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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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201/212

201話


 咄嗟に、時を戻した。戻った先は、階段に足を踏み入れた後だ。これでは、対策を考える余裕もない。


(ど、どうしよう)


 既に視界がぐわんぐわんと揺れた。


「ひぃ―――っ」


 一度目の攻撃が降りかかる。またも、二人に庇われた。でも、次は防げない。


(どうしよう、私にできること、なんだ)


 迷ううちに、それはやってくる。玲奈に時間は無かった。とにかく、自分ができる最大限をやるしかなかった。振り落とされそうな中で、環術を使った。これまでの中で、一番の強い風が突き抜けた。アデルの驚く声が聞こえた。


 何故だか分からないが、ぐらぐらと揺れていた視界が、固定された。再び槍が降りかかるも、視界が安定していれば、アデルは剣でしっかり躱せていた。


「走れ!」


 シェルドの掛け声に、二人は残りの階段を駆け上った。最後に何とか侵入者を食い止めようと、拳ほどの石が連なって、前方から飛んできた。シェルドが右手を伸ばして掲げた。その掌から、銀色の火花が散る。火花は石を包むと、ジュッと音を立てて収縮し、消えた――。


 玲奈たちが最後の段を上り終わるのと同時に、階下で、石がズシンズシン、と床に突き刺さった。それを見届ける余裕はなく、玲奈は床に倒れこんだ。まだ、目が回っている。


「大丈夫か?」

「何とか……」


 アデルも、息が荒かった。一度、大量の血をまき散らした体は、どこにも傷はついていない。


「レナに助けられたな」

「なんで解けたんだろ?」


 玲奈は、迷宮で一番助けられた、風を起こす環術を使った。何かに効くと具体的に策があった訳ではない。


「階上に未視認の発動陣を組んでたんだろう。風で流れたんだな。単純だけど気づけなかった」


 偶然だが、結果オーライだった。しかし、玲奈はそれを喜ぶ余裕は無かった。先ほど、逆廻を発動したときの感覚だ。


(もう、あんまり残されてない)


『魔力の残りは感覚で分かるはず』


 まさに、母の言葉通りだったわけだ。今、玲奈の体から、母が託してくれた魔力が尽きそうになっているのを、はっきりと感じる。


(あと、二・三回できるかってとこ……)


 今、アデルを救うために玲奈は時を戻した。でも、もうその判断は、できないかもしれない。


 考える玲奈の傍らで、シェルドは一番にその気配に気づいた。廊下の向こうに、佇む神官服。そして、その男が操る先。


「っ、伏せろッッ!」

「!?」


 忠告を認識するより先に、玲奈はシェルドに引き寄せられた。三人の頭上には、高温になり、融解した金属の粒が真っ赤に発光し、浮かんでいた。粒は雨のように玲奈たちへ降りかかる。シェルドは銀色の魔術陣を展開させると、火の雨との間に傘を張った。銀の傘は火の粒を一度弾いた。しかし、跳ね返った粒は、ボトボトと音を上げ、何度も傘に突撃を繰り返す。傘は段々と小さくなっていく。


 シェルドは舌打ちした。ひざ下にいる、玲奈とアデルを見る。術者は、下にいた下っ端より確実に手練れだ。まともに戦って、向こうの援軍が駆けつければ状況は不利になる一方。


(レナを祭司と合流させるのが最優先)


「アデル、レナを頼めるか」


 アデルはすぐに頷いた。


「役目は分かってる」

「後方に道を作る。祭司たちはこの階にいるはずだ」

「分かった」


 玲奈にも、シェルドが足止めをするつもりだということが理解できた。正直、導士が不在で進むことに恐怖心はある。でも、もうやるしかない。


 シェルドは、敵に玲奈たちの逃亡を見られないようにと、前面にも陣を広げた。背後には、銀色に輝く道が伸びた。玲奈がアデルと一緒に地下神殿に来たときにも、似たものを見た。新たな道が作られていく。


「行くよ」


 アデルが玲奈の腕を引く。再び、アデルとその道を辿った。


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