初女子部屋にて
「それが理想のファーストキスな訳?」
「…」
見なかった事にしたかったが静風が顔を上げた時にバチっと目が合ってしまいこんな言葉しか出てこなかった
静風はこれは練習だとか遊びでふざけてだとか冗談だとか人工呼吸器だとかヘラヘラ笑いながら何か言い訳をするかと思ったが真顔で無言だった
それが逆にこれはマジなやつだと思わざるを得なかった
確か…理想とか言ってたのは
告白→ハグ→頭撫で撫で→からのキスだったか?
この場合頭撫で撫でしか実行されてないが
寝てる隙にキスとかレイプ未遂事件の淫行サラと同じだろう
「ほれ、コレ例のやつ」
そう言って寝てる照陽の元に預かってたブツが入ってる紙袋を置いた
とにかく照陽が目を覚ますと更にややこしく面倒になりそうなので早々に用事を片付けてこの場から立ち去った
昼休みも終わり授業が始まってチラッと静風を見たがいつもと変わらない様子だった
その後も静風からも何も言って来たりも無く午後の授業も終わりいつも通り帰り支度をして教室を出た
まあまだ考えがとっ散らかってるので、この件については今は深掘りせず今後の対策など家に帰ってゆっくり考察するか…
そう思いながら靴を履き替え校門を出た時に
「セイヤ、ちょっと良い?」
そう静風に後ろから声をかけられた
○○○○○○○○○
「落ち着かねえ…」
「やっぱ女子の部屋ってソワソワする?」
「いや、女子とかそう言う問題じゃねえなコレは…」
誰にも聞かれずに話がしたいと言われ、俺の家には麻由がいるので誰もいない静風の家に行く事になった
俺は初めて静風の家…女子の部屋(照陽の部屋は女子枠に入らず)へ足を踏み入れたのだが…
カーテンはピンク、鏡が置いてある小さなテーブルには化粧品やら何か小物やらがごちゃごちゃ置いてあり鏡の周りは何か色々キラキラした物がゴテゴテ飾ってあった
ベッドは枕と上掛けはピンクのヒョウ柄で枕元には何かのキャラクターのぬいぐるみがビッシリ…
壁には色々多分アイドルとかのポスターやカレンダーやコルクボードにスナップ写真や雑誌の切り抜き等が沢山ピン留めされていた
因みに俺の書いてやったサインは見当たらなかった
「ほら、ここに有るよ!捨てて無いから」
俺の心の声が聞こえたのか、そう言ってポスターをめくってみせた
「有るな。確かに」
隠されてるのは些か遺憾だが、まあこの部屋には確かに不釣り合いかも知れない
「よくこの部屋で寝起きして勉強出来るな。気が散って目がチカチカする…枕元なんぞハウスダストで鼻炎になりそうだぞ…」
俺は近くに転がっていたハートの付いたおもちゃのステッキの様な物を手に取ってスイッチを入れたらピンクやら青やら緑やらチカチカ光出していた
「お前は魔法少女だったのか?」
「それは推し活ペンラ!」
そう言って魔法のステッキは取り上げられた
「サラやダイチ…は子供の頃に来たキリだけど、落ち着くって言ってたよ?」
「ダイチ…なあ」
そう、大地…
このままでは大地の長年の思いが報われないぞ…
「お前は…テルヒが好きなのか?」
「多分…」
「多分って何だよ…」
「だって!」
「だって?」
「キスしたいって…思ったから…」
「ふむ」
「テルヒが…誰かと仲良くしてると…胸がぎゅーって苦しくなる」
「ふむ」
それであの飴ちゃんクレクレか…
確かにあの頃は特に摩那と…
近づくために仲良くしてたからなあ
「でも…それは仲良い友達だからじゃねえか?昔から仲良いから誰か…新参者に取られるのが許せない…みたいな感じ?恋愛としての好きなのか?それは」
そう、照陽の様に…
お気に入りのおもちゃを取り戻す子供の独占欲の様な類いな気もして来た
「私もずっとそう思ってた!これはこの時期…思春期特有の気の迷いなんだって!」
「俺もそう思うな」
「でも…昔から付き合いあるダイチには…キスしたいとか思わなかった…」
ありゃー…
これはいよいよマズいぞ大地…
このままではお前のライバルが照陽になりそうだぞ…
「キスしてみてどうだった訳?何かハッキリした?」
「どうだろう…」
「確か…お前はファーストキスに理想が有ったんじゃなかったか?テルヒから聞かされてたが」
「うん…そうだね」
「告白して?思いが通じ合って?からじゃなかったか?キスは。お前は告白して思いが通じ合ったのか?」
「ううん…」
「アレはただ一方的に…寝込みを襲っただけじゃねえか?相手の気持ちも確かめずに。それじゃあサラが俺に眠剤盛って眠らせて寝込みを襲ったレイプ未遂と大して変わらんぞ?」
「うん…そうだよ…最低だよね」
「まあそこまでは言っては無いが…」
どうも照陽絡みになると俺も何だかイラついて手加減無しに論破してしまった様だ
静風は今にも泣きそうな顔をしていて、少々言い過ぎたかもと我に帰った
俺がやるべき事は静風を追い詰める事では無くて…
どうにか照陽から目を逸らさせて、大地と結ばれる
これが恐らく皆丸く収まる姿だろう
さてどうするか…
「お前は…女が好きなのか?」
そこはちゃんと確認しなければならないだろう
デリカシーだのプライバシーだの配慮などと綺麗事を言ってる余裕は今の俺には無い
オブラートに包まず無神経で空気を読めない思いやりの無い人間に振る舞ってストレートに聞く事にした
「分からない…だから榎本先生の奥さんを紹介して貰ったの」
「ふむ」
成る程、これが眞也が隠していた真相か
多分静風が自分はレズではないかと思いその手の人に相談したのだろう
「で、何か自覚とかした訳?」
「私は…女の人が好きなんじゃ無くてテルヒが好きなんだって分かった」
「ふむ…」
と言う事はこの先大地を好きになる可能性もまだ有ると言う事かも知れない
「でも…セイヤに多分って言ったのはね、テルヒと恋人になりたいって思うより…ずっと1番で居たいって思ったからなの」
「1番…」
「それに、多分告白しても断られると思うし…もしかしたら二度と友達では居られなくなるかも知れない」.
「まあ…それは…」
多分照陽なら告白されようが気にもしなさそうだが
気にもしないが多分恋人になる様な類いの好きには静風に対してはならないだろう
アイツは何だかんだとエロいからな
静風で満足できる気がしない
「それにね、奥さんの玲奈さん…の恋人の千春さんから聞いた話だと…昔高校生の時にずっと…小学生の頃から好きだった人に告白して…友達で居られなくなったって」
「ふむ…まあそうなるかもな…中々同性の友達から告白されたら普通はその後もそのまま友達を続けるのは難しいかも知れんな」
まあ照陽なら気にせず友達してそうだが…
「だよね。だから告白はする気は無いの」
「そっか」
「やっぱり私は女として…まだちゃんと身体が出来上がって無いから…テルヒに対してそんな風に思うのかも知れないし」
「ふむ…アレか…ホルモン的な奴?」
「あはは、やっぱりテルヒから聞いてるか」
「まあ…話の流れでな。聞く気は無かったが、お前が自信がないのはその所為だって話になってな」
「やっぱりセイヤはテルヒにとっては特別なんだろうなあ…何でも話せて甘えられて…」
「どうだろうな?何か俺を使って実験したりお願いすれば言う事聞くと思ってる節も有るし、甘えると言うより舐め腐ってるぞ?」
「あはは、同じ幼馴染でも…やっぱりセイヤには敵わないんだろうなあ…」
何だか…
大地のライバルが照陽となり、静風のライバルが俺になると言う面倒臭い事になって来てるぞこりゃ…
どうにか軌道修正せねば
「まあ…その事でそんなに悩んでるなら一度ちゃんと検査してみたらどうだ?近場にあるだろお前の母親も働いてる病院が」
「そうだね…私もそろそろ考えてたんだ。何か病気とか見つかったら怖いから避けてたけど…」
「まあ…多分単に人より少し遅れてるだけで何とも無いだろうがな、まだ若いしお前は女子の平均より身体能力は優れてる健康体だしな。無駄になるかもだがそれで安心すれば気楽になるだろう?」
「あはは!セイヤってお医者さんか学校の先生みたい!それも学年主任クラスの」
「はいはい、どうせ限りなくおじいちゃんに近いおじさんだと言いたいんだろ?ダイチも同じ様な事言ってたぞ」
やっぱりお前と大地は似た者同士でお似合いだな
「まあ…うん、冬休みに…調べてみる」
「そうだな。それで気持ちよく年越ししろ」
「うん、そうだね」
そして卒業式までに気の迷いだったと気づいて大地からの告白で自信も取り戻しそこで改めてファーストキスをしろ
照陽とのアレは練習だ
ノーカウントだ
多分…
星夜は初女子部屋訪問にやや食傷気味か?
(照陽は女子に含まれて無さそうです)
果たして静風は気の迷いか否か…
スッキリ卒業式を迎えられるでしょうかね?




