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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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164/228

164話

 一足早く、美音(みおん)は理性を取り戻して、華曜(かよう)を問い詰める。


「兄さまは、あなたがやったのではと……本当に? なんでそんなことを」


 華曜は観念したように薄く笑った。


「きみとまた、過ごしたかった。それだけだ。ここにいれば、永遠に叶わない」

「っ……まだ、私を?」

「一日たりとも、忘れたことなどないよ。……きみはそうではないかもしれないが」

「っ、私だって、ずっとあなたを想ってた!」

雨明(うめい)と仲良くしていたと、噂になっていた」

「相談してたの! あなたのことを忘れられないと……。それに、彼と距離を近くしてたら、あなたが嫉妬してくれるんじゃないかって、期待して……」

「……美音」


 美音は泣き出した。九垓は、冷静に華曜に問う。


「泰斗を川に落としたのはきみで、間違いないのだな」

「……はい」

「殺すつもりだったのか?」

「死ぬ可能性は低い方法を選びました。しかし、ゼロではなかった。死んでも、仕方ないと、そう思って実行しました」

「……そうか」

「兄さま! 罰することはないと! 先ほどお誓いになられたのですよね!」

「そうだ。私は何も手を下さない。そして、この事実を知って、美音。お前はどうしたい。華曜と添い遂げたいと、そう思うのか?」

「……許して頂けるのですか」

「お前がそう望むなら。しかし、華曜を罰さないということは、真犯人は不明のままにするということだ。お前が王都を出ることは覆せない。時を見て、華曜をお前のもとへ向かわせる。それで納得できるか」

「……願ってもないことです。……いいのですか」

「僕はお前の信頼を一度裏切った。挽回の機会を与えてくれるか」

「兄さま……ありがとうございます」


 美音と華曜は、悲願の達成についに理性を外して、互いに駆け寄り、手を取り合った。


「さ、一件落着だ。あとで僕と話を詰めよう。把南、二人を連れていけ」


 美音と華曜が、部屋から出ていく。九垓はため息をついた。


「おめでとう。何とかなったようだね」

「……良かったんですか。あれで」


 結果、我が子への殺人を企てた人間を、野放しにし、その願望に応えたことになった。


「美音の溜飲を下げるには、この道しかなかった。この国を守るために、これが最善だと判断した」

「……そうですね」

「それに、華曜も言っていたが、死に至る可能性はかなり低かった。川の水はそれほど冷たくなく、癒符師が待機していて、すぐに治療が受けられた。妻の監視を受け、精神が削られ追い詰められていた中でも、理性をすべて捨て去ったわけではなかった……まあ、探偵殿に言われなきゃ、星影に誓うつもりはなかったが」

「あれは縁さんが陛下にお願いしたんですか」

「犯人が自供するには、言った方が利があるようにしなきゃいけない。ここの法律の担保が必要だろ?」

「……縁さんは、真実が分かれば、いいんですか。悪いことをした人が、罰されなくても」

「どうでもいいね」


 縁は愉しげに玲奈を見下ろした。


「俺の楽しみは、俺の推理が真実だと証明されること。後のことは俺には関係ない」

「……そうですか」

「今回は中々楽しかったよ。王族の罪なんて、早々暴けないからねえ。で、きみからの報酬は今くれるのかい?」

「報酬?」

「あ……あの、私、この人に正体を明かすって約束を……」

「なるほどね……探偵というのは探求心が豊かなようだ」

「お褒め頂きありがとうございます」


 約束は約束である。そして、時間もない。


「私は、スラジで、破滅の子の宣告を受けました」

「へえ! きみがあの……噂に聞いたことがある。なるほど、これは興味深い」


 縁の目は輝いた。


「異界で生きてきたというのは本当?」

「はい」

「おお! それってどういう」

「その辺りにしてもらおう。レナ、きみは急がなければ」


 その通りだ。玲奈は頷く。縁は「そんなぁ」と情けない声を出した。


「縁さん、ありがとうございました。あなたのおかげで、私、ピンチを脱せそうです」

「そうかい」


 頭を下げる。九垓にも挨拶を、と思ったが、玲奈の体は次の瞬間、宙に浮いていた。


「ぎゃっ」

「行け」


 犯人はヒコトだった。九垓にはろくに別れも告げられぬまま、玲奈は胡王国を後にすることとなった。


「では、私はお暇を……」

「待ちなさい」


 去ろうとする探偵には、しっかり口を閉じさせねばならない。


「きみは僕と今後の話をしようか」

「といいますと?」

「君たちは随分と噂好きの人種だと聞くからね」


 縁は残念そうな顔をしながら、九垓に引きずられていった。


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