行方知れず
色々多少波乱は有ったが期末試験も終えて無事冬休みを迎えた
静風は照陽が言っていた様に今は照陽と距離を置いてるみたいで、恐らく冷静になろうとしているのだろう
この冬休みの間に検査して異常無しと安心して我に帰るだろう
まあこの件は恐らく静風にとっては黒歴史となるだろうが、俺は誰にも漏らす気も無いし多分その内忘れるだろう
正直静風が同性愛者だろうがどうでもいい
まあその場合…静風は大地にとって長年想い続けた初恋相手であろうし気の毒ではあるが、あのスペックならすぐに静風の代わりは見つかるだろう
そう、静風が他の誰かを好きでいようが大地が他の誰かを代わりに好きになろうがどうでもいい
ただ俺や照陽に深く関わらなければ
そして年明け最初で最後の仕事は因縁…
とも言えよう南野の撮影で漏れなくメイクは…
「えー!やだやだー!ユヅきゅんやめちゃうのー!?ぴえん…」
これが最後の仕事だと挨拶してるとニリが大袈裟に嘘泣きしていた
もう呼び名がこれに定着してる様だが今日でお別れなので好きに呼ばせていた
「まあ…この先大学受験も有りますし…キリも良いので」
「じゃあ大学合格したら戻ってくるの!?」
「いえ…俺は普通の大学生に、男の子に戻ります」
「えー!何かアイドルの引退宣言みたいな事言ってるー!今マイクをステージに置いて立去る姿が見えた!」
「それは山口な。俺が言ったのは飴の方な」
「からの超えてぱおん…」
「死語ですよ色々もう…」
「僕は信じてるよっ!ほほえみ返し!」
俺を何かのチャートで一位にしたいのだろうか?
「まあそろそろ潮時じゃないですか?身長も伸びたし体格も顔つきも変わって来たし」
南野好みで世間から求められてた姿からは遠のいて来ていただろう
勿論下の方も立派に育って来ている
「うんうん!益々僕の好みに育って来てる!」
「左様ですか…」
ニリにはこの状況報告は通用しなかった様だ
そして俺は今までと比べて比較的マトモなメイクをされていたが…
「KPOP風だよ〜!まあまだ一応流行りだからね」
「そうですか…」
一応メイクの方はトレンドを押さえてるらしい
その他は色々時代錯誤感は否めなかったが…
「こう言うのが似合う様になっちゃって…」
そしてまた下らない泣き真似をしていた。お前は母親か
「はあ…まあ色々大きく育ちましたかね」
「ホント大きくなったね…多分アレも…この先女どもをヒイヒイ言わせて鳴かせるのかな…心配しちゃう!もしかして僕も食べられちゃう!?あはー!」
「誰も食べません」
麻由が鏡越しに行け!と首を振り目で指示を出していた
どいつもこいつも腐ってやがる
今回はメイクも早めに終わったので撮影が始まるまで少し話をしていた
「そーそー!ユヅきゅんで思い出したけどー」
「何すか?」
「前にいとこのはとこの子が連れてきた子?」
「あー…」
もういとこのいとこだと訂正するのもバカらしくなっていてそのまま受け流していた
どちらにせよほぼ他人だ
「あの子ってさあ、まあ色々やらかしてクビになったじゃない?」
「まあ…みたいですね」
「なーんか、自殺未遂?したらしいね」
「へえ…」
まあ詳しく知ってはいたが知らない振りをした
一緒に聞いていた麻由も何も口を挟まなかった
「で、一命は取り留めたけど意識不明で入院してたらしくてね」
「それはそれは…」
その事も照陽から聞いて知っていたが特に何もコメントしなかった
「でね、最近聞いた話だとね…意識が戻ったらしくてね」
「へえ…それは良かったですね」
本当はこのまま目が覚めない方が幸せだろうと思っていたが
「でー、何と病院から失踪してしまいましたとさ!」
「えっ?」
「いやあ…怖いよね!まだマトモに動けない筈なのにねっ!親も捜索願い出したんだってさ!行方知れずでね」
「…」
「しかもねっ!妹ちゃん…マナって言ったかな?その子は意識が戻らず急変して脳死判定食らってね。サプリも飲まず身体は健康だったから有効活用されたって!良かったね、最後に困ってる人の役に立って!」
何昔話みたいにめでたしめでたしみたいな風に締めてんだよ…
色々お前も含めてこえーんだが…
勿論麻由も無言で固まっていた
「ユヅキさん、そろそろお願いします!」
絶妙なタイミングでスタッフに呼ばれ最後の撮影に向かった
色々芸能界の恐ろしさを目の当たりにして少々憂い顔になっていた様だが逆に南野はその姿に気分を良くしてノリノリの様だった
何とか撮影も終わり南野やスタッフに挨拶してスタジオを後にした
「まあ…深入りする前に離れられて良かったのかも知れないわね…」
麻由は一言そう言った
確かにな、とその意見には同意していた
そして麻由はニリから貰った名刺をじっと眺めていた
お前はニリと完全に縁を切る気は無い様だな
そんな風に引退仕事を終えて3学期を迎えた
そう言えば…
色々仕事やら衝撃事実を知ったりと有ったのですっかり忘れかけていたが…
静風に結果はどうだったか一応確認しておこうと思っていたが新学期が始まっても暫く学校を休んでいた
「シズカはどうしたんですか?」
眞也にそれとなく聞いてみた
「なんでも…体調不良だとかで、親御さんから連絡が有って暫く休ませると」
「そうですか」
体調不良?
静風は今まで無遅刻無欠席で前に表彰された事も有る無駄に元気な女…と言う認識だったが
検査で何か病気でも見つかったのだろうか?
それ位しか休んでる理由が見つからなかった
大地も心配していたし、照陽も理由が分からない様だった
あれから照陽とは連絡もしていない様だった
照陽に何か知ってるかと詰め寄られたが勿論俺も何も聞いてないし知らない
椎那の話を聞いた後なので何だか嫌な感じもしていた
まさか家出?失踪…行方知れず?その事を親が隠蔽?
とかは無いよな
麻由に会いに家に照陽が来た時にその話にもなった
相変わらずメイクやら教わっている様だったが、主に雑談が主流の様だった
そこからニリから聞いた椎那の事や摩那の話になったが、照陽は連絡先も消してたのでその後どうなってたか知らなかった様で驚いていた
まあ摩那の末路については…
地下施設で似た様な事をしているので多分それ程驚きはしなかったのだろうが、一応麻由の手前驚いた顔をしていた
麻由は韻から聞かされてこの事は知ってるのだろうか?
確か昔に韻とフォウとの間に出来た子もドナーになったと聞いたことは有ったがその事も含めて…
「そう言えば…シズカどうしてるんだろう…セイヤ何か聞いてないの?」
「俺は何も知らんな。榎本に一応聞いてみたが親から病気療養で休むと連絡あったらしいがな」
「シズカって…前に家に来て漫画貸してあげてた子?」
「そうです」
「元気で良い子だったけど…貸した本返してくれる時に感想やお礼のメモ挟んでたりたまにお菓子入れてくれてたり…」
「そうなんです!シズカは良い子で優しくて…今まで無遅刻無欠席で表彰されたりしてたのに…」
「そっか、心配だね。連絡したりしてないの?」
「はい…ラインも既読つかないし…どうしちゃったんだろう」
「そうね…」
ふむ…
どうやら照陽もお手上げの様だ
そんな話をしているとポケットに入れていたスマホのバイブ音がした
チラッと見ると…
『話したい事が有るから連絡して』
ホーム画面に静風からのラインの通知が表示されていた
照陽は麻由と話していて俺の様子に気付いていない様だったので一度ロックを解除してホーム画面に表示されない様にしてまた電源を落とした
照陽のスマホは何も通知されてる様子もないし、まだ静風と連絡取れない状態だろう…
照陽にではなく俺に連絡して来たと言う事は…
恐らく照陽には話したく無い事が有るのだろう
また面倒臭い事になりそうだとウンザリしたが、まあこれも唯一と言っていい友達の大地の為…
決して照陽にその気のある奴を近付けさせたくないと言う俺の下らない嫉妬と独占欲の為ではない…と思う
とりあえず照陽が帰るのを待ってから静風に連絡してみるか…
と思ったがこう言う時に限って照陽は中々帰らずその内韻も仕事から帰って来てさらに話が盛り上がり出して漸く帰った後に夕飯→風呂となり結局連絡したのは夜21時過ぎになっていた
もしかしたら体調不良ならもう寝てるかもしれないから通話ではなく
とりあえず…
『遅くなってすまん、話って何?』
そう送った
照陽は田所から粗方聞いてた筈ですがとぼけてますね
そして椎那…何が有った?
静風も何だか不穏ですが…何が有った?




