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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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198/216

198話

「そろそろ、帰ってきていい時間なんだけど」


 玲奈は数時間眠っていたようだ。起こしてもらい、食事を済ませた。暫く談笑していたが、いつまで経ってもシェルドから連絡が来ない。アデルが、時計を見た。


「連絡は取れないの?」

「こっちからは送ったんだけど、返ってこない」


 そわそわする心を抑えるが、時計の針だけが進んでいった。玲奈がまたも眠気に襲われ出したころ、何もなかった壁から突然、バタン! と音を立てて男が飛び出してきた。シェルドだった。酷く憔悴しているように見えた。アデルがそれを認識し、声をかけようとするのを遮り、シェルドが叫んだ。


「アジトが破られた! 祭司より、今すぐレナを連れて城に突入せよと命令だ!」

「え……?」


 玲奈は、その意味をすぐには理解できなかった。


「レナ! こっちだ!」

「え、え?」


 アデルが玲奈の腕を引き、部屋から飛び出ていく。シェルドは玲奈の後ろにぴったりついて来た。


「どういうこと!?」

「ひとまず後だ。まず俺の馬車で城まで行く。中で状況を共有する」


 アデルはこんな状況だというのに、冷静だった。シェルドの方がよっぽど顔色が悪く、焦っていた。突然、バタバタと階段を駆け下りる一行に目を丸くし、一人の男が近寄ってきた。


「どうされたんです、こんな夜更けに。この方たちは」

「城まで行く。馬を引け」

「……殿下」

「頼めるか」


 男は、ヤザンと同じ年頃に見えた。体の大きさも、同じくらいだった。彼は、アデルの指示に、一瞬息を呑んだ。アデルが何をしようとしているのか、感じ取ったのかもしれない。しかし、戸惑いはすぐに消えて、低い声でアデルに首肯した。


「勿論です。すぐに準備を」


 アデルは頷き、玲奈を庭まで引っ張っていく。馬車に押し込められると、シェルドが続く。アデルは馬車の外で、先ほどの男と話している。恐らく、アデルの護衛なのだろう。自分の部下にも、全てを隠していたアデルが、手の内を見せている。それだけ、切羽詰まった状況。


 アデルが乗り込んで、馬車はすぐに走り出した。


「説明してくれ」


 シェルドは少し落ち着きを取り戻したようだった。訥々と話しだす。


「向こうに着いたのは一時間半前だ。俺の部屋と繋げたら、直ぐに戻る予定だったが、部屋に入った瞬間、大きな魔力の衝突を感じた。宵議堂まで上がると、大量の兵士と神殿の導士が入り込んでいた。もう、戦闘が始まっていた」


 玲奈は何も言えなかった。つい先ほどまでの安全地帯は、もうないのだ。


「アボットが俺に気づいて、状況を話してくれた。アジトが包囲されたのに気づいて、祭司は部隊を二つに分けた。一つは、囮だ。地下神殿で戦い、向こうの戦力を引き付ける。そしてもう一つは、レナと一緒に、城へ突入する」

「囲まれてるのに、外へ出られたの?」

「レナが通ってきた入口は潰されていた。ほかにも、俺たちが知ってるものは、全部」

「……どうして」

「漏らした奴がいたってことさ」


 アデルが皮肉気に笑う。


「けど、潰されていない道もあった。祭司の魔力でのみ開く道だ。幹部ですら、存在は知っているが正確な場所は知らなかった」

「でも、内通者は分からないんだろ。城に突っ込むっていっても、計画は筒抜けなんじゃないのか」

「いや、もう特定している」

「どうやって?」

「グランの幻導術だ。あいつは、過去を視ることができる」

「過去を……?」


 これには、アデルも驚いていた。グランの能力は、秘匿にされていたようだ。やはりルエルは、アデルを信頼しきっていなかったのだろうか。


「内通者は見張りをつけている。これ以上情報が漏れることはない。幸い、アデルが地下神殿と繋がっていることも喋っていなかった」

「なら、俺が城に入るのは容易いな」

「ルエルたちも今、城に向かってるってこと?」

「ああ。恐らく、俺たちより先に着くはず」

「連絡は取れないのか?」

「恐らく王都一帯に、広域魔力の妨害が施されている」


 それでアデルが送っていた連絡も通じなかったわけだ。


「そんな状況で、本当に城に突入するの?」


 玲奈は及び腰にならざるを得なかった。


「こうなった以上、機を待つより、先手を取る方がいいとお考えということだ。俺も賛成だ。今より悪くなることはあっても、逆は無いだろう」

「でも、折角サディにも協力取り付けたのに」

「それなら問題ない。襲撃があってすぐ、祭司は第三王子の屋敷に部下を向かわせた。連絡は行ってる。彼が協力する気があるなら、既に挙兵しているはずだ」

「…………」

「レナ、お前の判断で決めろ。怖いなら、着いてこないでいい」


 アデルの言葉にシェルドは眉をひそめたが、玲奈をじっと見るにとどめた。


「私――やるよ」


 躊躇いは、すぐに振り切った。玲奈の答えに、シェルドはあからさまに安堵し、アデルも頷いた。


「作戦は?」

「大筋はアボットから聞いてる。――レナ。計画は覚えてるな」

「うん」


 侵攻計画を聞いたのは、つい昨日のことだ。


「計画通りに行かない点は、祭司が新たな指示を出されてる。時間はないから、一度しか言わないぞ。頭に叩き込め」


 玲奈は覚悟を持って、頷いた。



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