3話 異常は突然
「あの、皆さんかっこいいとか羨ましいとか言ってくれるのは嬉しいですけど結構不便ですからね?」
「そうなの?そういえばコウから能力に関してあんまり聞いたこと無かったわね」
「確かに、私も気になります!」
「んじゃ俺も聞くかね」
「あんたは索敵でもしときなさいよ」
「扱いが酷くねえかなぁ?!もうすぐ30だぜ?優しくしてくれ」
「好きにしなさいおっさん」
「もう二人共イチャつかないでください!コウくんの話聞けないじゃないですか」
「…後で覚えときなさいよ」
『わくわくですな』
『めっちゃ気になる』
『不便なんか…切り替える感じで使いやすそうなのに』
『静かにしててな、おっさん』
『リーダー強く生きて…』
『澪さんマジギレで草』
「もういいですかね?質量を付与するって言ったと思うんですけど、皆さんの能力って基本的に自分に影響がないと思うんですよ」
「まぁ確かに魔力を消費するくらいね」
「そうですね、出力をあげると流石に温度とか影響出ますけど」
『せやね』
『特に影響出るとか聞かないな』
「なんですけど自分は文字通り付与するので、どんなに付与する質量を小さくしても絶対に影響が出るんですよね。若干体が重く感じたり、筋肉がちょっと軋んだりします。」
「えっ、大丈夫なのそれ?」
「よくそれで前衛なんてやりますね」
『結構影響あって笑えない』
『普通に動いてるように見えるけどな』
『流石に分からないような差なんじゃないかな』
「あ、今コメントした方正解です。そこまで大きくしなければ影響も最小限なんですよ。基本的に影響なんて出ないですし、違和感がちょっとあるな程度で怪我とかはしません。ただ質量を大きくすれば動きは遅くなりますし、大きくしすぎると体が耐えられなくなって怪我するとかはあると思います。やったことは無いですけど」
「使いづらそうね」
「そのお陰であのパワーなんですね」
「そうですね、身体強化を使えば基本ごまかせますから」
「まだ成長期だし、無理に使わなくていいからな」
「そうね、体が壊れちゃったらもったいないし少しずつ慣らしていけばいいわよ」
『ほえー』
『バカにはしんどいぜ』
『そんな使いづらい能力でもうBランクなら尚更何もんなんだよ』
『マジでそれ思った』
『バケモンが更にバケモンになった』
『オークぶっ飛ばせるくらいだもんなぁ…え?全力じゃないんですか?』
『実際体は資本だから慎重に動くのは大切』
『たまにはリーダーらしいこと言えるじゃねえか…』
「いや心配してくれてますけど、皆さんと組む前までは1人でしたし、多少体に痛みが出る程度までは使ってましたよ?」
「え?」
「そりゃそうですよ、じゃなきゃBなんでとてもじゃないですけど無理です」
「ソロだったんですか?」
「そうですよ、パーティ組んでたんですけどね────ちょっと事情があって1人に」
「あー…、そうなんだ」
「だから俺の誘いにすぐ頷いてくれたのか」
「自分の限界は自分がいちばんよく分かりますから。あのまま行っててもすぐ壁に当たってたと思います」
『1人だったんか』
『そりゃいい動きするわけだ』
『よくソロでBまでいったな』
『正直実力があるならソロの方が評価は高くなる。一人で帰ってこれる実力があるわけだから、パーティよりもランクは上がりやすい』
『基本的には自殺行為になりかねないから皆はパーティ組もうね』
『そもそもソロがほとんどいないんですが』
『剣ジジイがいるじゃん』
『日本最強格を引き合いに出さないでもろて』
『あのジジイはなぁ…強すぎるっぴ』
『老体でよくあそこまでいったよ…』
『1人になったってことは…』
『深堀すんな』
『そこに触れるのはNG』
『そこは気になっても聞いちゃダメなんやで』
『すまん』
『謝れるのはいいこと、これから気をつけてな』
「────大丈夫だから安心してね」
「にしても仁さんか、1回会ってみたいわね」
「日本最強って謳われてる方ですよね!お手合わせしてみたいです」
――――桐里仁、御年54歳にして日本ダンジョン探索者の頂点に最も近い男。
「ほんとに心配になるレベルだわ、あんたって」
「さすがにそれは俺でも引きますよ、詩織さん」
「Bランクだからな?俺たち。あんま喧嘩売るような発言は慎むように」
「はい、すみません」
「最強格って呼ばれてる方たちに会ってみたい気持ちは分かりますけどね」
「俺は会ったことあるけどな」
「「「え?」」」
「ん?なんだよ」
『は?』
『なんでお前やねん』
『やはりこの男は凄いのか』
「いや、協会に呼ばれた時にちょっとあって会話した程度だよ」
「いや、あんたの方が先にあってるっていうのが癪にさわるわ」
「なんでだよ!?」
『不憫が似合う』
『でも澪ちゃんの気持ちわかる』
「なんか話してるだけだと一般人って感じだけど、オーラが凄かったな。強者感があった」
「やっぱ凄いのね、他の方にも会ってみたいわ」
「配信とかされてないですよね、見たことないです」
『確かにやってない』
『おじいちゃんだから仕方ない』
「私も見た事ないわね、コメントもやってないって」
「残念です」
「雑談もここまでにして先に進むか」
「了解」
「「はい」」
「降りてすぐモンスターがいるから気をつけろ」
「何体かわかる?」
「いやわからん、でも多いぞ」
「へぇ、気をつけた方が良さそうね」
「まぁここから中層ですから気合い入れていきましょう!」
「ですね」
『今日一真剣』
『まぁ中層入るからな』
『そんな違うもんなん?』
『最初はそこまで変わらないけど、進む事にだんだん強くなってく』
『感謝』
『有能ニキが多い』
『まぁBランクならそこまで苦戦しないし深層手前までなら攻略は出来るはずだよ』
『それにこのパーティはBじゃないみたいなとこあるから』
『むしろそれしかないんだよなぁ…』
『モンスターの数が増えたり単純に強くなるんだよな…ここじゃ心配する必要ないだろうけど』
『怪我しなければそれでいいよ』
「よしいくぞ!」
リーダーの合図を元に階段を下っていく。
ダンジョン11階、ここから中層という区域に入る。
先程の忠告通り、降りてすぐに狼型のモンスターがいた。
「あれは…グレイファングですね」
「群れで行動する習性はあるけど…」
「数が多すぎますね、どうします?」
「数が多すぎて正確に探知できなかったか…」
『多すぎだろ』
『え、これやばくね』
『明らかに異常ですやん』
『なんかあったんかな』
『特に速報とかは入ってない』
『でも普通5.6体の群れだけど、今回は15体以上いるぞ』
「奥で何かあったかもな…先に進むためにも倒すべきだな」
こういう異常事態は偶にだが発生する。
ダンジョン全体のモンスターの数が増えたり、群れが大きくなったり、個体が強くなったり様々だ。
でもなんだろうか…今回はそれだけじゃない気がする。
(あれ?俺こんな汗かいてたんだ…)
ここに降りてきてから体がおかしい
冷や汗が止まらない
「詩織、頼んでもいいか?」
「任せてください!行きます!グレイシアブリザード」
(相変わらずすごい威力だな)
魔法を唱えた直後狼達はこちらに歩み寄ることもできずに氷像となった。
(俺なら全部倒すのに3分はかかるぞ)
「流石だ、状況を確認したい周りの警戒を怠らずに進もう」
『いや、マジで強いな』
『あれ瞬殺かよ』
『Bマ?』
『ほんまにランク詐欺もいいとこよ』
『まぁこの人達なりの優しさだからね、仕方ないね』
『急にかっこよくなられるとギャップが凄い』
「リーダー、1度協会に連絡を入れるべきだと思うわ」
「私もそう思います。少なからず原因がわかるまでは中層に規制をかけるべきかと」
「そうだな、1回連絡を入れようか。とりあえずこのダンジョンに潜っている他のパーティがいるかどうかを確認したい。周りの────っ、コウ大丈夫か?すごい汗だぞ」
「ホントだ、顔真っ青よ?体調悪い?」
「お水飲みますか?」
「いえ、大丈夫です。たださっきからなんか体が変で」
「うーん、受け答えも特に違和感はないし熱も無さそうよね…」
澪さんの手が額に触れるが、正直そんなことに反応している余裕がない。
「高校生ですし…無理をさせるべきじゃないと思います。1度帰還させるべきかと」
「でもそうしたらここの調査は2人ってことになるわよ、流石に危険だわ」
「ですがこれは譲れません。未成年ですし、尚更協会に連絡を入れた方がいいと思います。増援をお願いできるかもしれません」
『うーん、冷静』
『うわ、顔白』
『コウくん静かだったしこっから見ても汗すごいぞ』
『マジで大丈夫か?一回帰ってもいいと思うけど』
『でも何かが起きてるなら調査するべきだと思う』
『それは大人がやるべきであって高校生のコウくんは帰すべきでしょ』
『どっちも間違ってないのがな』
『まぁ、連絡が最優先だし最善なのは間違いない』
『次の手考えられるしそれが一番いいと思われ』
『2人はさすがに危険だと思う』
『最低でも3人は必要』
『増援来れる人いんのかな』
『そも巻き込まれてる人もいそうよな、心配』
『なにも異常がなければいいから、頼むからこれで終わってくれ』
「よし、コウお前はやっぱり帰すべきだと俺は思う。さすがにその状態のお前さんに無理はさせられん」
「待ってください!俺別に体調悪くないです!戦えますよ!」
「まずは大丈夫なことを確認して欲しい」
「うっ、わかりました…」
「すまんな…じゃあ連絡を────プルルル
リーダーが言い切るよりも前にパーティ専用の特殊なスマホに電話がかかって来た。
ダンジョン内でも電話やメッセージが送れる素晴らしい物だ。
今の状況から協会から連絡────それはもう答えを言っているようなものだった。
「はいもしもし弘人です、丁度こちらからも連絡をしようと思っていたんですけど、急用でしょうか?」




