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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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178/228

178話

 聞きたいことは、まだあった。


「私、かみなりからお母さんの魔力を感じたんです。どういうことですか」

『大母は蘇るために、きみの母親へ自分の血を潜ませたのだ。胎の子にその血が流れるように。我々にも、それにも同じ力が流れる』

「お母さんは、強力な禁制魔術を使えた。それって、ラプラトの魔力が影響したから……?」

『如何にも。大母が蘇るために分けた血が、思わぬ余効となった』


 母から授かった魔力。強い魔術。それは、ラプラトの力だったのか。複雑な感情もあるが、玲奈はこれを有効活用するしかあるまい。玲奈は、帰るためにどうしたらいいのか。貴類の助言が欲しい。


「私、元の世界に戻りたいんです。スラジだけじゃなく、胡王もそれができると言っていました。でも、一度戻れても、また次の聖蹟の日にこの世界に戻されたら、今度こそ殺されて」

『その知識は十分でない』


 貴類は玲奈を遮った。


『十月に一度の周期で転移が叶うのは、一方向の話。逆流させるには、相応の命力の蓄えが必要となる』


 命力ってなんだっけ、と思って、迷宮でリュウがそんなことを言っていたと思い至る。しかし、貴類の言ってることはピンと来ていない。


『命力はこの星から外向きに連なる。それを利用し、小さな力で異間移行が叶う。よって、咎人(とがびと)を追放するのによく利用されてきた。送った者を呼び戻すには、命力を逆流させる。十年を待つ』


 つまり、違う世界を行き来するといっても、こちらから向こうに行くのと、その逆では必要なエネルギー量が違うということ。それは、九垓も、スラジの王族も知らなかった事実である。


「……今から戻ったら、十年はこっちに戻されないってことですか」


 貴類は顎を軽く引いたように見えた。


(十年は、安寧な生活が……帰りたい……でも、十年後にはまたスラジに戻されて、死刑……)


「十年後は母の時を戻す力は残っているでしょうか?」

『確証を持つ答えは出せない』

「…………」


 逆廻を使えるなら、あるいはと考えた。今度は、知識がある。でも、その力が無いとしたらそれはリスクが高すぎる。ここで死ぬよりは、家族たちの元で過ごしたい。でも、十年後の死を覚悟するには、玲奈は若すぎる。途方に暮れて、貴類に尋ねた。


「私、これからどうすれば」


 貴類は宣告、つまり、未来を予言する力があるのだ。玲奈の未来も、助言してほしい。そう思って縋った言葉は、しかし、返答がなかった。


『また会おう』

「え、あ、ちょっと!」


 手足に纏っていた粒子が、全身に広がって、貴類は、姿を消してしまった。


「行っちゃった……」

「ナ~」

「かみなりは、喋れないの?」

「ンッ」

「そっかぁ」


 そして、この森を離れたら、再度、かみなりとはお別れになる。迷宮のように、導士の力が満ちる場所に、現れるという。


「その時は、助けてね」

「ンナァ~~」


 任せろ、というように、顎をあげて、一鳴きすると、玲奈の手からすとんと落ちる。そして、地面に滑り込むように姿を消してしまった。


「あ、もう行っちゃった……」


 見送る暇もなかった。貴類との会話を反芻しながら、森を戻る。ルノーの姿が見えた。


「待っててくれたの?」

「そりゃあ、な」

「ふふ、ありがとう」

「で? ちゃんと話せたか」

「うん。色々教えてもらったよ」


 ここでやるべきことは、済んだ。ルノーとの別れが、迫っていた。

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