハイスペックな男性(ひと)に映ることだろう。


 小学生の息子がいようとも、男は一旦会社に出れば独身の企業戦士と同じだ。


 ううん、余裕がある分、独身者よりも女性たちからは素敵に見えることだろう。


 年齢も30代といえば男盛り。

 女たちが放ってはおかないだろうとは思っていたが……。


 ずっと危惧はしていた。

 でも信じていたかった。

 だから、私はこれまでスマホを見たりしたこともなかった。



 しかし、先日の「いつものところで待ってるから」というLINEは

とても痛いものだった。女の感が囁く。夫には女がいると。


 ただ、今後その女との付き合い、接触を一切やめるならこれまでのことは

見逃すつもりでいた。ひょお~っ、私ったら太っ腹ぁ~!


 そのためにあの日、まったく頓着してない風に気がつかない振りをするのか、

それとも釘を刺すのか、私は悩んだのだ。


 そして、悩んだ末許すことを前提に、気がついてないこともないんだぞ~と、

釘を刺したのだ(つもり)


 刺さったかどうかは、今後の成り行きでわかるだろうと──

私はしばらく夫の動向を見ることにした。


 24時を過ぎて帰ってくることはないけれど……なんとなく怪しい。

 悲しいけれど、そう女の感が働く。



          ◇ ◇ ◇ ◇



 夫の奥田貴史は、同じく父親の会社・日常生活で使用する製品を製造・販売する消費財メーカー、ヘアタリー・ジャパンで勤務していた。


 父親の会社に変わりはないが、文世の勤務する会社とは別であった。


 そして文世が大学生だった時に、ずっと4年間側にいてサポートしてくれた

あの時の男子学生たちは、やはり父親の会社で主な事業が パーソナルケア、ホームケアの製品開発、技術サービス、購買・物流及び製品供給計画などからなるヘアタリー・ジャパン・サービス株式会社で勤務している。


 夫の貴史とは、別会社である。

 文世の父親は3つの会社を経営していた。


 彼らは、文世の父親である永堀昭一の信頼も厚く、父親の人を見抜く力には確かなものがあった。


          ◇ ◇ ◇ ◇


一方――

父親からの推しで結婚した相手、奥田貴史は10代の頃から女子にモテモテで

付き合う彼女が途切れたことのない男であった。



 愛情深く女子にはやさしい……。

 そんな彼には、ただひとつだけ、欠点があった。


 すぐに(女性)好きになること。

 好きになると一途になり恋人がいても恋人とは別に付き合いたくなる。


 好きな相手を1人にしぼれないのだ。


 2人と上手くやりたいと思うので、結局二股などということになる。

 移り気で新しいもの好きなのであった。


 娘に夫として勧めた奥田が、こんな困った気質を内に持っていたことを見抜けなかったのは、永堀昭一、一生の不覚であったかもしれない。


 娘のボディガードを決めた人選はピカイチだったのに、なんということ……。

 決して外してはならない愛娘の相手をミスってしまうとは。


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