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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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168/228

168話

「ヒコトさん! お話が!」


 一瞬呆気にとられたヒコトは、一度目と同じ表情をしてみせた。



「……で、二度目もやられて戻ってきた」

「はい」

「俺は倒れながら、何か言おうとしていた」

「そうなんです。でも、分からなくて」

「鉄矢を放ったが、相手に届かず地に落ちてたんだな」

「はい」


 玲奈の拙い説明で、ヒコトは状況をすぐに理解した。


(何かをこいつに伝えようとした。恐らく、相手の術の特性に気づいた。――矢は届かずに折れた。それから導き出されること)


「少しでも読み取れなかったのか」

「口の形からは……多分『兵器』とか、『正義』って言ってた気が……でも、それが何を伝えたいのか」


 玲奈の断片的な情報をもとに、ヒコトは論理を組み立てていく。しかし、猶予は少なかった。


「チッ……来る」


 答えは出ないまま、ブリッツの、三度目の襲来を受けることになった。


(やるしかない)


 再び、地面から鉄砂を操る。


(矢が駄目なら)


 ヒコトを中心に鉄砂が渦上に舞い上がり、竜巻を作った。


(これで呑み込む)


 ヒコトは魔力を集中させ、一気に放出した。ブリッツの姿を捉えると、竜巻を最大威力でぶつけた。――が、いつの間にか、操っていたはずの鉄の砂が、かき消されていた。


(なるほど、そういう……)


隷糸(れいし)切れがない、止まっ――」


 倒される寸前にヒコトが届けた言葉。


 ――玲奈に、しっかりと届いていた。




「ヒコトさん!」


 三度、玲奈はこの場に戻ってきた。先ほどとは違う、手掛かりを携えて。


「隷糸切れがないと言ったんだな」

「はい!」

「なら、相手の術は判明した。ブリッツは速いんじゃない」

「え?」

「時間を止めているんだ。お前と同じく、時を操る」

「っ……時間を?」


 どういうことだろう。隷糸切れとは。時間を止めるとは、禁制魔術ではないのか。スラジで使える人物はいないのでは。疑問は次々浮かぶが、今はそれより先に、やるべきことがある。


「どうやって倒せば!」

「――倒すのは難しい」

「……そんな」


 ヒコトの言葉に、玲奈は絶望した。ヒコトはしかし、冷静だった。


「倒す必要はない」


 ヒコトは鉄砂を土中から吸い上げだした。先ほど見たより、ずっと多く、視界いっぱいに、黒い砂が舞う。


(何を……)


 砂状だったそれは、ヒコトの魔力によって変質して、カキン、カキン、と金属片のぶつかる固い音を奏でた。


「わっ」


 玲奈の頭上に、影がかかる。数十秒の間に、そこには巨大な鉄の牢獄ができていた。玲奈とヒコトはすっぽりと覆われていた。


「時間を止められても関係ない。逃げ抜ければ勝ちだ」



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