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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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159/164

159話


「っ、ハァっ! ハッ……!」


 三度、見慣れた自室に戻ってきた。ドサリとベッドに倒れ込み、荒い息を整える。


「どうして……」


 またも、ロアンは追ってきた。印を追えるのは、七日になってからのはずなのに。


(三日にここを出て、向こうに着いたのは五日の夜。前回も同じだった。それで、前は日付が変わった、六日の深夜に港で……)


「そうだ、前も六日だったじゃん!」


 なぜこんな大事なことを確認できてなかったのか。新たな事実に舞い上がっていた。久しぶりに危機に直面して気が動転していた。色々あるが、要は玲奈が抜けていたという話だ。


(二回とも、印は関係ない。となったら、やっぱり……)


 そして、ロアンの言葉を思い出す。


『お前が俺から逃げ切れることはない、ということだ。今回は、運も味方したがな』


(そうだ、あの時言ってた……。今回は、運も味方した……。あいつは、印とは関係なく、居場所を突き止めたってこと……)


 玲奈は迷う。今の自分に、これを一人で何とかする力も知識も、ないことを、悟ったから。


(……話すしかない)


 迷いながらも決意を固めると、ノックの音がした。ヒコトだ。返事しないでいると、これまでと同じように彼は入ってきた。何度目かの、確認をする。


「起きてんなら返事しろ」

「すみません。今日って何日ですか」

「三十日」

「……え?」


 玲奈は固まった。



 * * *



「絶対に秘密が漏れない場所で、話したいこととは何かな」

「……ここは、本当に大丈夫なんですか? 普通の部屋に見えますけど」


 通された部屋は、小ぢんまりとしている。他と変わらない壁や床に、椅子と机が置かれただけの部屋だ。


「安心して。ここ以上に機密性の高い部屋はこの国に存在しない」


 九垓がそういうならば、信じるしかあるまい。玲奈は頷いて、意思表明した。


「私の、誰にも言ってこなかった秘密をお伝えしたいんです」

「ふうん? 何故、そんな気に? きみの信頼を勝ち得た心当たりはないけど」


 九垓は片方の眉を上げた。玲奈は、ヒコトを通じて、九垓と二人きりの面談を申し入れたのだ。絶対に、誰にも聞かれない場所で、と条件を付けて。誰にも言ってこなかった、自分の秘密を打ち明けるために。


 心臓がバクバクと鳴るのを深呼吸をして抑え、意を決する。面白そうに玲奈を見つめる男を、まっすぐに見つめた。


「私には、時を戻す力があります」


 この選択が、正しいかどうかなんて、分からない。自分の力で、正しい道にするしかないんだ。






「なるほど。状況は理解した。レナにこれまで抱いていた疑念も解消したよ。その力があれば、ここまでたどり着けたのも納得だ」


 九垓に、すべてを話した。リスクは承知。でも、玲奈一人の力で、ロアンの手から逃れる方法は、思い浮かばない。九垓を完全に信頼したわけではないが、打ち明けて頼ることが今の最善と判断した。内通者がいる以上、玲奈だけで突き止め、解決するのは無理だ。そして、内通者の存在を確信した理由は、逆廻の能力を明かさなければならない。


(サディの時も、同じことがあった)


 シャロフの裏切りを説明するために、サディに能力を打ち明けようと思った時のことだ。あの時は、踏みとどまった。今回は、その線を、超えた。この選択が、どう玲奈の運命を左右するのか。押し寄せた恐怖から、必死に目を反らす。


「陛下は、内通者に心当たりがありますか」

「前回、僕と話したのはどこだ?」

「えっと、この宮の一階の、左奥の」

「会堂か。そして、過去二回は、十一月三日に戻った」

「そうなんです」


 玲奈の心をざわつかせていた、もう一つの原因。逆廻で戻った先が、今回は違った。今日は、十月三十日。何故、日付が変わったのか。九垓は、その日付からもヒントをを得たのか、やがて口を開いた。


「……、そうだな。内通者の心当たりがある」


 その顔は、心痛に歪んでいた。



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