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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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209/211

209話


「リュウ……」

「その傷……塞がってるな。例の魔術の力か」


 玲奈の脹脛には血がこびりついている。普通なら、動ける傷ではない。逆廻は不発だったが、体の損傷だけ戻してくれた。リュウは逆廻のことを知っているようだった。


「陛下から、全部聞いている」

「……そっか」

「お前も、俺に聞きたいことがあるだろ」

「……うん」


 初代の記憶を見てから、ずっと考え、予想していたことがある。今日のリュウの言動を見て、確信を強めた。


「リュウには、初代の破滅の子の記憶がある。――初代の、生まれ変わり」

「……ああ。そうだ」

「記憶はいつから? 私といた時は無かったんでしょ」

「お前が国を出た後だ。陛下に、禍の封印を解いてもらった。解放と一緒に、初代の記憶、それから――レナへの感情も、元に戻った」


 玲奈が悲しい顔になるのを見ながら、リュウは懺悔するように話し出した。


「……朝。起きたら突然、お前のことを考えると激しい嫌悪が沸いた。抑えられないほど強かった。会いたくないという感情から始まって、傷つけたいという欲も沸いた。その欲のまま……、傷つけた。悪かった」

「謝らないで。リュウの意思じゃなかったって、思っていいんだよね」

「もちろんだ。何らかの魔術の影響だ。陛下の見立てでは、お前に呪いがかかってるんじゃないかって」

「……ヒリアムの呪い」

「知ってんのか?」


 リュウは驚きをみせる。これはルヴァリスの森でルノーに教えてもらったものだ。


「恋人に嫌われる呪いだって」

「……ん」

「それなら、リュウは何も悪くない。むしろ私が謝らないと」

「ま、知らんうちにけったいな呪いにかけられたうっかりは反省すべきだな」

「……もう」


 きっと、リュウは玲奈に気負う必要はないと言いたいのだろう。その気遣いと、久しぶりに聞いた憎まれ口が嬉しかった。少し目線を下げると、リュウが腕貫をしていないのに目が行った。それはもう、封印が解かれている。


「それ、大丈夫なの?」

「ああ、問題ない。……今思えば、俺に(まがい)の痣が出たのは、偶然じゃなかったんだ」

「え……」

「昔も、腕に刻まれてたんだ。この痣」


 そう語るリュウは、記憶に見た初代と同じ顔つきをしていた。突然、リュウが知らない人に見えて、玲奈はぞくりと震えた。


「これは暴走のトリガーじゃねえ。武器だった。昔の俺は未熟でうまく扱えなかったけど、もう大丈夫だ。これで、守る」

「――守るって、なんの話」

血禍(ちか)の鞘の使い方を、もう知ってるな?」

「……うん。ラプラトと、血を切り離す方法も。……ラプラトを消滅させる方法も」

「その二つ目の使い方をすれば、衝撃で王都一帯、丸ごと吹き飛ぶ。でも、(まがい)の印に貯められた魔力を一気に開放すれば、それを抑え込められる。この国を、守れる。そうすれば」

「…………」


 リュウは言葉を切って、玲奈の腰を優しく引き寄せた。


「犠牲は、俺とお前だけで済む」


 玲奈は、息を止めて、リュウと見つめ合った。



「……リュウは、私にそうしてほしいの」

「記憶が戻って、今、あの時のことを鮮明に思い出している。自分がクーデターを止められなかった不甲斐なさも、未来に責任を負わせるやりきれなさも。ここで終わらせなきゃ、またいつか、同じことが起こる」

「…………」

「けど、それは俺の使命で、俺が背負う業だ。レナには、関係ない。強制はしない。……どうするか、レナに委ねる」

「私……」


 玲奈がラプラトと一緒に死んだら、もうこんなことは起こらない。先送りにしたら、いつか遠い未来で、玲奈と同じように、酷い目に合う子が生まれるかもしれない。玲奈は、リュウを見上げた。


「……リュウは一緒に死んでくれるの」

「ああ。俺も一緒だ」


 まるで愛の告白のように、リュウの声は熱っぽく響いた。玲奈が、返事をしようとした。


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