目的の為に
「久しぶり!元気だった?」
「お久しぶりです、急にお呼び立てしてすみません」
「ううん!セイヤくんから会いたいって連絡来てびっくりしたけど嬉しかったよ!」
「そう言って頂けて有難いです」
「最後に会ったのは舞台やってた時だから…2年前位かな?セイヤ君は今どうしてるの?」
「まあ今は学業に専念してますね」
「そうなんだねー」
「来年は高3で遂に受験生で…」
「そっかあ!もうそんな歳なんだねー。確かにまた背も伸びて随分大人びて来たもんね…本当この年頃の子は成長が早いなあ」
「キララさんは変わらないですね」
「あはは、まあ女優の端くれだから色々メンテはしてるけど大変よー」
「成る程…」
「えっと…君は…」
「あっ!俺は山崎大地ですっ!以前セイヤと楽屋に…」
「そうそう!ダイチくん!お父さんが歌手の」
「はい…」
休日大地を連れて久々にキララと会っていた
共演したあの映画では半ば強引に出演させられ公開時に興行収入やら映画の宣伝の為の雑誌撮影やら主題歌MV出演やらで不本意ながら俺もそれなりに貢献した
過去のコネクションを駆使し、諸悪の根源の北野に連絡を入れて恩着せがましくお願いしてどうにかキララと会う段取りをつけた
若者等の客が多い人気チェーン店では無い個人経営だと思われる表通りから外れた人気の少ない落ち着いたカフェで待ち合わせをした
「で、何か私と話したい事が有るんだよね?」
「はい、お願いしたい事が有りまして」
「へえ!お願い?何だろう」
「キララさんが所属してる劇団の舞台の公演がまた有りますよね?」
「うん、そうなの。よく知ってるね!」
「また観に行きたいと思ってるんですが、とても人気でチケットが入手困難だと聞きまして。どうにかキララさんの伝手で手に入れる事は出来ないでしょうか?勿論チケット代はお支払いします」
「あはは、そっか!うん、良いよ。手配してあげる」
「有難うございます」
大地に誘われてはいたが入手出来るか分からなかったので此方もコネクションを駆使して入手する事にした
「でも嬉しいなあ!舞台気に入ってくれたんだね」
「はい、とても」
「じゃあやっぱり役者を目指すのかな?」
「いえ、それはダイチが…」
「へえ!そうなんだ!」
大地には何も告げずに連れて来ていたので色々驚いたのかポカンとした顔をしていた
なので肘で小突いて正気にもどさせた
「あっ!ハイ!役者を目指して今演技のレッスンに通ってます!」
「そうなんだね!ダイチくんはイケメンだからジュノソボーイとかから行けそうだけど…若いのに真面目なんだね!」
「そうなんです、ダイチは真面目で不器用な奴で」
「ふふ、そっか」
「俺もっ!いつかはキララさんの居る劇団に入りたいと思ってます!」
「わあ!そうなんだ!楽しみだなあ!でもウチ厳しいよ?」
「はい…噂は予々…」
「あはは、よくニュースにもパワハラで取り上げられてるからなあ」
「じゃあキララさんの推しメンって事でどうにかお願いします」
「私の推しメンはセイヤくんなんだけどなあ」
「じゃあ高校卒業して大学生になったら俺を劇団に入れて下さい」
「えっ!?」
大地が驚いた顔をしていた
「わあ!じゃあやっぱり役者に!?」
「いえ…裏方で」
「裏方?」
「はい…」
その後色々話してキララと連絡先を交換して別れた
「はあ…緊張した…まさかキララさんが居るとは…」
「すまんすまん、言うとお前が断ると思ったから黙ってた」
「そりゃっ…まあ…」
「お前は親のコネを使うのも嫌がる奴だからな…」
「それは…まあ、そうだな。何か実力も無いのに息子だからってだけで芸能人になるのは…卑怯な感じもするし…」
「でもな、今回のこの舞台のチケットもな、恐らく正規のルートからだと手に入れられない可能性の方が高かったぞ?」
「まあ…そうだよな」
「俺は人に何て言われようが構わんな。使えるものは使い倒し、コネは最大限駆使する。おかげでキララとの連絡手段も手に入れたし将来の活路も見出した」
「ああ、俺まで薦めてくれて悪いな」
「まあお前があの劇団にいた方が俺も都合が良いからな」
「俺も使い倒すつもりかよ…」
「まあ気心知れた役者がいた方が勝手が良いだろう?」
「成る程な…」
「でもまだ入団できた訳じゃないしこれからだぞ?幾らコネが有ろうがちゃんと入団テストはやるだろうし実力が伴わないと幾らイケメンでも容赦なく落とされるぞ?」
「うん、その為にも…もっと頑張って稽古に励む」
「そうだな」
「でも…何か意外だった」
「何が?」
「お前の事だよ」
「そうか?」
「将来の夢もだが…お前がそんなグイグイ行く所見た事無かったから」
「まあ俺だってやる時にはやる男だって事だな。中々イケメンだろ?」
「あはは、そうだな。お前は草食を超えて何かにつけてやる気も活力も無い枯れた植物みたいな奴だと思ってたけど…」
「まあその認識は大体有ってる」
「脚本家…か」
目指すきっかけはやはり照陽の影響が大きいだろう
いつか俺も…
ただの読者で照陽の舞台の観劇者では飽き足らず俺自身が心躍る様な脚本を作り演者に演じさせたい
そう強く願う様になっていた
この俺が創り上げたごく小さな閉ざされたその世界の中では俺は創作主で有り、ある種神の領域に居る様にも思える
大地が言った様に自分から目的の為に動くのも望むのも初めてだろう
大地が演技の勉強をしているように俺ももっと色々見聞を広げないとならないだろう
目指している大学では近年の創作物だけで無く世界の文学の歴史や思想、宗教、哲学、美術史や世界の舞台芸術なども学べる
後は国内トップクラスの膨大な蔵書を所蔵する図書館も魅力が有った
志望動機には金銭面や静風の問題だけで無くそう言った理由も有った
「まあ俺はバイトとしてねじ込んで貰う予定だがな。せいぜい雑用をこなしながら虎視眈々と狙って行くさ」
「やっぱりあの劇団に魅力を感じで選んだのか?」
「まあ魅力は有るが魅力と言うより…他に知ってる所も使えそうなコネも無かったから選んだに過ぎんな」
「何だそりゃ…」
「別に舞台だろうが映画だろうがドラマだろうが何だって構わんな。使ってくれるならどこだって構わん」
「そうなんだな…」
「夢を叶える為に綺麗事もカッコよさも必要無いしそんな事言ってられないだろう?目の前に有る使えそうな物になりふり構わず無様に縋り付く。ただそれだけだ」
「そう…だよな…恥ずかしいとか常識とかおかしいとか…夢を叶えるのにそんな事言ってられないよな…」
大地は俺から目を背けてそう呟いていた
何故か俺はその姿が小さな棘の様に頭の片隅に突き刺さっていた
○○○○○○○○○○
「じゃあダイチ、金曜日にね」
「うん…」
11月も終わる頃、照陽がクラスに来て大地と話していた
聞くつもりは無かったがたまたま俺の席が後ろの出入り口の近くで照陽に廊下から呼び出された大地との会話が聞こえて来た
大地は俺に声をかける事も無く俯いて横を通り過ぎて席についていた
何だろう
なんか変だ
12月の最初の金曜日に照陽の元へ行っていた
「お前また俺の真似しただろ」
「何が?」
「志望校」
「真似たんじゃ無いもん!お父さんの母校だし色々話を聞いて決めたの!」
「はい、そうですか」
「でもまあ…この学校に行く事になったら…いよいよシズカとは離れ離れになっちゃうかな」
「まあそうだろうな。長い付き合いもこれで終わりだな」
「でも…友達な事には変わり無いし…ダイチの為にも私はシズカの近くにいない方がいいと思う」
「全く同感だな。そう言えば先週の金曜日にダイチと会ってた?」
「うん、色々ね。シズカに告白する為の話し合いや準備をね」
「ふうん」
「ダイチも私にとっては親友だからね。長年の夢を叶えて貰いたいし」
「へえ…」
何だろう
何がとは分からないが
何か変だ…
俺に刺さった小さな棘が膿んでその箇所が痛痒い様な…
そんな感じがしていた
「友達だし一応付き合ってるんだし別にダイチと仲良くしても変な事は無いでしょ?」
まるで俺の心の声を聞いたかの様な事を言っていた
何だか俺が嫉妬して詮索してる様な、してるのかもだがダルい展開になって来たので話題を変える事にした
「そう言えばダイチはキララのいる劇団に入りたいって言ってたぞ」
「へえ!そうなんだ、どこだろ?」
「ほれ、ここ」
スマホで検索してホームページを見せてやった
「ふむふむ…確か前に新幹線で会ったジュンさんが観に行ってたやつだよね」
「そうだな」
その舞台の東京公演を大地と観に行っていた事は照陽には告げていなかった
「ジュンさんは留代と同じ施設に住んでて…色んな所で繋がってて面白いね」
「そして留代はお前と父親のトモハルとも母親のアンとも親類だと…全く奇妙な巡り合わせだよな」
「そうだね…人の縁って巡り巡って何かしら皆繋がってるんだろうね」
「そうかも知れんな」
「だから私は諦めないよ!」
「何を…」
「人と分かり合う事!」
「あー…あのミカン婆さんが言ってた奴な。でもよ」
「何?」
「やっぱり他人の事を全て理解するのは無理なんじゃねえか?」
「それはそうだろうけど、諦めるって言うのは違うと思う!」
「じゃあ理解出来ない事を認める…って言い方なら正しいんじゃねえか?」
「むう!」
「まあ俺は全てを理解されたいともしたいとも思えんがな」
「そうなの?」
「そもそも俺自身が自分の事を全て理解してる訳じゃねえし。それに」
「それに?」
「全て分かっちまうとつまんねえだろ?」
「ふむ…」
「まだ何か出てくるのか!って爺さんになっても思ってたいがな」
「成る程ね…確かに」
何か有るなら、それが何か分からないなら探索すれば良い
「お前は何が出てくるんだ?…」
そう言ってその目的の為にキスをしながら服を脱がせた
星夜は大地と違いコネを使いまくって目的を達成させるタイプみたいですね
珍しく星夜のガンガン行こうぜ!が見られましたが
そしてそんな星夜に触発されて大地も何か吹っ切れた様ですが…




