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明宵  作者: 水嶋
深更

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157/160

遺伝子の本能

「予想通りだな」


「ホントだね…」


夜中玉代が寝静まってから屋敷に忍び込み高子の部屋になっていたと言う廊下の突き当たりの部屋へ入っていた


改装して有るので記述にあった様な面影は無く普通の部屋だった


そして隠し部屋は皇輝の部屋と同じ場所に有った


「多分改装した時に皇輝の部屋と同じ工程で人目を避けたい物をしまって置く物置として作ったんだろ」


「そうだね」


こんな場所にしまう物と言ったら恐らくロクでも無い物だろう

まああの八神家の経緯を読んだ後なので何が出て来ようが大概の事には動じない自信だけはついていた


「今回はクローゼットは動かさないからな」


「分かってるよ」


中の電気のスイッチも同じ場所に有り灯をつけて下へ降りた


広さも皇輝の部屋と同じ位だったが中に置いてある書物の量は少なかった


「どれどれ…」


目についた物をパラパラ捲るとどうやら帳簿の様だった


「これはまあ所謂土地の貸付やら八神家の仕事の報酬やら…と言った所か」


「そうだね…この中に薬の取り引きも有るのかな」


「恐らくな…」


八神家の過去の事業の金銭のやり取りが必要なのは跡を継ぐらしい櫂位しか重要だと思わない無いだろうから放って置く事にした


薬物のやり取りの帳簿と高子の記録等に的を絞り探す事にした


暫く黙々と2人とも無言で手分けして探索し、ただページを捲る音のみがしていた


「これかも!」


照陽がそう言って見せて来た帳簿には…


「神託薬…ね」


その様に明記された物のやり取りが記載されていた


「後は…桜門…ってコレは所謂アレだよな…」


「多分ね」


恐らく神の子が最後に服用する薬物の事だろう

桜の木の下へ行くための…


余り長居は出来ないのでとりあえずこの帳簿を持ち出して離れで撮影してまた元に戻す事にした


「見つけた…」


この地下室に置いてあった長机の引き出しを開けると中にノートや手紙の束が有った


「この手紙は…差出人は留代だよね?」


「恐らくそうだな。名前は違うが…」


差出人は三ツ矢桔梗となっていた


「桔梗…」


「確か一生から贈られた髪飾りが留代は桔梗だったか?」


「そうだね…髪飾りは一生に返したけど名前に残したんだね」


「折角八神家を飛び出して名前を捨てて別人になったと言うのにな。とんだセンチメンタルジャーニーだな」


「遺品として返された留代の髪飾りはどうしたんだろうね?」


「さあな。どうせ一生には思い入れの欠片も無いだろうから処分したんじゃねえか?」


「そうなのかなあ…」


話半分に目についた手紙を読んでみたが内容は大体近況報告で大した内容は無かった

高子の記録だけを持ち出す事にして手紙はそのまま元に戻した


正直人骨の一つも出てくるかもと思っていたので拍子抜けした感じは有った

まあ高子はあの登場人物の中では比較的常識人なので、えげつない物は有ったとしても保存はしないのだろう


「じゃあ秘密基地に戻るよ!」


今はリビングにカメラが作動しているので空き部屋でヤる事も無く物音を立てない様に早々に退散した



離れに戻ってから一通り撮影し、次の日の夜に照陽が一人で元に戻しに行った

俺は撮影した画像を整理し、文字に起こすと言う作業を連日行っていた


暑い中下らない女装などして出歩くよりよっぽど良かったが…



「なあ…結局今回もヤり放題はお流れかよ…」


「だってやっちゃうと次の日セイヤ動かなくなるじゃん!」


「もう二度と来ねえからな…」


「セイヤがサクッと片付けてくれたらな〜私も気持ちよくて幸せな気持ちになりたいな〜」


「ちっ…」


結局良い様にこき使われていた

それならば…


と意地になって昼夜を問わず黙々と作業し滞在最終日の前日に終わらせた


「ホレよ」


「わあ!有難う!頑張ったね!」


「抜く間を惜しんでやり遂げたからな…」


「それを言うなら寝る間でしょ…」


俺はゲッソリしていたが照陽は連日優雅に玉代と茶をしばきながら喋くってたので肌艶も良く余計に腹立たしかった


照陽にデータを送り早速読んでいた

それ程長くは無い内容なので読み終えていた


「成る程ね…」


「まあ結局は高子も八神の人間だったと言う訳だな」


内容は…

皇輝や一生と被る部分は有るが戦時中に消えた八神の家の人間についてが明らかになっていた


「まあ…この機会に一掃した…と言う所か」


「そうだね…」


戦時中、この町の農民に貴重な働き手を失わせ家族を路頭に迷わせない為に徴兵の招集がかかった者達の代役として戸籍の無い八神の人間を差し出していた


さしずめ国の厄災に捧げる供物…と言った所か

海や山へ沈めていたのが戦場に変わっただけの様だった


男は戦場へ、女は台風などの時の土砂崩れや川の氾濫などの時に駆り出され危険な作業に従事し事故や大怪我や病で次々に命を落とした様だった

一生も留代も不在で戦時中の医師不足の中、田舎の小さな町に医者や医療従事者は居らず医者にもかかれなかったので楽に最後を迎えさせる為に所持していた薬物を使用していた様だった


これは単に町に恩を売るだけで無く八神家にとってもメリットは有った

幾ら農村だったとは言え非常事態で食料は貴重だ

無駄な食い扶持を減らす言わば間引きの様な意味合いも有っただろう


それに…


「高子は自分と皇輝の遺伝子を引き継いだ者のみを残したかった様だな」


「新しい八神家の使命…それ以前に生まれた者を一掃した…って事だね」


「俺は勘違いをしていた様だ」


「何が?」


「高子は比較的常識人だと思っていたが…八神家屈指のかなりヤバい奴で一生に引けを取らないサイコパスの鉄面皮だな。さすがあの化け物を産んだだけの事は有る」


「それだけ皇輝を愛してたんじゃない?」


「そしてお前は相変わらずおめでたいな…」


まあ皇輝と一生の話を読んだ所でコイツも俺もそうなんだ…としか思わないのは分かっていた


「後は…まあ薬物の入手ルートだな」


「龍三さん…?」


「一応調べてみたが。元は薬屋だったみたいだが江戸時代には侠客となりヤクザとなって昭和初期には隆三組として名を馳せていたが…」


「ふむ」


「八神家とは戦後のゴタついていた時に高子が手を切ったみたいだな。八神の恩恵を失ったからかどうかは分からんがその後新興勢力に乗っ取られて今はもう無い組だな」


「へえ…」


「なんでも化け猫の呪いだの何だのと色々有ったってまことしやかに言われているみたいだな。高子が聞いた話では組が無くなったのは八神家が離れてしまったからだとも言われてたらしいぞ」


「そうなんだ…八神家ってその世界の人に有名なの?」


「さあな。でもそれからは薬物を使わなくなったらしいからその時からキッパリ反社との縁も切れてるだろうし今となっては八神家の事を知ってるその世界の人物も流石に居ないだろ」


高子が明記してる通り帳簿の龍三さんと言う人物との取り引きも戦後辺りから空白だった


「成る程ね」


「でも高子の最後は…」


「うん。玉代以外の最後の八神の人間を看取ってから…」


「例の桜門を使って自害した。玉代の事を頼む専属の弁護士に代理人指名手続きをして身辺を整理して火葬、納骨までの手配をして正に立つ鳥濁さず…だな。ちゃんとこうして後世の人間にも伝える為に書き記して。やはりその辺も八神の人間らしいよな」


「そうだね」


「八神家の使命とは…優れた遺伝子を引き継がせる為に篩にかけ濾過し浄化して行く…って大義名分は一応有るが何だか理由が曖昧なんだよな」


「曖昧?」


「その優れた遺伝子の人間を作ってソイツに何をさせたいのか。その辺りに明確な理由が見当たらない」


「確かに…」


「理由は後付けな感じがしてるんだよな」


「後付け?」


「優れた人間を作って何をさせるかでは無く、単に進化した優れた人間を作る事のみに執着してる…遺伝子の本能みたいな」


「ふむ」


「そして後世にただ遺伝子の記録を残し引き継いで行く…正に八神の人間は遺伝子そのものだな」


「そうかも知れないね」


「そしてその事に何世紀にも渡って疑問も持たず執着し続けている八神家の人間は…使命は…やはり下らない。と言う結論だな」


「その執着…連鎖を…セイヤはどうしたい?」


「それは俺の関与しない預かり知らぬ所だな。まず俺は八神家の言う所の『正しい八神の人間』じゃねえからな」


「そっか」


そう、俺は八神の考えを変えたいとも壊したいとも思わない


だが…


「まあ…変えるとしたら…破壊神のお前なんじゃねえの?」


「むう!私は太陽でお母さんになるの!」


「はい、そうですか」


「それがセイヤの望み?」


「俺の望みは破壊も波乱も無いただ穏やかで平穏無事な生活だな…」


そう言って連日の疲れからベッドに横になって目を閉じていた


「ふふ、それ一生の望んだ世界だよ?」


「やめてくれ…縁起でもない…俺は一生の事を知るずっと前から言ってるし」


「やっぱりセイヤもちゃんと八神の遺伝子を受け継いでるんだろうね」


「俺はあんなサイコパスじゃねえ…」


スカプレイなぞ死んでもゴメンだ



「折角頑張ってくれたから約束を…って思ったけど疲れてそうだからゆっくり寝て」


そう言って俺の隣に座っていた照陽が俺の頭を撫でていた


「このまま寝て終わってたまるか!」




照陽の言葉で忘れかけていた約束を思い出し遺伝子の本能が目を覚まし押し倒して舌を絡めた


高子もやはり中々の人物だった様ですね


そして龍三組…

こちらは「芳一郎奇談-人形棲家」に少し出て来ますので参照下さい

化け猫に呪われたのは龍三組でなく八代組ですがね…


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