14 ◇石田雅人
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「ちょっと、お話させてもらいたいことがありまして。
よろしければカフェでお話を聞いていただけないでしょうか」
石田は躊躇した。
それを瞬時にキャッチした前島が言った。
「話の内容は、石田くんをスカウトしたいということ。
依頼内容はそんなに難しくないと思います。
対価はずばり大学4年間の学費と生活費になります。
如何ですか? 狐につままれたように感じるのも無理はありません。
ですが、一度話を聞いてみるくらいには価値のあるお話だと思いますが……」
「わかりました。伺います」
こうして石田は前島に付いて行った。
この前島という社員は、CEOの永堀氏からの依頼で自分に破格の高待遇の話を
持ってきたのだと説明してくれた。
そして自分の他にあと2名、スカウト予定だとも聞いた。
その依頼というのは、永堀氏の娘が通う大学に入り、4年間それとなく娘を
見守ってほしいというものだった。
優秀な石田にレベルを落として大学に通ってもらう代わりに、卒業後は
その外資のヘアタリー・ジャパン株式会社への入社切符があるというものだった。
勿論他の学生と一緒に表向き試験や面接はあるが、例えば体調が悪くて欠席、試験の点が上手く取れない、面接で上手く話せないなどのようにアクシデントに見舞われても採用は確定しているということ。
なんなら、何かの病気で長期療養になっても石田の復帰を気長に待ってくれるという特典もついていて、彼らの申し出は大学進学を諦めていた石田にとってまさに天からの恩寵といえた。
そして、社内で真面目に仕事に邁進していれば他の社員よりは目を掛けてもらえ、昇給など早めに後押ししてくれるという高待遇な話の内容だった。
娘を4年間見守ってくれれば、その先の長い人生安泰ですよ、というものだったのだ。
自分が大手外資に入れば、妹だって大学にやってやれる。
母親だって今のキツイ仕事から解放してやれる。
石田がこの話を受けない理由がない。
石田はその場で前島の提案を受け入れた。
こんな風にして石田は文世の通う大学に入学したのである。
◇ ◇ ◇ ◇
自分と同じように入学した柳井純平や北野宏も、同様の形で将来を約束されていた。
3人ともそれなりに容姿に秀でており、学業も優秀であったこと……そして
経済的事情で大学へ進学するのが難しい環境にあるという類似点が彼らにはあった。
そして──
3人には、この先の長い人生を共に同じ会社の戦士となり働くという目標があったため、卒業する頃には熱い友情で結ばれていた。




