君はまだシンデレラ
前話の続きとなります
ちょっと長いです
この場で話すのも誰が聞いているかも分からないので留代の部屋に案内されてそこで話す事にした
「留代さんはずっとここでお一人で?」
「ええ、夫が亡くなってからは一人気ままに好きな様にさせて貰ってるわ」
「寂しくは無いですか?」
「いいえちっとも。ここでお友達も沢山出来たし…やっぱり私は家に閉じこもってるよりも外の世界で人といる方が好きだし性に合ってるわ」
「そうですか、それなら良かったです。おばあちゃん…玉代は今もあの家で一人で住んでいますが元気ですよ」
「そう…良かった…」
「その事は知っていましたか?」
「いいえ。でも分かるのよ」
「と言うと?」
留代は机の引き出しから長細い小箱を取り出して開いて見せた
「これは…」
そこには菊の花をあしらった真珠の付いた銀細工の髪飾りが入っていた
「どうして…」
確か菊の花の方は玉代の物だった筈だ
「一生が亡くなった時に私が遺髪と一緒に送りつけて一生が保管していた桔梗の髪飾りを玉代が欲しいと言ったらしくて代わりにこれを私の側にと言って母に渡したらしいわ」
もしかしたら留代の記録だけでなく髪飾りも一生の側に置いておきたくなかった…と言うのは考え過ぎだろうか?
「それは貴方がお墓に眠っていると思ってでしょうか」
「それはどうかしらね」
「玉代は貴方が生きている事は知っているかも知れません」
「そう…」
玉代は留代の記録を移動させたなら一生の記録は元より留代が書いた内容も読んだだろう
生きている事を隠し黙って家を出たのは玉代が事実を知って傷つかない様に、玉代に一生の本当の姿や子供を産めない事を隠していたかったからだろう
その事も含めて留代には話さないでおいた
「これを握ると分かるのよ。玉代が元気だって」
「そうなんですね…双子にはテレパシーの様な不思議な力が有るとも言われていますからね」
「ふふ、そうね。だから玉代が穏やかに過ごしている事は分かるし多分玉代も分かってると思うわ」
これは八神家の、神の子の力と言うよりも双子の力なのかも知れない
「私は八神家について色々調べていました。そこで以前の皇輝の部屋から地下室を見つけ、そこに保存してあった皇輝の記録を見つけ八神家の歴史や使命について詳しく知りました」
「今も…八神家の使命は続いているの?」
恐らく高子が亡くなった以降の事は知らないだろう
「まあ…そうですね…云足と宮乃は御月と言う娘を作り…御月と云足との間に眞事と言う息子が生まれ、眞事と御月の間に杏と言う娘と韻と言う息子が年子で生まれました」
「ふふ、相変わらずややこしい家系よね」
「そうですね…で、私はその杏と眞事との間に生まれた娘です。云足、宮乃、眞事、杏、韻は皆医者となりました」
「そう…」
「韻は…指が6本有りますがこの頃には神の子の事を詳しく知る者も居らず、予言等のしきたりは無くなっていたので当時は八神の使命から弾かれた子と見做され存在しない子として地下施設に隠され戸籍も有りませんでしたが、その後眞事が養子と言う形にして外の世界で育てました」
「そうなのね…じゃあその子は…幸せなのね」
「ええ。韻も八神の人間でない外部の人間で好きな人も出来てその人との間に息子も生まれました。星夜と言って私と同い年で今回協力して貰って八神家の歴史を調べています」
「そう…じゃあ韻って子は神の子で有りながら私の次に外部の人間との間に子を成したのね」
「そうですね…因みに韻は予言等は出来ないと思いますし聞いた事も無いですね…」
「ふふ、じゃあやっぱり幸せなのね。先の事なんて…未来の事なんて知らない方が良いわ…真実は知らない方が幸せな事も多いのよ」
「それはやっぱり…一生の事…ですか?」
「そうね…」
「やっぱり許せないですか?」
「ええ。許せないけど…感謝もしてるのよ?」
「と言うと?」
「私に…八神の人間にもこんな感情が持てるって分かったから」
「成る程…」
この事については櫂も恐らく追求してるだろうと思えるのでやはり一生と櫂は似てるのかも知れない
と言う事は一生も…
「私には同じ父と母を持つ櫂と言う兄が居ます。櫂は杏から生まれたのでは無く…所謂代理出産で作られた人です。この先その人が八神家を継ぐ事になると思います」
「そう…」
「櫂は八神家と八神の…皇輝と一生が研究していた遺伝子の浄化についての研究も引き継ぐと言って今医者を目指しています」
「そうなのね…」
「行く行くは皇輝や一生がいたあの病院で開業医としてやって行く予定なんです。今は長年放置されていた病院の改装工事に取り掛かる準備をしている所ですね」
「なら…一生の居た診察室も行ってみた訳ね」
「はい…それで留代さんの事も詳しく知る事が出来ました」
一生の記録の隣に置いたであろう留代の記録は玉代が別の場所に移した事は言わないでおいた
「櫂は…研究熱心で八神家についても詳しく知りたいと思っていて私は八神家の一員としてそのお手伝いに調べてたんですが…」
「そう…」
「櫂は一生と似てるなって思えまして」
「そうなのね」
「櫂も八神家の人間に欠けている感情について知りたいと思っている様で…私にそれを試そうとしていたと思うのですが、私が上手くその期待に応えてあげる事が出来なくて…」
「ふふ、じゃあ貴方は私と違っていいように実験動物として弄ばれない聡い子なんでしょうね」
「それはどうでしょう…単に八神家の人間なのでそう言った事が欠けた人間で元々持ち合わせて居ないに過ぎないと思いますが…」
「でもね」
「?」
「それは恐らく八神家の人間全てが持ち合わせていないし皆何かが欠けてると思うわ」
「それは…まあ…」
「でもそれは八神家だからと言うだけじゃなくて…全てを完璧に兼ね備えた人間は居ない、と言う事だと思うのよ」
「確かに…」
「私は今まで外の世界で色々な人に出会い関わって来たわ。それぞれ皆何かを持っていて何かが欠けてるのよ」
「そうですね…」
「元々持ち合わせて居ないその欠けたものを手に入れる事は確かに難しいかも知れないし一生もそれを手に入れる為にあれこれ奔走して居たのかも知れないわ。でもね」
「?」
「手に入れる為に他人を使ったり陥れたりするのでは無くてその事を知る事、そして受け入れる事の方が大切なんじゃ無いかしら?」
「成る程…」
「そして八神の人間にとって欠けているものは人から仕組まれお膳立てされて手に入るものでは無いと思うわ。自然と湧き起こる様なもっと単純な事なのよ?」
「単純?」
「そう。例えば…この人の子供が欲しい…とかね」
「成る程…」
留代は玉代の為に…では無くもっと単純な…
一生の子が欲しいと思った
と言う事だろうか
「櫂は…1番が欲しいと願っていました」
「1番?」
「はい。櫂は杏…私と櫂にとっては産みの母の事を愛しています。でも杏は…恐らく眞事の事を1番に愛しています」
「そう…」
「だから杏によく似た容姿で杏の娘の私をその代わりに置き換えようとしていた様ですが…私は誰の事も1番には思えない人間です」
「ふふ、その櫂って子は恐らく一生が私達を手懐けた様に貴方を手懐ける事は出来なかったのね」
「そう…なのかも知れませんね」
「貴方は子供は欲しいと思ってる?」
「はい。私の夢は…母になる事なので」
「そうなのね。じゃあ誰の子が欲しい?」
「それは…まだ具体的には…母、杏からは櫂との子を望まれて居ますが櫂は私とセックスする気は無いようで…」
「そうなの?」
「はい…櫂と最初に練習する前に…失敗しない様に星夜と練習してしまっていて、その事を知って私とはもうこの先する事は無いと言われてまして…」
「あらあら…貴方もだけど櫂って子も大概ね…完璧主義と言うか何というか…」
「まあその辺りは…私の代わりの人間もいますので八神家の使命についてはどうにかなるとは思うのですが…」
そう言ってエナの事も説明した
「まあ八神家の使命については…部外者となった私には正直どうでも良い事なんだけどね。ただね…」
「?」
「子供ってね、唯一無二だと思うのよ」
「ええ…」
「一人だけじゃ作れない。そして子供は自分と愛する人との遺伝子両方を持つもの…一生から貰う事が出来なかったものは、叶わなかった未来の姿は形を変えて私と合わさって一つに収まってるのよ」
「そうですね…」
「結果的に選ばれたのは…それが出来たのは私だけ…それだけで充分よ」
「留代さんは一生に支配されて居たと思いますが…結果的には…」
「そう、一生を…八神家の使命を支配したわ。私の遺伝子を残す事でね」
「成る程…」
それは果たして愛と呼べる物なのか
はたまた星夜の言う八神の遺伝子の執着なのか…
「私は櫂は一生に似てると思います。研究熱心な所とか…人を使って実験してる様な感じとか…櫂は1番に思われる事にこだわっている様ですが一生もそうだったんでしょうか?」
「一生には…そう言う願望は無かったと思うわ。あの人はただ知りたいと言う欲求が強かっただけ…」
「そうなんですね」
「似てる人は居ても同じ人は居ないのよ?私と玉代は元々一つの身体だった筈の同じ遺伝子を持つ人間だけどそれでもやっぱり私とは違うもの」
「成る程…過去の人々を読み解いて、それぞれ今の八神家の人間に共通する所も多かったですが…やっぱり全てが同じ人は居ないです」
「そうよ。幾ら遺伝子を受け継いで浄化して行こうともコピーした様な全く同じ思考の人間は生まれないわ」
「そうですね…」
「八神の人間にも私の様に新たに感情を手に入れる人間も居るし一生の様に分からないまま終わる人間も居るって事ね」
「確かに」
櫂はどっち側の人間になるんだろう…
そんな事をぼんやり考えていた
「貴方は母になりたいと言っていたわね」
「はい」
「その為には子を産まなければなれないわよね」
「そうですね…」
「出産は命懸けよ。命を懸けてまで欲しいと思える子は他人が望む子、他人から言われた相手の子では無くて自分が欲しいと思った子なんじゃないかしら?」
「確かに…」
私は今まで母になる事だけを夢見ていた
恐らく櫂との子になるだろうとは予想していたが恐らく自然妊娠は難しいだろう
それでも構わないと思っていた
母が、八神家が望む子だから
でも
私は誰の子が欲しいと思って居るのか…
「また…会いに来ても良いですか?」
「ええ、私達は杉田と八神の本当の親類なんだからね」
「はい…」
「じゃあお口を開けて?」
そう言われて口を開けると中に飴を入れてくれた
「じゃあ、またね」
そう言って留代は微笑んで頭を撫でてくれた
「黒飴だ…シブい…」
飴をコロコロ舐めながら施設を後にした
「あら!?貴方は」
そう庭で声を掛けられて振り返ると以前新幹線で会った人だった
「貴方は…」
「ふふ、江波順子、ジュンよ」
ミカンのジュンだった
「今年も私帰りの新幹線でミカン食べました!あれからハマって」
「あら、そうなのね」
「ジュンさんは此方にお住まいで?」
「そうよ、貴方は今日は誰かの面会?」
「はい、杉田…桔梗さんと。親戚なので…私も杉田照陽と言います」
「そうなの!キキョウさんね!」
「はい、仲が宜しいですか?」
「ええ、あの人もだけど私も比較的誰とでも仲良くなるから」
「そうなんですね」
「今日は楽しめたかしら?」
「ええ…まあ楽しかったと言うより…色々考えさせられる事が多かったかもです」
「そうなの?」
「まあ…今までちゃんと考えていなかった事に気付かされたり…かな?」
「ふふ、じゃあ大人の経験値から学んだって訳ね」
「そうですね…」
「テルヒは…まだシンデレラって訳かしらね」
「シンデレラ?」
「あら、知らない?大人の階段登る〜♪て奴」
「うーん…分からないです」
「あはは、そっか。まあ昭和歌謡の歌詞よ」
「それならセイヤ…前に一緒にいた人なら知ってそうですね。セイヤは何故か昭和平成に詳しいので」
「少女だったといつの日か…ってね」
「はあ…」
「じゃあまたここで会う事もあるかもね。またね!セイヤくんにも宜しくね!」
そう言ってジュンは手を振って見送ってくれた
照陽は留代と話して八神家の事以外に自分の将来についても考えさせられた様です
あの髪飾りはお互い交換と言う形になった様ですね
そしてジュン、ほんの少しでしたがまたまたお久しぶりです
まだゲームしてるのかな?




