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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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158/169

158話

 玲奈とヒコトは再び同じ日数を船に乗って、カンシュタットの港へ辿り着いた。


「休んでる暇はない。先を行くぞ」

「はい!」


 既に日は落ちている。宿は数軒あるが、路地に人通りは殆どない。前回は、ここで宿に泊まって捕まった。


「走れるか」

「はい!」


 玲奈は魔石を取り出した。久しぶりの出番だ。地面へ砕くと、慣れ親しんだ緑色の光が灯った。


「行くぞ」


 頷いて、玲奈たちは駆け出した。



 海辺の街は、少し入ると森が生い茂って、急に斜面になった。この山岳地帯を越えると、カンシュタットの都市部に入り、国外の者は容易くは入れない。


「どのくらい走ったら山を抜けるんですか?」

「このペースなら一日だ。今日が五日……もう数時間もすれば六日になるが。印が効力を発しだすまでは、何とか間に合う」


(……あれ? 何か……)


 頭の片隅に何かが引っかかる。チカチカ、と煌めいた感覚は、ヒコトの続いた言葉に、消えていった。


「街の検問を抜けるには、多少頭を使わないといけない」

「というと」

「お前がどれだけできるかだが……、待て」

「え?」


 ヒコトは、言葉を止め、後ろを窺った。そして、大きく舌打ちする。


「追手がいる!」

「えっ!? なんで!?」

「知るか!」


 珍しく声を荒らげ、ヒコトは窮地の脱し方を考える。


(コイツの足じゃ敵を撒くのは無理だ。すぐ追いつかれる。……やたら数が多い。カンシュタットにバレようがお構い無しってか? コイツを庇いながら、あれを全部いなすのは厳しい……どうする)


「ヒコトさんっ、どうすれば!」


 ヒコトは目を瞑り、最善策を導き出した。


「……先に行け。お前を庇いながら戦うのは無理がある」

「っ、分かりましたっ!」

「これを持っていけ。俺が跡を追える」 


 ヒコトが渡したのは、小さな鉱石だった。魔石の一種だろうか。頷いて、懐へ仕舞う。それを見届け、ヒコトは向きを変えた。

 

 待ち構える間もなく、十数名の衛兵たちが現れる。


「女がいないぞ!」

「コイツに構うな!」


 早速、玲奈の不在に気づいた兵たちが、散開していく。ヒコトは舌打ちし、手近の敵から潰していく。


(クソッ、多すぎる)


 数は着実に減らしているものの、玲奈の方へ向かう敵は、何人か確実に取りこぼしている。


(殺しはしないはずだ。捕えられたあと、取り返すのが現実的か)


 


 一方。玲奈は、土地勘の全くない山道を走りながら、パニック状態だった。


(何でっ……、まだ七日になってない! 印は追えないはずなのに!!)

   

 全速力で走っていては、魔石を使っていても息は切れる。酸素が不足していく感覚の中、頭を占めるのは、ロアンの手が玲奈の後ろから、首に伸びてくるイメージだった。


「いたぞ!」

「っ――!」


 後方に、スラジ兵の声。

 

(また、アイツに捕まるっ……!)


 赤い姿が思い浮かぶと、玲奈は恐怖に勝てずに、反射的に逆廻をした。




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