夢の途中
「と言う訳で来年には俺は晴れて独り身と言う事だ」
「成る程ね」
10月に入って最初の金曜日に星夜が部屋に来て報告をしていた
「じゃあ私もその頃を目処に身辺整理をしとかないとね」
「まあそうだな」
確か静風の誕生日は5月初め…だったか
「シズカにね、今年の春に告白されたよ」
「えっ!?」
「身体の事…」
「なんだソッチかよ…」
「何でその事が分かった時に私にじゃなくてセイヤに打ち明けてたのか…」
「それは…まあ…俺の事は用務員の爺さん位に思ってたからじゃねえか?」
そうかも知れない
でもそれだけじゃ無い…
「シズカがね、セイヤと付き合えば私がシズカの事を嫌いになるだろうと思って…嫌でもシズカの事考えるしか無くなるかなって思ってたって」
「そう…」
やはりこの事も星夜は知っていたのだろう
星夜は基本感情も表情も乏しいが長年側で見てきて微妙な声のトーンと顔つきの変化でそう察した
「私はシズカの事1番の親友だと思ってるし、シズカの事大好きだと思ってるって伝えたよ」
「そっか」
「でも私はやっぱり誰の事も本当に好きになったりはしないし出来ないと思うしシズカが望む関係にはなれないと思う…」
「まあ…それは俺も同じく…だがな」
「でも…」
「?」
「もしかしたら…自分が産んだ子供なら…愛する事が出来るのかも知れないし、そんな気もしてる」
「ふうん、やっぱりお前は八神家の使命を継続して行くんだろうな」
「それはどうなんだろうね」
きっと私も櫂や一生みたいにそう言った感情を手に入れる事を求めているのかも知れない
物事ついた時からの私の夢で有り願望で有ったお母さんになる事…
漠然とただそうなりたいと思っていたがお母さんになればきっと私が望むものが手に入る…
その事が無意識に分かっていたのだろう
私がそれを手に入れる事が出来る子供は…私が欲しい子供は誰との間の…
「まあ俺は人に利用される事には慣れっこだし?ちゃんとダイチに伝えるさ」
「シズカがセイヤと別れたら告白された人と付き合うって事?」
「まあそうだな」
静風は身体もちゃんと女の子になって大地と付き合うつもりなのだろう
それは私が望んでいるから…なのかも知れないが
「それ私がダイチに言うよ」
「何で?」
「ダイチはセイヤとシズカが二人きりで仲良く話してた事をセイヤから聞きたく無いんじゃない?」
「別にシズカとは特別仲良くしてるつもりは無いが言われてみればその通りかも知れんな」
「まあシズカが私の事を思ってた事は言わないけどね」
「当たり前だ。それ以上ややこしくさせるなよ?」
「分かってるって」
「まあ俺はシズカにさりげなくダイチの志望校を勧めたからな。もうやる事はやったし大役は果たしたから後はお前に任せよう」
「そうだね、セイヤにしては気の利いたナイスアシストだったよ」
「そりゃどーも、『しては』は余計だがな。お前はもう志望校は決めた訳?」
「うーん…具体的にはまだ。でもやりたい事は見つかってきたかな」
「へえ?保育士の資格取れる所とかか?」
「違うよ!お母さんにはなりたいけど保育士になりたい訳じゃないから!」
「じゃあなんだ?お前からお母さんワード以外聞いた事無いんだが」
「私弁護士目指す事にしたから!」
「へっ!?」
星夜が珍しく口を開いてポカンとした間抜けな顔をしていた
この事は八神家の過去を調べている時に思い立っていた
「だから今は法学部の有る大学を色々調べてるの」
「いやいや、なんでまたいきなり…」
「八神家の事を色々調べてたじゃない?」
「まあそうだな」
「八神家の人って医者は多いけど弁護士は居ないよね?過去の八神家の人々も実業家や学者は居たけど弁護士は居なかった」
「まあ…お前の親父以外はな」
「お父さんは結局は八神家の部外者だし…八神家の事は何も知らないでしょ?」
「まあそうだよな」
「八神家ってさ、正直表に出せない事が色々有るじゃない?法律スレスレと言うか…」
「いや、スレスレどころか色々アウトだとは思うがな…近親相姦に無戸籍児に違法臓器提供に無許可の人工授精に地下施設の軟禁に未成年淫行に児童ポルノに…」
「何か改めて羅列して挙げられると確かに色々マズイよね…」
「八神家は違法行為のオンパレードだな。特に過去は違法薬物に児童の殺害やら不法投棄と更に酷い。まあ今も色々露呈したらヤバいがな」
「おばあちゃんの所の弁護士も八神家の内情までは知らないって言ってた」
「まあ…そうだよな。良識ある人間なら八神家の内情知ったら警察に通報してるか偽善者や金目当てなら週刊誌かYouTuberにでもゴシップネタとして売ってるよな」
「だからね、こう言った八神家の事情をよく知る弁護人は必要だと思ったの。何かの拍子に露呈する事もこの先有るかも知れないじゃない?」
「後は…マコトみたいにやらかす奴も…か」
「まあそうだね。本人が事件を起こさなくても巻き込まれたり嵌められる事も有るだろうし。後は八神家は地元ではそこそこ名家だし何かしら狙われる事も有るかもだし…」
「まあなあ…じゃあアレか」
「何?」
「八神家を継ぎ当主となるカイは医者でその奥方は弁護士と今までに無い最強コンビって訳だな」
「それ私のお母さんとお父さんの逆バージョンだし、私は…」
「確かに八神家に弁護士は必要かもな。俺がサラに嵌められた時にトモハルの存在はかなり心強かったからな…八神家最強カードだなお前の親父は。バックにホログラム背負ってるぞ?」
「セイヤは…」
「何?」
「私とカイが結婚して欲しい?」
「そんなもん俺が決める事じゃねえだろ」
「お母さんは私とカイが結婚したら嬉しいって言ってたしカイも私と結婚する事を望んでるし…」
「お前は人の為に結婚するのか?まあそれで良いなら好きにすれば良いだろ?」
「カイは本当に好きな人が居るのに…でも私には誰も好きな人が居ないし…」
「じゃあどうすんの。結婚するのが嫌な訳?」
「結婚する事が…カイが嫌なんじゃなくて…あの場所で誰とも会わずに…閉じ込められるのが嫌なの…」
「ふうん」
「こうして気持ちよくて幸せな気持ちになれなくなるのが嫌なの…」
そう言って星夜に抱きついて舌を絡めた
○○○○○○○○○○
最後の週の金曜日に大地の部屋に行った
「どうしたの?学校じゃ話せない事って」
この日は大地のお父さんもお母さんも仕事で遅いと言っていたので家には誰も居なかった
「私達、来年のゴールデンウィークにはお付き合いを解消してお別れしましょう」
「ん?まあそれは構わないけど…でも何で?」
「この頃にはセイヤとシズカがお別れする事になったから」
「そうなんだ。でも何か具体的に日取りが決まってたり色々謎だな」
「まあ…多分シズカの事情…かな?気持ちの整理?」
「そうなんだ…」
大地は不思議そうな顔をしていた
静風の身体の事は元より手術の事も大地は知らないだろうと星夜は言っていたので私から話す事はやめておいた
いずれ静風の口から…
しかしこの事を知ったら大地はどう思うだろう?
そんな不安も無きにしも非ずだったが、星夜も太鼓判を押していた真面目一徹一途な大地の事だから大丈夫…だと思う
私は事実を知っても変わらず静風の事は1番の親友だと思ってるし何も変わらない
恐らく大地も同じだと思う
「でね…シズカはね、今度こそちゃんとお付き合いするつもりなんだ」
「ちゃんと?」
「まあセイヤとは…なんて言うか打算と言うかカモフラージュと言うか…セイヤ曰く知り合い以上友達未満な関係だったと」
「あはは、そうなんだな」
「だから次に付き合う人とはちゃんと恋人として…ね」
「そっか…」
「だからさ!今度こそダイチがちゃんと告白して付き合うんだよ?」
「うっ…うん!そうだなっ…」
「時期は…そうだなあ…夏休みが始まる前…位が良いかなあ?でも受験も控えてるし…どうするかなあ…あんまりモタモタしてたら誰かに奪われちゃうかもだしなあ」
「受験勉強は大丈夫、俺の成績なら無理しなくても入れる所にしてるから」
「そうなんだね!」
成る程、演技のレッスンもしてるからその辺りも受験勉強で休まず出来る所にしたのだろう
「うわぁ…何か緊張して来た…」
「まだ緊張するのは早いよ!」
「まあ…そうだけど…」
「ダイチはセックスは元よりキスすらマトモにした事無いでしょ!?」
「えっ!あっ…うん…まあ…」
「それはシズカも同じだとは思うけど!だからこそ!」
「えっ?」
「シズカ言ってたよね?写真部に行った時に。まだ誰とも付き合った事無いし色々経験無いからちょっと怖いって」
「あ…うん…そうだな…」
「だからね、ダイチはシズカを不安にさせない様に、リードしてあげなきゃダメだと思う」
「そりゃ…出来るならそうしたいけど…でも俺も経験無いし…」
「分かるよ?私も最初そうだったから」
「まあ…テルヒはセイヤと練習してたんだっけ?」
「そう。カイと初めてするのが不安でその練習の為にね。そのおかげで気持ちに余裕が出来て緊張しなくて済んだし」
「そうなんだな…」
まあそのせいで櫂とはセックスはする事が無かったが…
でも静風は違うと思う
「だからね、練習は必要だと思うの」
「練習?」
「ダイチは役者になる為に演技の練習してるでしょ?」
「まあそうだな…夢を叶える為には必要な準備だよな。役者になりたい…シズカに振り向いて欲しいって些か不純かもだけど…」
「じゃあ長年の夢を叶える為に、シズカと付き合うまでに準備しとこう!」
「準備?」
「私がダイチに練習してあげる!」
「えぇっ!?」
大地は口を開いてポカンとした間抜けな顔をしていた
照陽のお母さんになりたい理由と将来の進路が明らかに
しかし照陽…
相変わらず強引暴走列車ですが…
どうなる大地?
貞操は守れるのか…




