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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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161/167

161話


 地図に示された場所は、そう遠くなかった。ヒコトと一緒に王都から出て、馬で二十分程。小さな一軒家の戸をノックをした。


「はいはーい、どちらさん?」


 現れたのは、くるくるとした癖毛が特徴の、糸目をした男だった。背格好はひょろっと高く、頼りない印象だ。


「初めまして。(より)さんですか」

「そうだけど……きみは?」

「九垓陛下の紹介で来ました」

「ほぉ……。中で話そうか」


 縁は、玲奈とヒコトにお茶を入れてくれた。礼を言ってずずっと飲むと、苦みに顔を歪める。


「あは、口に合わなかった?」

「いえ……」

「きみ、甘いお菓子とか好きそうだもんねぇ」

「へ、なんで」

「入ってくるとき、目線が吸い寄せられてたよ」

「っえ」


 確かに、家に入れてもらった時、玲奈は戸棚の芋菓子に視線が行った。そんな些細なことまで観察しているとは。


「さすが、名探偵ですね」

「こんなことで? 安いなぁ、きみ」


――そう、この男は、探偵。九垓に、泰斗の殺人未遂の真相を暴くべく、縁の協力を取り付けて来いと言われたのだ。


「お願いがあるんです」

「分かってる、王家のゴタゴタでしょ? はっきり断ったつもりなんだけど、しつこいねぇ」


 九垓は既に、この男に王族の殺人未遂事件について、真相解明してほしいと依頼をかけていた。しかし、縁はそれを断ったという。


「だめ、ですか」

「ごめん、気乗りしないんだよねぇ」

「……何でですか」

「前にも依頼があったんだ。王都の中の人間じゃなかったけど」


 王都の外にも、王家の外戚たちは居を構えている。縁は彼らから、依頼を受けたことがあるという。


「真実に近づくにつれ、依頼主にとって都合が悪い事態になってさ。途中でもういいから帰れって、握りつぶされたんだよ。権力をもった連中の依頼はそれ以降断ってる」

「今回は、そうさせません」

「きみがそんな口叩けるの? 王族でもないきみが」

「確かに、私は権力を持ってないです。でも、私はこの事件の真相に、命がかかってるんです。それを暴かないと、未来がないんです。やれることは、全部やります」

「全部……ねぇ。分かった。じゃあ取引をしよう」


 縁は糸目をより一層細めた。


「俺に、きみの正体を教えてよ」

「……私は、ただの遣いで」

「陛下がなぜ俺に依頼を寄こしたか分からない? 俺が当代一の名探偵だからさ」


 縁は、自信たっぷりに口角を上げた。


「王家で殺人未遂、こんな大事件に、侍女が遣わされる訳がない。おまけに護衛は王の懐刀……何かあると吹聴してるようなものだ」

「う」


 思いっきり顔に出る玲奈に、ヒコトは呆れ顔だ。


「……分かりました。あなたが真実を見つけてくれたときには」

「物分かりがいいねぇ。きみのことは気になるし……最後まで真実を追求させてくれると言ったね?」

「もちろんです!」

「俺がやることを止めようとする奴がいたら、きみが全部説得するね?」

「はい! やります!」

「よし、いいだろう。じゃあ行こうか」

「ありがとうございます!」


 ヒコトがぼそりと囁く。


「おい、いいのかよ」

「……はい」


 美音を止められなければ、玲奈は生き延びられない。今は、縁の力を取り付けるのが全てに(まさ)る。



「事件が起きたのは三日前の夜中です。この桟橋を、美音様と泰斗様が連なって歩かれていた。そして、突然、泰斗様の足元が崩れ、川に落ちて引きずり込まれた。魔力痕が僅かに検出されました」


 説明するのは、九垓の側近、把南。玲奈とヒコトは一歩下がってその様子を見ている。把南の話を聞きながら、(より)はうろうろと現場を検分する。


「ここかぁ。確かに、魔力痕があるね」


 縁は懐からごそごそとガラス管を取り出すと、栓を開けて中の液体を振りかけた。じゅわっという音とともに、泡が発生する。


「それは?」

「俺の秘薬その(いち)

「……効果は?」

「今分かる」


 縁はじっとその泡を見つめた。やがて、泡は消えていき、代わりに現れたのは、どす黒い血栓。うにょうにょしていてグロテスク。気持ち悪い、というのが率直な感想だ。


「……、何ですかこれ」

「どんな魔術が使われたのか、調べる薬。この魔力痕では誰の仕業かは分からない。それでも、分かることはある。この色の濃さを見てよ。術者の感情がよーく分かる」

「感情……?」

「術者は、泰斗様に憎しみを持っていたということ。雇われの暗殺者の線は消える」

「そんな事が分かる薬など、聞いたことがありません」

「そりゃぁ、俺の秘薬って言ったでしょ。誰も知らないよ」


 疑わしげな把南に、縁はけらけらと笑った。


「あなたが開発をしたと? 国の研究でもそんな技術は産まれていない」

「俺じゃないよ。こういうの作るのが病的に好きな知り合いがいてさぁ」

「なんと……ぜひ、紹介を」

「ああ無理無理。お役所仕事なんて務まるタイプじゃないから。それよりお嬢さん、急いでんだろ?」

「あっ、はい!」


 把南はまだ話したげではあったが、玲奈には時間がない。早急に、この事件を解明しなければならない。



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