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どうやら私は破滅の悪女らしい  作者: りらこ


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156/170

156話

 船旅は、三日で終わりを迎えた。


「もう着く」

「はい」


 ヒコトは、最初の尋問以降は殆ど玲奈の前に姿を見せなかった。護衛しなくていいのか、と思うも、胡王国にいたときも、ずっと影から見張られていたことに思い至る。


(一緒にいるのは嫌なんだろうし)


 ヒコトは馴れ合いなどという言葉から、対極にある男だ。


 船上にいる間、手持ち無沙汰の中で、色々なことを考えた。これからの行動についてもだが、胡王国で別れた人たちにも、想いを馳せた。さよならを言えなかったリュウ、トキ、ナシュカ。迷宮を乗り越えた仲の彼らに、何も告げられずに離れてしまった。しょうがないことだが、寂しさと虚しさが渦巻く。そして、フミノを始め、お世話になった人たちにも。


(そういえば……志陽って、結局何がしたかったんだろ)


 玲奈にやたら絡んできていたが、リュウと玲奈が別れてからは、ぱったりと姿を見せなくなった。


(てことは、やっぱ、リュウの恋人がどんな人間か気になって、別れたから安心したってことかな)


 今となってはどうしようもないことだが、フミノの恋が進展したらいいな、とぼんやり思った。




 船を降りると、同じ港でも、胡王国とは少し様相が違った。寂れた港街には、ポツポツと、こぢんまりした船が停泊している。


「今日はここで宿をとる」

「はい」


 これまた寂れた宿に入って、久しぶりの陸地にほっと息をつき、疲れのままに、すぐに眠りについた。




 まだ、夜が明ける前。キンキンキン、と金属がぶつかるような音に、玲奈は目を覚ました。


「ん……? なに」


 目を擦り、ヒコトの姿を探すも、寝床にはいない。音はますます激しくなっていく。外にいるのかと、部屋のドアを開けた玲奈は、息を呑んだ。


「やあ、探したよ」

「――ッ……!!」


 それは、薄暗い中でも分かる、赤だった。


(ロアン……!)


「捕らえろ」

「っ、きゃあっ!」


 一瞬固まった隙を、逃してくれる相手ではなかった。ロアンの影から出てきた兵たちに簡単に捕まり、玲奈は出てきた部屋に戻された。先程まで寝ていた寝台に張り付けられ、腕は頭の上で組まされて縄で縛り上げられた。


 兵たちが下がると、ロアンが笑いながら、横になった玲奈の上に、のしかかってきた。


「初めまして。会いたかったよ」

「っ」


 唇に、親指が這った。これはついこの間、経験したばかりだ。 


(何でここが……! やっぱり、ヒコトさんが内通者!?)


 姿を見せないというのは、そういう事ではないか。しかし、その疑念は敵側から否定された。


「護衛は随分手練れのようだ。向こうに加勢に行け」


 ロアンの兵たちはハ、と敬礼して外へ向かった。


(これ、ヒコトさんが戦ってる音……なら、ヒコトさんは敵じゃない)


 しかし、そうなると何故ここが分かったのか、ますます分からない。


「何故、居場所が分かったの」

「さあ? どうしてだろうなあ」


 九垓は内通者を否定したが。ヒコトは違うとしても、他の者たちは分からない。


「気分がいい。ヒントを出してやろう」

「……」

「俺は、お前がどこに隠れようが、誰に匿われようとも、見つけ出せる」

「……どういうこと」

「お前が俺から逃げ切れることはない、ということだ。今回は、運も味方したがな」


 ロアンは玲奈の顎を掬った。まるで、恋に浮かれたかのような、熱っぽい瞳で玲奈を見下ろす。


「会いたくて、焦がれたよ。早くお前を殺したくて、たまらなかった……」

「……あなた、私に何の恨みがあるの」


 ずっと、抱えてきた疑問だ。ロアンは会うたび、王子としての責務を超えた感情を玲奈に見せる。


「無知は罪とよく言ったものだ。お前の存在が、俺を不幸にした。俺の幸せを、奪って、粉々にした」

「あなたの幸せ? 何のこと」

「……それ以上喋るな。その声……声だけは、似て……」


(声? そうだ、前にもそんなこと)


 ロアンは黙ってしまい、会話してくれる気はなさそうだ。これ以上のヒントは得られないと判断し、玲奈は時を戻した。



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