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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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99話

「リュウ! もうやめて!」

「止まれ!!」

「リュウっ!」

「お願いっ、リュウ……!」


(……また)


 デジャヴだった。聴き知った声に、ようやく意識が浮上してくる。そして、過ちを繰り返したことを理解する。


 知覚がはっきりしてくると、その惨状に目を疑った。タルカン兵たちはもう息がなかった。そして、それ以上の血が、溢れかえっていた。


「……っ、ユラン、お前……」

「お前がやったんだよ、リュウ」


 幼馴染のユランは、腕や膝から血を流し、涙を浮かべてリュウを見上げていた。ユランだけではない。顔馴染みの官吏たちが手傷を負い、倒れ、呻いていた。


「……っ、俺……俺は……」


 リュウの顔に浮かぶのは、恐怖だった。そして倒れた者たちがリュウを見る目にもまた、畏怖の色が、ありありと浮かんでいた。




 

 部屋で謹慎して一晩。見張りの者に連れられ、九垓の元へ出向いた。


「一歩遅かった。すまない」


 俯いていたリュウは、その言葉にゆっくり顔を上げた。九垓は書物を差し出す。そこには、リュウの痣と同じ文様が写されている。禍の印についての研究資料だ。九垓はリュウの目線を追うように、説明した。


「禍の印の暴走を封じる手法だ」

「……」

「この封印をすれば暴走は無くなる。但し、今までのようには魔術を扱えなくなる。簡単な躯術で精一杯だろう。それでもいいか」


 リュウは力なく頷いた。



 禍の印は機密事項とされ、リュウの暴走の要因は周りの者たちに、はっきりとは伝えられなかった。それもあり、リュウが現れるたび、場はしんと静まり、腫れ物扱いの日々が続いた。


「あ……、リュウ」

「…………」


 幼馴染のユランも、同じだった。目には、怪物でも見たかのように怯えが浮かんでいる。当たり前か、と自嘲する。


「ねえ、リュウ……」

「お前、もう俺に近づくな」


 びくびくしている癖に話しかけられるのが酷く鬱陶しく、リュウはユランを突き放した。


 その後、ろくに魔術を使えなくなったリュウは、抜け殻のように精気を失った日々を過ごした。時が立つに連れ、周りの扱いは落ち着いて、前のようにリュウへ接する人間も増えていったが、それに付き合う気には到底なれなかった。これ以上、他人を傷つけることが、怖かった。


 半年もその状態が続くと、九垓はとうとう見かねたようで、リュウに「外へ出てこい」と提案した。


「外……」

「旅をして国を回ってきな。お前の身体能力なら、早々くたばる事はないだろ」

「……何のために」

「そんな湿気た奴に居座られると宮殿にカビが生えそうだ」


 まるで追い出したいような言いぶりだが、九垓がリュウを心配して言っているのは、ちゃんと分かった。断る気力もなく、リュウは胡王国を離れたのだった。


  

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