表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
181/228

181話


 アデルの兄、ひとつ年上のロアンは、幼いころから非常に優秀な人物だった。王位継承権第一位という立場に奢らず、努力をひたすらに続け、周りの期待に応える兄。アデルが頑張った勉強も武術も魔術も、全部、兄に比べれば、大したことない。父と母は、いつも兄が一番で、アデルは二の次。そのうち、頑張るのが馬鹿らしくなって、アデルは何をなすのも、無気力な少年になりつつあった。勤めの礼拝もすっぽかし、王子教育もアデルに任せっぱなし。


 十四、五のころになると、暇を持て余し、女遊びに興じるようになっていた。父と母は、最初は政務や勉学をさぼるアデルを叱ったが、そう経たないうちに諦めたようだ。


(ていっても、さぼる場所見つけるのにも一苦労)


 サボり場所を見つけるのに城を探索していた日のことだった。図書庫の奥に、更に扉を見つける。


「お、なんだここ」


 さびついた扉は、ギギギと音を立てる。中は、意外と広い空間だった。随分開かれていないのか、かなり埃っぽく、顔をしかめた。


(窓もない)


「これ……何語だ?」


 壁際の棚に、何冊かの書物が入っていたが、背表紙の文字は、見覚えがなかった。開いてみても、やはり、なんと書かれているのか、分からない。


 怪しさの決定打となったのは、調べようと部屋から持ち出すと、扉をくぐった瞬間、手の中から消えてしまったことだ。外へ持ち出せないように、魔術がかけられているのだ。調べても調べても、その文字の手掛かりは見つからなかった。疑問を抱えつつも、これは誰にも聞いてはいけないことだと直感し、自分の中だけに留めていた。


 次に違和感を感じたのは、地方へ視察に行った時だった。親に命じられて、嫌々来た、国の北西部。国境付近。ここに軍の拠点を作る予定らしい。見回りの最中、異変を感じ取る。土の境目が、不自然な色をしていた。地面の土を手で払った。そこから、破片が出てきた。


(――魔力痕)


 アデルは息を止めた。破片から、強い魔術の痕跡を感じ取った。破片は風化の具合から、かなりの古さがうかがえる。それだけ時間が経っているのに、魔力痕がこんなに感じられるとは、非常に強力な魔術が使われた証だった。


さぼりがちだったとはいえ、国の歴史と地理は大まかに頭に入っている。ここ一帯は、建国以来、人が住み着いていない、荒れ地のはずだ。さらに、不自然な点を見つける。


(何の紋様だ……?)


 その破片には、模様が彫られていた。外側に、円形の月桂樹。その中に、向かい合った二頭の獅子の頭が彫られている。左の獅子は口を閉じ、右の獅子は吠えていた。


(王族の紋章じゃない……)


人のいない筈の地に、強い魔術の跡を感じる、人工物の破片が埋められていた。そして、見たことのない、紋章。


 遠い昔、導士が私的な諍いを起こしたのだろうか。そのくらいなら、史料に残っていなくても頷ける。しかし、それでは、この紋章はなんだ。スラジに、家紋を持っているのは王族のみのはずだ。


「何が隠されてる……」


 自分が知らない歴史が、この国にある。そして、隠蔽されている。退屈な日常を送っていたアデルにとって、真実の探求は、刺激的で、惹かれてやまないものになった。それから、アデルは自分の調べられる限りを、尽くした。


 そして、アデルはついに、その紋章の持ち主を探し当てた。



 * * *



「その紋章を持っていたのが、地下神殿だ」

「……あなたは地下神殿の真実を知っているの?」

「全てを共有されてはないけど、知れたことは多い。まず何といっても、きみのこと。貴類の宣告は、捻じ曲げられた。きみを処刑するのは誤りだ」

「……信じてるの」

「勿論」

「なら、家族を説得して、私を追うのを辞めるように言ってよ」

「言ったんだよ。子供の世迷言だって相手にされなかったけど」


 玲奈は、アデルの言葉をどこまで信用していいのか、悩んだ。これが全て嘘で、地下神殿は王族に制圧された可能性もある。もしくは、今は地下神殿を騙して仲間のふりをして、スパイ活動をしている最中ということも。


(分からない。でも、すぐには逃げられない)


 であれば、一度はアデルについていくしかないだろうか。


「……地下神殿は、あなたをどうして受け入れたの」

「そりゃあ最初は色々あったけど、俺の熱意に納得してくれたよ。何たって、俺は彼らに有用な情報を多く提供できる」

「でも、罠の可能性だってある」

「そう言われてもなあ。気になるなら、向こうに着いたら聞いてみたら?」

「…………」


 アデルは、疑いを晴らす確固たるものは持ち合わせていないようだ。玲奈もまた、判断ができかねる。


「なんで、あなたが私の迎えに来たの。王子が来るなんておかしいでしょ」

「時間が空いてる人間で、俺が一番、初対面の女の子を迎え入れるのに適役だった。きみが俺の顔知ってるとは思ってなかったからね。あそこは変人たちばっかだからさあ」


(この人にそう言わせるくらい?)


 玲奈はひくりと頬を引き攣らせた。


(完全に信用したわけじゃないけど……)


 玲奈に取れる選択肢は限られていた。


「分かった。あなたに付いて行く。連れて行って」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ