表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

208/213

208話

 彼女を好きになる理由はありすぎる程で、それだけ自分にとって、あの恋情は、自然なものだった。メイリは優しくて、可愛くて、綺麗で、頭が良くて、魔術にも長けていて。両親からロアンへの期待は大きく、それだけ重圧もあった。ロアンがその重さに押しつぶされなかったのは、彼女の存在が大きかった。


「大きくなったら、メイリは僕のお嫁さんになってくれる?」


 気恥ずかし気に、俯きがちに言ったロアンの言葉に、メイリはきょとんとしてみせた。少し考えて、ロアンをそっと手招く。ロアンがその手を取ると、メイリは残酷な言葉を吐いた。


「私は運命の人に出会いました」

「……運命の人?」

「自分を、変えてくれた人です。彼のおかげで、私は自分を好きになれたのです」


 メイリが言っているのが、自分でないことはすぐに分かった。


「メイリは、自分を好きじゃなかったの?」

「はい。……ずっと、嫌いだったんです」


 彼女がそんな風に言うことに、ひどく驚いた。メイリはいつだって完璧で、理想の女性だった。


「その人がいたから、好きになれたの」

「そうですね」

「その人のお嫁さんになるの?」

「なれたら嬉しいなと思います」

「そっかあ」


 メイリはロアンの頭を優しく撫でてくれた。幼ないながらに、振られたということは、ちゃんと分かった。メイリには、好きな人がいる。その人と結婚して、幸せになる。


「殿下にもいつか、その人が訪れます。その方こそ、あなたのお嫁さんになる方です」

「そんな人いるのかな」

「きっと」


 暫くは落ち込んだが、そのあとも、変わらずロアンはメイリが好きだったし、会えることを喜んだ。振られた悲しさは、あまり長く続かなかった。メイリが幸せになれるなら嬉しいと、自然に思えた。メイリは時々、好きな人の話もしてくれた。幸せそうなメイリの姿を見るのは楽しかった。


 彼の姿を初めて見たのは、神殿での儀式に参列したときだった。メイリの視線の先に彼はいた。すぐに、その人だと、分かった。


(……なんか、ぱっとしないけど)


 その男は、存在感が希薄で、導士たちの端っこで、肩身が狭そうにしていた。


(でも、良い人そう)


 その直感が大外れだったと気づいたのは、ずっと後のことだった。



 * * *



(回復されたらまずい)


 ロアンを倒したリュウは、すぐさまアーケインに飛び掛かった。手負いであろうと、この男の持つ力は、ビシビシと肌に感じていた。


(叩くなら今)


 リュウの剣は、彼本来の身体能力の高さに、魔術を掛け合わせて最大速度となる。ロアンはその剣を全く見切れぬままに落ちた。


 アーケインの大抵の物理攻撃は同等の魔術で散らすことができるが、幻導術はそうはいかない。そして、この男が持つ魔術は、指折りの厄介物だ。リュウは指を弾いた。地面に水が這い、アーケインまで伸びると足元を絡めとろうとする。アーケインが躱して飛び上がったところを、リュウの剣が死角から突き刺した。


(躱すか)


 アーケインはそれを未来視していた。あっさりと剣を避け、反撃に黒い雷を至近距離から放った。リュウは水量で対抗した。拳大の水球が飛び出し、電撃を包み込むと、圧縮した。


(威力がない。魔力切れ寸前)


 リュウは攻撃を畳みかける。躱されるのを分かっていながら、剣を振るい続ける。アーケインの反撃は続くが、容易に防げるものばかりだ。攻めを重ねるごとに、アーケインの肌には細かい傷が刻まれていく。未来視の精度が落ちているのか、見たものに体が反応できていないのか。


(終わらせる)


指を弾く。水飛沫が上がって、アーケインに纏わりつく。アーケインは未来を視た。


(爆発――っ、逃げ場が……)


 ゼロ距離で蒸気爆発が起こる。衝撃から逃げようとした先で、突き刺される未来が見えた。一瞬の躊躇いを逃がす男ではなかった。固まったアーケインを、容赦なくリュウの剣が貫いた。


「ぐ、うっ……」


 当面回復できないように、深くまで剣を突き刺した。剣を抜くと同時に、アーケインは倒れこむ。その姿を、上から俯瞰する。


(水が弱点なのも同じだったな)


 完全に意識を失ったのを確認し、リュウはやっと玲奈を迎えに行く。


 二人の視線が絡み合った。玲奈の体は今にも沸騰しそうな程、ドクドクと温度を上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ